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Archive for 2010年1月

御嶽ボルキャン

念願のボルキャンに行ってきました。

ボルキャンとは、ちょっと岩遊びでもしつつでも日帰りがめんどうなのでそのままキャンプしようという企画なのです。場所は奥多摩の御嶽。

なのでキャンプ道具一式を背負って運ばなければいけないのですが、今回はコンパクトなクラッシュパッドRevolution Spot(2.94kg)にJAM2をはさんで背負いました。

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この岩はなんですか?ソフトクリーム?我々以外にも取り付く人がちらほら。

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僕もちょっとトライしてみましたけどね、まぁ落とすのは次回にしてやろうと思ってコーヒーブレイク。河原でゆっくりまったり過ごす、こういう時間を楽しみたいものですねボルキャンは。

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それにしても何なんですかね?次々といろんな課題に取り組むハンさんとか、みんな気合い入りまくりなんじゃないですかね?”課題”とか言っちゃってなんか仕事を思い出すんでそういう呼び方やめません?

ほけーっとしてると、メガネっ子のボルガールが参入。

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ガ「混ぜてもらってもいいですかー」

ワ「どうぞどうぞ、なんならお教えしま…」

ていうか、うまいし…。スルスルと登っていきます。

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ハンさんも続きます。

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僕も続こうとしたんですけどね、ガールの人に手取り足取り教えてもらって、それでもまぁなんていうのかな、本気出すのは次回にしておこうかなということで。

ガ「だいじょうぶですよ!だれでも最初は登れないものなんですから。がんばりましょう!」

…いや、おれコーヒー飲みに来ただけだし…。

話を聞くと、このガールの人はボル歴1年くらいだけどかなりやりこんでいたらしく、いろんなトレーニングだとかサプリメントだとかやりつくして、体ボロボロになって故障してしまったんだとか。関節が痛くて眠れぬ夜を過ごしたり、それでも好きでほとんど中毒みたいにはまっていたんだと。ボルダリングの世界は怖いなぁ。

日没後、忍者返しを偵察に行きます。真っ暗な中ホールドを確認。

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ガールの人と別れ、河原でキャンプ開始。

夜はがっつりすき焼き。

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ポールを忘れてテントを張れず、野宿状態のキャンプサイト。シュラフに霜が張ってます。でもクラッシュパッドは寝心地いいね。

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翌日も引き続きボル。デッドエンドから中洲ボルダー、温泉入って川井キャンプ場のボルダーを巡りました。

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ま、今回はこれくらいにしてやろうかな。

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カテゴリー:climbing, Outdoor

混浴とスノーハイク

年末の疲れを癒しに奥鬼怒に温泉に入りにいってきました。女子x2と僕の計3名。えっと、僕が旅の達人としてプロデュースして連れて行ってあげたとかそういうのではなく、むしろ連れてってもらったというか、連れて行かれたというかそんな感じです。

東武線の特急に乗ってまずは鬼怒川温泉まで移動します。

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鬼怒川温泉駅から市営バスに乗って1時間半、女夫渕というところまで来ると雪もだいぶ積もってます。ここに宿の送迎バスが来てくれていました。八丁の湯という温泉宿です。

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20分程の行程で宿に着いてさっそく温泉タイム。ていうかここ、建物からお風呂が丸見えなんですが…

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いちおう女子専用のお風呂はあるみたいですが、男子浴場はなし。混浴しかないみたいです。うわわガクブル… おばちゃんとかドカドカ入ってきて辱められたらどうしよう。

でもせっかく来たんだし、とりあえず入ってみます。雪景色のなか滝も見れて、お湯もあったかいし、ゆったりまったりいい感じ。

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滝を間近に眺めながら…

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と思ったら、女子1が混浴スペースに入ってきました。いやん

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僕はとっとと服着て逃げます。

お部屋はログハウスみたいなところでこんなかんじ。広くて天井高くて景色もよく気持ちイイです。女子2が爆睡してます…

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えっと、いちおう別々の部屋を予約したんですが、「一緒の部屋でいいんじゃないのー?」と言うので3名一室。

夜はお酒で。なんか魚の入った熱燗が出てきました。うまし。

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翌朝、いよいよスノーハイクに出発。

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鬼怒沼まで2h30の行程をハイクアップしてもどってこようという計画。でも帰りのバスの時間も早いので、女子は行けるところまで行こうということでハイクスタート。

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さらさらとした雪のうえをスノーシューで歩いていきます。降雪あり。

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でも歩いてるとなんだか眠くなってきました。だって朝早いんだもん。

ワ「おいらもうだめ、先行ってて」

女「なによだらしないわねー」

置いていかれました。

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ちょっと進むと、女子二人がトレースを見失って難渋してます。ていうかすごいところをぐいぐい進んでます。

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ワ「もう帰ろうよ〜」

女「え〜?鬼怒沼まで行くんじゃなかったの?」

ワ「もういいし、寒いし、お風呂入りたいし」

女「しょうがないわねー」

ということで、ふかふかの雪で遊んだり滑ったりしながら宿まで戻ってまた温泉ざんまいしてゆったりまったり帰りましたとさ。

(写真アップしてるのはヒミツです)

カテゴリー:hike, Outdoor

風雪のトレイル、北ア表銀座〜上高地へ (3)

長らくお待たせしました、前回の続き。

いよいよハイクも終盤、晴天の尾根歩きを経て少し天候が崩れてきた4日目の午後。2,857mの常念岳を超えて樹林帯に入り、強まってきた風雪を避けて一息ついたところで、ふたたびルート上に威容な山塊が現れたのだった。

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暗雲にのまれゆく蝶槍を目の前にして戦慄する。ここを… 登るのか…!?

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どうしよう?このままルート通りに登っていくと、おそらく2〜3時間は吹雪と強風の吹き荒れる尾根上を歩かねばならず、ホワイトアウトしていたら視界もなくて最悪のコンディションのなか停滞してしまうかもしれない。ならば樹林帯にいるうちにビバークするか?しかし明日以降天候はさらに悪化するという。ならばやっぱり今突っ込むか!? エスケープルートもない。

ハンさんは連日のハイクで疲れもあるのかテンション下がり気味。僕もできればまったりとしたハイクを楽しみたい。直登してもたぶん死ぬことはないだろうけれど、決死の強行軍はいやだ。もっとNULい選択肢はないのか、いやきっとあるはずだ!

あたりを見回す。道がなくともどこからか降りれないだろうか?東側の谷筋はとんでもない深雪だろう。あそこを降りて行くのは難しいといまるぷさんも言っていた。ならば…

ワ「…巻こう。蝶槍を西側の樹林の斜面に沿って巻いて、ある程度高度を維持しつつ正規の下山ルートに合流しよう。そこまで道もトレースもない急斜面だけれど、まったりスノーハイクを楽しめるんじゃないか!?」

ハ「まま巻きますか!?危なくないですかね?」

ワ「直登するよりましじゃね?樹林帯なら滑落してもふかふか雪で楽しそうだし」(てきとう)

ハ「じゃあそれで!」

僕が引き続き先頭でラッセル、ハンさんが後ろに続き、樹林の急斜面へと入っていく。

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樹林の中はやっぱり風も弱く心地よい。木を避けながら微妙に高度を下げつつ巻いていく。雪の量も膝ラッセルで大丈夫な程度だが、ところどころ腰までずっぽり埋まり、抜け出すのに難儀する。低木の近くが特に埋まりやすいみたいだ。慎重にルートを読んでみつつ、それでもやっぱり埋まる(笑

ハ「これは未踏の新ルートじゃないすか?”ワンハン巻き道”と名づけましょう!」

ワ「そ・そうだね (ずっとラッセルしてるの僕なんだけど・・・)」

ちょっと怖めな谷筋につきあたり、急な斜面をシリセードで下りつつ、さらに巻いていく。蝶槍の反対側にあるはずの下山ルートにはまだ突き当たらないか?

ハ「でもやっぱり、ちょっと怖いす…ヤバイす…」

ワ「だいじょぶだって、雪ふかふかでちょー楽しいじゃん!谷筋を降りるのだけは避けてトラバースしていけばオケでしょ」(ほんとてきとう)

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尾根筋を越え、谷筋を越え、行けども行けども下山ルートに突き当たらない。なんだか飽きてきた。

雪の中の根っこにスノーシューがつかまったのか、ぶったおれて顔面で受身をとる。もう雪まみれだ。

さらにまたずっこけて斜面を一気にずり落ちる。うわぁーー…

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・・・

朦朧とする意識のなかで、走馬灯のようにいろいろなものが目の前に浮かんだ。すき焼き、焼肉、牛丼、トンテキ、ステーキ… あぁそうだ腹が減ったんだ。

ワ「ちょ、腹へったよ。カーボショッツくれ。僕もう全部食べちゃった」

ハ「フフン、しょーがないなー」(やけに得意気)

ワ「・・・(僕がずっとラッセルしてるのに)」

腹ごしらえをしたところでサイドポケットに入れていたサーモスが無くなっているのに気づく。滑り降りてるうちにどこかに落としたのか。ハンさんに湯ももらう。ソロだったら大失態だな。これは今後何か対策をしなければ。

ワ「もう飽きたし、巻くのはヤダ、降りよう。下山ルートとかどうでもいいよ。この下は槍沢だ。横尾もすぐだよ」

ハ「降りるんすか?ヤバクないすか?ガクブル」

慎重なハンさんを尻目に、先頭を行く僕はぐんぐん下降開始。シリセードで滑り、転げて、また滑る。途中、雪がさらさら過ぎて止まらず谷に落ちそうになる。まぁ落ちてもほんの数mで雪もあるから大丈夫だけど、やっぱ怖い。とガクブルしてたら後ろからハンさんも滑り落ちてくる。ちょっ、やめれって!(笑

結局、滑ってるうちに谷筋に出てしまった(そりゃそうだ)。でも想像してたより雪はぜんぜん深くない、水も流れてるぞ。下は近いはずだ。

最後のシリセードで斜面を下りきる。やっと平地に出た。ここはどこだ!?

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方向も分からぬまま適当に歩いてみる。地形に起伏があれば迷わないけど、平地だと迷いやすいんだなぁ。でもコンパスもGPSも見るのがめんどくさい。いいや少し歩いてみよう。

雪の下に水が流れている。とりあえず水を追いかけていけば槍沢に出るだろうか?踏み外さないように・・・

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やがて支流が合流し、槍沢に繋がったようで、そのまま歩いていくとまもなく横尾の小屋に到達。やったドンピシャだ!

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小屋は営業しておらず、避難小屋だけが開放されていた。覗くと、男性3人パーティーとソロの人が停泊しているみたいだ。おぉ人がいるぞ!できれば徳沢まで行きたいところだったが、もう歩くのはいいや。まもなく日も落ちるしここで泊まろう。

少し休んでから雪まみれの装備を解き、ハンさんが湯を沸かすのをもらう。やっぱり疲れたのかめんどくさくて自分で湯を沸かす気力がない。グローブもすっかり濡れていたので予備に替える。

山屋のおじさまたちがとなりで鍋宴会をしている。うまそう、なんてジロジロ見てたら、残ったキムチ鍋を分けてもらえた。凍ったおにぎりを入れてかき込む。やっと生き返った!

シュラフに入り就寝。しかししばらくして目を覚ます、お尻が寒い。どうしてか?どうやら着替えずにシュラフに入ったため、幾度のシリセードでパンツが濡れてしまっていて温まらないみたいだ。でもめんどくさいからそのまま寝るzzz

翌朝、6時半に起こされる。

もうさすがに食べ飽きたパンとカロリーメイトを口に入れ、手早くパッキング。濡れたグローブは、ライナーにしていたOR PL100グローブは結局乾かなかったが、ミッドグローブのArc’teryx Hardface Gloveは見事に乾いていた。ふむぅこれは使える。

完全に凍りついた靴に足をねじ込む。なかなか入らない。紐をほどいてほぐしてから再び足を入れ、なんとか装着完了。冷たい・・・

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外は吹雪だ。徳沢までの道はトレースもない。今日は順調にいけば最終日の予定、一気に上高地を超えて釜トンネルを目指す。昨日までとは打って変わってハンさんが先頭を切ってラッセルスタート。元気がもどったか?10分も歩くと足は暖まり冷たさは感じなくなった。

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しかしさすがに雪深く、梓川の河原から吹き付ける風も強く、コースタイムをオーバーし1h30かけて徳沢に到着。先が長いのでちょっと気が遠くなる。

徳沢小屋の戸を叩くとお兄さんが出てきた。温かい食事など食べれるだろうか?と聞くと、昼までやってないそうだ。でも燕から来たと言うと二人の困憊ぶり?を見かねたのか特別にラーメンを作ってくれた。しかも餅入りだ。最高にうめぇ!ありがとう!

腹も満たされ気力も回復し、トレースも出てきたのでペースアップ。先頭を交代しながらぐいぐい先に進む。人もちらほら出てくるようになった。ことごとく追い抜き先を急ぐ。早く帰って肉が食いてぇんだ!

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あれは明神?穂高はまったく見えない。

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徳沢以降はコースタイムを上回るペースで上高地に到着。吹雪のなか写真撮影。

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ここから先もけっこう長い。が、帰りたい気持ちがはやりペースは落ちない。ようやく釜トンネルが見えた!あれを抜ければ・・・

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中にはこんなに人がいました。みんなこれから上高地に向けて出発するところみたいだ。

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真っ暗闇のトンネルのなかを歩く。長い。

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出口だぁー!あそこからバスに乗れるぞ。

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さらば上高地、さらば表銀座、見送ってくれた人、出会った人、最高のハイクをありがとう!

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(おしまい)

カテゴリー:hike, Outdoor

風雪のトレイル、北ア表銀座〜上高地へ (2)

前回からの続き。

冬山での事故は、よくセンセーショナルに報道されたりするけれども、統計上は無雪期にくらべて圧倒的に少ない。母数である山行者自体が少ないからというのもあるけれども、実際どれだけの危険が伴なうものなのか、イメージばかりが先行してその実態はいまいち測りかねたりする。道迷いはGPSを持てばいいし、その他装備不足で起こった事故も論外として、雪崩はどうか。でもたいてい雪崩に合うのはバックカントリースキーの人たちが多くて、一般道を歩くハイクで遭遇するのは数としてはレアケースのようだ。転滑落はもちろんある。でもそれは夏でも同じだし、やっぱり場所によるだろう。

よくある冬山の事故のケースは、重い荷をかついで長時間ハイペースで歩き、疲れきった状態で悪天候に見まわれ視界を失い強風に吹き付けられ大雪に埋められ、なんとか逃げ出そうと必死にもがいてそれでも体力尽きて、行動不能、低体温症、凍傷、疲労凍死というデススパイラルにつながるものが多いようだ。体が完全に疲れきってしまうと、シュラフを温めることもできず濡れた衣服も乾かせず、みるみるうちに体温が奪われていってしまうらしい。特にパーティー山行の場合は体力の違う人同士で行くから、リーダーが全員の体力・体調を把握して管理しないといけないのだろうけど、実際は難しいのだろう。

だから、冬山では絶対に疲れないようにしている。山を歩いといて疲れないというのは難しいかもしれないが、そこは荷物をとことん軽くし、できるだけスローペースで歩く。同行者に置いていかれようとも、その日の目的地にたどり着かなくても、悪天候に見舞われても、急がず慌てず落ち着いてビバークできる体力を残しておく。そんなことは冬山教本には書いてないかもしれないけど、”Lite & Slow”こそが、人より体力があるとはいえない僕が冬山を楽しむための最適解かなと、今のところはその方針で行くことにしている。

…あぁすいませんでした、ぜんぶ足の遅い言い訳でした。本当にスミマセン。がんばるのとか嫌いです。運動も好きじゃありません。ただまったりと歩きたいだけです。なんだよ、いいじゃん遅くったって!

29日の朝8時、いよいよ表銀座の稜線を南下開始。見渡す限りの晴天、左手には安曇野に広がる雲海、右手には北アの奥深い山々が広がる極上のトレイルを歩く。気温はマイナス13度。さほど寒くない。

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なだらかで美しいラインがはるか彼方まで続く。今まさにこの稜線を歩けるのだと思うと小躍りしたくなるほどうれしくなる。冬の時期にこれだけの天気に巡り会えたのはラッキーとしか言いようがない。”神様”という概念はいまいちしっくりこないが、この幸運をもたらした何者かに感謝の意を捧げたい気分だ。かみしめるように、一歩一歩まったりと歩きはじめる。

獣の足跡のようなトレースがうっすらと残っているのでそこを辿っていく。鹿か?こんなところを歩くのか?

雪庇のうえにできた風紋が朝日でくっきりと浮かび上がる。まぶしい、ゴーグルをかける。昨日のようなハイクアップでなければ曇らない、大丈夫だ。

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右手に広がる山々。あそこは秋に訪れた雲の平のあたりだろうか?すっかり景色も様変わりしている。行ってみたい。いつの日か冬の黒部源流へ行くことになるんだろうか?あぁそんな発想するなんて、すっかりこの景色に魅了されている。いやいやムリでしょと自分に言い聞かせる。

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昨日に引き続いてスノーシューを履いて歩く、空を昇っていく空中ハイクだ。

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photo by mt_hanter

こんななだらかなトレイルが、こんな晴れ晴れとした天気が、どこまでも続けばいいのに。ハンさんと一緒に思わず顔がニヤける。ウシシ

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途中にあった、岩のゲートをくぐる。洞窟のようだ。スノーシューを履いたまま無理やりよじ登った。

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なにやら崖に雪がかかって、おもしろいかたちをした雪庇になっている。あまり左側に近づかないように注意しながら歩く。

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たぶん、重い荷を背負って下を向いて黙々と歩いてると、知らないうちに雪庇に吸い込まれてしまったりするんだろうな。幸い僕らの荷物はそこまで重くない。顔を上げ、稜線の景色を思う存分堪能しながら歩くのだ。

槍ヶ岳のあたりはとんでもないことになっている。またこことは一段ちがった世界なんだな。将来あそこに行くことになるのだろうか、いやそれは、しかし… ブルブル

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ここまであまりにゆっくり来すぎたので、コースタイムを大幅に上回ってしまっている。今日の行程は常念小屋まで行ければいいかなと思っていたが、このペースだとちょっと怪しい。

焦ったのか業を煮やしたのか、ハンさんがペースを上げはじめる。

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どんどん先を行くハンさん。その先に構えるのは大天井岳。

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いよいよ大天井岳に取り付く。表銀座の稜線はずっと2500-2600mのなだらかな道が続くもんだとばかり思い込んでいた。それにしては大天井岳の北面は険しい。どうしたことか?こんな山の名前はあまり聞いたことがなかったのですっかり甘く見ていた。よくよく地図を見てみると2900m以上もあるじゃないか。おぉ300m以上のハイクアップがこんなところに!

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無雪期にはちゃんと道があるんだろうか、雪が被ってよく分からないので岩の急斜面を直登する。なかなかハードだ。いよいよ両手を使わなくてはならなくなって、スノーシューを外しアイゼンに履き替える。こんなのクライミングじゃないか。ジャンダルムの悪夢が思い起こされる。そうこうしているうちにハンさんは山頂を過ぎて見えなくなった。

やっとの思いで登り切るとまた一風変わった景色に。この世の果てか、神々の住まいか。頂上はどこだか分からないが、休むことなく先に進む。

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山頂からすこし下ると小屋があった。ここも無人で中には入れない。パンとカロリーメイトを食べ、サーモスに入れた温かいはちみつレモンをニ杯飲んでひと休みする。レモンの酸味が体に染み渡る。

ハンさんの姿はどこにも見えない。はるか先へ行ってしまったようだ。そんなに急いでどうするのか、せっかくの稜線をもっとまったり歩けばいいのに、と思いながらゆっくりと贅沢な時間を過ごす。

13時半、まだ進めるだろう、いよいよ出発。大天井の先にさらに続く尾根に向かって歩き始める。その先には槍ヶ岳。…え、槍?いや違う違う、そっちじゃない、方角を間違えて10分ほど歩いてしまった。あの険しい山々に呼ばれてしまったみたいだ。我に返って道を引き返す。いつか行くかどうかは分からないけれども、今はあそこには行かないんだ。

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そうそう、こっちのなだらかな尾根。これが目指すべきルートだ。まだまだヌルい道が続いてるぞ、あぁシアワセ。

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あっちは涸沢だろうか、冬は雪崩の巣らしいけど、加藤文太郎は真冬にあそこから奥穂高に上がったりしてたらしいじゃないか、行けるんだろうか、いやそんなこと考えちゃいけないブルブル

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天気はいよいよ快晴。まったく崩れる気配がない。360度見渡しても雲ひとつない。常念小屋までしばらくあるけど、この状態なら日が暮れても月明かりで歩けるだろう。ペースはあげない。

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今来た道を振り返る。あれが今通り過ぎてきた大天井岳だ。そのずっと向こうが燕山荘。

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雲海もなくなり、街が見下ろせる。

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あまりにゆっくり歩きすぎて、いよいよ日が落ちてきた。穂高の向こうに日が落ちる。

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北穂の肩だろうか、足を止めその光景を見守る。

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赤く染まる空と、山の深さのコントラスト。言葉にできない光景にしばし心を奪われる。

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大丈夫だ、月も出ている。少し冷えてきたが、まだ歩ける。

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空中回廊は、夕焼けと月明かりの色に染まって微妙に味わい深い表情を見せている。

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いよいよ常念小屋に向かう。あとは下るだけだ。街にも灯りが見えだしてきた。

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あそこが常念小屋だ。樹林に入ると急に雪が深くなり、腰まで埋まる。スノーシューをつけるのも面倒なので雪にまみれながら一気に突っ切る。小屋に近づくとハンさんがライトで合図を送ってくれた。もっと先に行っててもおかしくなかったが、彼もあそこで停泊することにしたのか。

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常念小屋も営業はしていないようだ。中にも入れない。建物を風よけにしてハンさんのとなりに幕営し、パンとカロリーメイトを食べ就寝。冬はあまり火を炊いて調理をしたくない。燃料もかさ張るので、湯を沸かす最低限の器具以外はすべて固形食を持つようにしている。寒いなかで料理ができるのをじっと待つよりかは、さっさと食べてシュラフに潜り込みたいのだ。

お互い、今日のトレイルの素晴らしさを語り合って眠りにつく。

翌朝、6時半に起こされる。雪を溶かして湯を作り出発の準備を整える。先に見えるのは常念岳だ。今日はあそこを超えてその先へ向かう予定。

仲良くおそろいのテントです、はい。

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予報によると今日は天候が悪化するという。昨日のような好天は望めないだろう。空もやや曇りがちで風も出てきたように思える。

常念岳をハイクアップ開始。コースタイムによると1hだけど、どう考えてもそんなペースで登れない。あぁこんな岩々したところは嫌いなんだ。なだらかな尾根はまだかなぁ。

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後ろを振り返る。昨日歩いた尾根がずっと遠くにつづいている。空にはまだ青い部分が見える。もう少し大丈夫だろうか。

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しかし西の空には、あまりよろしくなさそうな雲がぐいぐいと近づいてきている。ちょっと焦る。ペースを上げるか?いや待て、ここで焦っちゃいけない。どうせ急いでも僕の体力じゃたかが知れてる。温存温存。

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山頂に到達。ここも2800m以上あるみたいなのでなかなかに辛かった。風も強くなりはじめて寒い。

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この地点から信州側に向けてエスケープルートがあり、下っていけば今日のうちに温泉にあずかれるかもしれないのだが、と言ってみるも、ハンさんは聞く耳もたず、心ここにあらず、もう先に進むことしか目に入らないようだ。トレイルミックスをつまみ、湯を飲んで先へ進む。

ここから先はまた下りだ。下のほうに樹林帯が見える。いよいよ天空の稜線も終わりが近づいたのだろうか、すこし心残りだが、天候も気に掛かるし…

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下りは岩場の急な道だったがさほど難しいわけではなく、しかし風がどんどん強くなってきている。不意の強風で体が50cmほど真横にふっとばされる。大きな岩の影にかくれてやり過ごしたりしながら、だましだまし先へ進む。あの樹林帯まで行けば風から逃げられる。

ようやく樹林の入り口に到達。雪が深くなる。ここでスノーシューを装着。ハンさんはワカン。

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僕が雪をかきわけラッセルしながら先を行き、ハンさんが後ろからついてくる。ん?なんでこんなときだけ後ろ?(笑

ワ「昨日までみたいに、先に行ってもいいよ?」

ハ「え、いやいやおまかせしますよ、どうぞどうぞ。やっぱワカンではさすがに、僕もこんどスノーシューにしますから」

ワ「・・・」

樹林のなかの小ピークを超え、また下り、トレースがなくなり、雪の斜面をシリセードで滑り降り、また歩く。雪深いトレイルもまったり楽しいが、ときおり木々の間から風が強く吹きつけてくる。雪がパラパラと降り始める。

あの先に見えるのは蝶槍か、目指すルートでは再び樹林を抜け出し吹きさらしのあの尾根をハイクアップして、蝶槍の向こうから下っていく予定なのだが、不穏な雲が今まさに迫ろうとしているではないか。

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蝶槍を見上げてハンさんはすっかり意気消沈している。わかりやすい人だ。

ハ「あれは… K2だ!悪魔の山だ!」ブルブル

ワ「いやいやw」

いよいよ蝶槍の取り付きまで近づく。降雪が勢いを増し、山頂はもう雲が覆いかくして見えなくなってしまっている。いよいよ悪天候に追いつかれてしまった。

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どうする?ここを登るのか?たぶん上は吹雪と強風の吹きさらしだ。ホワイトアウトしてるかもしれない。これからおそらく2〜3時間以上もそんななかを歩くなんて、こんなとこ登っても辛いだけで楽しくないぞ。

しかしエスケープルートはない。常念岳を登り返して戻るわけにも行かない。ハンさんもテンション下げ気味だ。ここでビバークか?でも天候は明日以降さらにひどくなるという予報らしい。だったら今突っ込むか?

あぁどうする?

(つづく)

カテゴリー:hike, Outdoor

風雪のトレイル、北ア表銀座〜上高地へ (1)

晴れ渡った空に伸びる白銀の尾根、現世とは隔絶された無人の世界。

風はあるが強くはない。夢見心地のまま歩き続ける。息があがらないペースでゆっくりと、どこまでもどこまでも…

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「僕もいっしょに行こうかな」

年末に計画していた北アルプスへのソロハイクにmt_hanterさんが一緒に行きたいと言い出したのを聞いて思わず苦笑いをしてしまった。冬の北アルプスの単独行者に同行志願すると悲惨な結末をむかえるという日本山岳史上の一大ジンクスを知ったうえでの確信犯か、はたまた天然なのか。ともあれ時は12月いよいよ冬本番、1年かけて準備を進めてきた年末のハイクに、お互い冬のソロをメインに歩きスタイルも似通う心安い同行者を得ることとなった。

プランとしては、北アルプスの信州側の中程、まずは燕のふもと中房温泉まで半日かけてアプローチし、翌日合戦尾根をハイクアップして燕山荘へ、その後は天候次第でチャンスがあれば表銀座の稜線をぶらぶら歩き南下してあわよくば上高地に抜けようというもの。

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北アルプスは昨年、一昨年と敗退続きのため、今シーズンこそはせめて森林限界上を拝んで来たかった。そうなるとやはり表銀座か八方尾根かと迷っていたところ、松本の伝説の岳人いまるぷさんによれば表銀座にあがる合戦尾根は冬でもトレースがついて人もいるから、稜線に上がるくらいは大丈夫だろうとのこと。いよいよこのプランで決定し、さて出発の前日。

ハ「あずさの指定席券買っときますよ!明日8時発でいいですか?」

ワ「え?当日買えばいいんじゃない?何時に起きれるか分からないし・・・」

ハ「いや、前売りのほうが安いんですってば」

ワ「わかったよ、了解。買っといて」

当日12月27日の朝、北アルプスへ向けて出発・・・朝の7時過ぎに新宿に着いた僕の携帯電話が鳴る。

ハ「・・・いま起きました」

ガーン!チケットはハンさんが持ってるから待つしかない。ウェンディーズで食べ納めをして待つこと1時間。ようやく現れたハンさんとあずさに乗りこみ東京を後にする。なかなか頼もしい同行者だ(笑

松本駅でいまるぷさんに邂逅。なんと駅のホームまで迎えに来てくださってプランの細部について相談にのってくれるという!

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合戦尾根はやはりトレースがついていて大丈夫だろうとのこと、尾根に出てから燕山荘を基点にして燕山をピストンで歩けばそれでも十分満足できる大冒険だろうと。表銀座の稜線を南下していくはどうでしょうか?と聞くと、いまいち反応が悪い。山行歴1〜2年のビギナー達にはオススメしたくないような空気が漂う。それでも根掘り葉掘り聞くと、天候、風の強さ、幕営可能地点、危険箇所、エスケープルートなどについて事細かく解説してくれる。本当にいい人だ。自分の基準を押し付けたくはないが、できればそっちのルートは諦めてほしいという表情が読み取れて少し心苦しい。

いまるぷさんの気持ちを無言で受け取り、松本駅を後にする。大糸線に乗り向かうは穂高駅。

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photo by いまるぷ

ペアルックのザックで歩く人たちなんているんだろうか?さらにはテントもシュラフもおそろいというからたちが悪い。

右側の僕の装備重量はおよそ10kg。ベースウェイトは7kgのはず(スノーシューぬきで)。冬山装備としてはどうだろうか、まぁまぁのところか、昨年と比べるとあまり軽量化は進んでいない。

穂高駅前にアウトドアショップを発見。なかなか品揃えがいい。

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道具を見るのもこれで最後か、と不吉なことを言うハンさん。

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駅から望む北アルプス方面。目指す稜線はあの山の向こうだ、雲に隠れて見えない。

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タクシーで中房温泉までの道のゲートまで移動。このときすでに15時近く。中房まで徒歩4時間はかかるというから、日没には間に合わないだろう。

平坦な舗装路をとぼとぼと歩き始める。けっこう疲れる。しばらくすると道には雪が乗って所々凍り付いている。担ぐくらいならとスノーシューを履く。

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ペースを上げるハンさんにはすっかり置いていかれ、とぼとぼと一人歩く。出発であれだけ待たせといて自分だけさっさと行ってしまう自由奔放さ(笑)は逆にむしろ気楽に感じる。お互いソロハイカーの出自だから、他人にペースを合わせるということを知らないのだ。

しばらく歩くと、見えてきました。あれが表銀座の稜線かしら?明日はあそこにハイクアップするんだ。

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すっかり日も暮れたころに中房温泉に到着。僕は宿泊、ハンさんはテント泊に分かれ、温泉にどっぷりつかって熟睡。

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明日は出発何時ですか??待っててくださいよとハンさんが言うので、別にバラバラに出発でもいいと思うんだけど(どうせ向こうのほうがペース早いんだし)、しょうがないから朝待ち合わせることにする。

朝6:30起床、朝食をいただいてひとっぷろ浴びて、ラウンジで待つこと2時間。ようやく現れたハンさんとともに9時出発。

合戦尾根のハイクアップ。ぐいぐいと登るハンさん。

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あっという間に追い抜かれ、突き離され、見えなくなってしまいました。何のために待ち合わせたんだよっ(笑

パラパラと降雪があり、気温はマイナス15℃程度か。景色はすっかり雪をかぶり冷え切っているが、動いているのでそれほど寒さは感じない。

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樹林帯の斜面をどんどん高度を上げていく。

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途中のベンチで休み、カーボショッツを補給。今回持参したのは5本。そのうち3本を登攀時に消費する計画。

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荷物一式。いろいろぶらさげて不恰好だ。

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道程の中程、合戦小屋の建物のあたりに到達。今は無人で入れないのか。このあたりから景色が一変する。木が少なくなってきて風が強い。寒さが体に直撃してくる。

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パンとカロリーメイトを食し、一休みして行動再開。吹雪になってきた。ゴーグルをかける。しかしすぐ曇る。やはり登攀時は蒸れて使い物にならない。

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いよいよ樹林がなくなり森林限界に飛び出してきたようだ。視界が悪い。降雪でトレースもほとんど消えている。赤い旗を頼りに尾根沿いを進む。幸い危険箇所はない。

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あれは、稜線か?

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上を見上げると燕山荘の小屋が。やっと到着か。このときすでに14時過ぎ。

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小屋の入口までは一回稜線に出て回り道をしなければならないみたいだ。しかし稜線に出ると、西側から吹き上げてくる強風があまりにも強くて前に進めない。ゴーグルとバラクラバのわずかな隙間に寒風が突き刺して痛い。人の入ったテントがふっとぶほどの強風というのはこういうものかと納得する。結局、小屋の入口までの数十メートルを歩くのに20分程を要した。

さて、これから幕営をどうするか考えないといけない。小屋の近くのテン場では、僕の軽量カーボンポール仕様のテントではこのあまりの強風で吹っ飛ぶ前にポールが折れて破損してしまうだろう。とすると合戦尾根を引き返して下ってもう少し落ち着いた場所で幕営するか、ハンさんと相談しようと小屋を覗く。

・・・なんか、こたつに入ってみかんを食べて寝そべってすっかり堕落したハンさんを発見。僕より1時間以上も早く着いてぬるぬる過ごしてたらしい。

ハ「えぇ?もう小屋泊で申し込みしちゃいましたよ〜。ていうかここヌルすぎですよ。暖かくてたまんねっす。幕営?ありえねっしょ」

なんだかもういろいろと面倒くさくなってきたので僕も小屋泊にすることにして、こたつでぬったりまったり過ごすことに。

翌日もし同じような強風だったらどうするか?もう一泊停滞するか、下山して温泉旅行に切り替えるか、思いが頭を巡るもだんだん思考が弱まってうたた寝に落ちる。

翌日、29日、朝、快晴。

安曇野に横たわった雲海に日が昇る。

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風も強くない。朝日に焼けた燕山が、手の届きそうなほどの眼前に迫る。

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さぁどうするか、あの燕山をピストンして帰ってお茶を濁すか、ハンさんに聞く。しかし愚問か、お互い答えは見えている。

燕山とは逆方向へ、どこまでも続くあの無人の尾根を歩くんだ。

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(つづく)

カテゴリー:hike, Outdoor