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風雪のトレイル、北ア表銀座〜上高地へ (1)


晴れ渡った空に伸びる白銀の尾根、現世とは隔絶された無人の世界。

風はあるが強くはない。夢見心地のまま歩き続ける。息があがらないペースでゆっくりと、どこまでもどこまでも…

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「僕もいっしょに行こうかな」

年末に計画していた北アルプスへのソロハイクにmt_hanterさんが一緒に行きたいと言い出したのを聞いて思わず苦笑いをしてしまった。冬の北アルプスの単独行者に同行志願すると悲惨な結末をむかえるという日本山岳史上の一大ジンクスを知ったうえでの確信犯か、はたまた天然なのか。ともあれ時は12月いよいよ冬本番、1年かけて準備を進めてきた年末のハイクに、お互い冬のソロをメインに歩きスタイルも似通う心安い同行者を得ることとなった。

プランとしては、北アルプスの信州側の中程、まずは燕のふもと中房温泉まで半日かけてアプローチし、翌日合戦尾根をハイクアップして燕山荘へ、その後は天候次第でチャンスがあれば表銀座の稜線をぶらぶら歩き南下してあわよくば上高地に抜けようというもの。

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北アルプスは昨年、一昨年と敗退続きのため、今シーズンこそはせめて森林限界上を拝んで来たかった。そうなるとやはり表銀座か八方尾根かと迷っていたところ、松本の伝説の岳人いまるぷさんによれば表銀座にあがる合戦尾根は冬でもトレースがついて人もいるから、稜線に上がるくらいは大丈夫だろうとのこと。いよいよこのプランで決定し、さて出発の前日。

ハ「あずさの指定席券買っときますよ!明日8時発でいいですか?」

ワ「え?当日買えばいいんじゃない?何時に起きれるか分からないし・・・」

ハ「いや、前売りのほうが安いんですってば」

ワ「わかったよ、了解。買っといて」

当日12月27日の朝、北アルプスへ向けて出発・・・朝の7時過ぎに新宿に着いた僕の携帯電話が鳴る。

ハ「・・・いま起きました」

ガーン!チケットはハンさんが持ってるから待つしかない。ウェンディーズで食べ納めをして待つこと1時間。ようやく現れたハンさんとあずさに乗りこみ東京を後にする。なかなか頼もしい同行者だ(笑

松本駅でいまるぷさんに邂逅。なんと駅のホームまで迎えに来てくださってプランの細部について相談にのってくれるという!

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合戦尾根はやはりトレースがついていて大丈夫だろうとのこと、尾根に出てから燕山荘を基点にして燕山をピストンで歩けばそれでも十分満足できる大冒険だろうと。表銀座の稜線を南下していくはどうでしょうか?と聞くと、いまいち反応が悪い。山行歴1〜2年のビギナー達にはオススメしたくないような空気が漂う。それでも根掘り葉掘り聞くと、天候、風の強さ、幕営可能地点、危険箇所、エスケープルートなどについて事細かく解説してくれる。本当にいい人だ。自分の基準を押し付けたくはないが、できればそっちのルートは諦めてほしいという表情が読み取れて少し心苦しい。

いまるぷさんの気持ちを無言で受け取り、松本駅を後にする。大糸線に乗り向かうは穂高駅。

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photo by いまるぷ

ペアルックのザックで歩く人たちなんているんだろうか?さらにはテントもシュラフもおそろいというからたちが悪い。

右側の僕の装備重量はおよそ10kg。ベースウェイトは7kgのはず(スノーシューぬきで)。冬山装備としてはどうだろうか、まぁまぁのところか、昨年と比べるとあまり軽量化は進んでいない。

穂高駅前にアウトドアショップを発見。なかなか品揃えがいい。

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道具を見るのもこれで最後か、と不吉なことを言うハンさん。

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駅から望む北アルプス方面。目指す稜線はあの山の向こうだ、雲に隠れて見えない。

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タクシーで中房温泉までの道のゲートまで移動。このときすでに15時近く。中房まで徒歩4時間はかかるというから、日没には間に合わないだろう。

平坦な舗装路をとぼとぼと歩き始める。けっこう疲れる。しばらくすると道には雪が乗って所々凍り付いている。担ぐくらいならとスノーシューを履く。

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ペースを上げるハンさんにはすっかり置いていかれ、とぼとぼと一人歩く。出発であれだけ待たせといて自分だけさっさと行ってしまう自由奔放さ(笑)は逆にむしろ気楽に感じる。お互いソロハイカーの出自だから、他人にペースを合わせるということを知らないのだ。

しばらく歩くと、見えてきました。あれが表銀座の稜線かしら?明日はあそこにハイクアップするんだ。

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すっかり日も暮れたころに中房温泉に到着。僕は宿泊、ハンさんはテント泊に分かれ、温泉にどっぷりつかって熟睡。

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明日は出発何時ですか??待っててくださいよとハンさんが言うので、別にバラバラに出発でもいいと思うんだけど(どうせ向こうのほうがペース早いんだし)、しょうがないから朝待ち合わせることにする。

朝6:30起床、朝食をいただいてひとっぷろ浴びて、ラウンジで待つこと2時間。ようやく現れたハンさんとともに9時出発。

合戦尾根のハイクアップ。ぐいぐいと登るハンさん。

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あっという間に追い抜かれ、突き離され、見えなくなってしまいました。何のために待ち合わせたんだよっ(笑

パラパラと降雪があり、気温はマイナス15℃程度か。景色はすっかり雪をかぶり冷え切っているが、動いているのでそれほど寒さは感じない。

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樹林帯の斜面をどんどん高度を上げていく。

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途中のベンチで休み、カーボショッツを補給。今回持参したのは5本。そのうち3本を登攀時に消費する計画。

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荷物一式。いろいろぶらさげて不恰好だ。

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道程の中程、合戦小屋の建物のあたりに到達。今は無人で入れないのか。このあたりから景色が一変する。木が少なくなってきて風が強い。寒さが体に直撃してくる。

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パンとカロリーメイトを食し、一休みして行動再開。吹雪になってきた。ゴーグルをかける。しかしすぐ曇る。やはり登攀時は蒸れて使い物にならない。

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いよいよ樹林がなくなり森林限界に飛び出してきたようだ。視界が悪い。降雪でトレースもほとんど消えている。赤い旗を頼りに尾根沿いを進む。幸い危険箇所はない。

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あれは、稜線か?

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上を見上げると燕山荘の小屋が。やっと到着か。このときすでに14時過ぎ。

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小屋の入口までは一回稜線に出て回り道をしなければならないみたいだ。しかし稜線に出ると、西側から吹き上げてくる強風があまりにも強くて前に進めない。ゴーグルとバラクラバのわずかな隙間に寒風が突き刺して痛い。人の入ったテントがふっとぶほどの強風というのはこういうものかと納得する。結局、小屋の入口までの数十メートルを歩くのに20分程を要した。

さて、これから幕営をどうするか考えないといけない。小屋の近くのテン場では、僕の軽量カーボンポール仕様のテントではこのあまりの強風で吹っ飛ぶ前にポールが折れて破損してしまうだろう。とすると合戦尾根を引き返して下ってもう少し落ち着いた場所で幕営するか、ハンさんと相談しようと小屋を覗く。

・・・なんか、こたつに入ってみかんを食べて寝そべってすっかり堕落したハンさんを発見。僕より1時間以上も早く着いてぬるぬる過ごしてたらしい。

ハ「えぇ?もう小屋泊で申し込みしちゃいましたよ〜。ていうかここヌルすぎですよ。暖かくてたまんねっす。幕営?ありえねっしょ」

なんだかもういろいろと面倒くさくなってきたので僕も小屋泊にすることにして、こたつでぬったりまったり過ごすことに。

翌日もし同じような強風だったらどうするか?もう一泊停滞するか、下山して温泉旅行に切り替えるか、思いが頭を巡るもだんだん思考が弱まってうたた寝に落ちる。

翌日、29日、朝、快晴。

安曇野に横たわった雲海に日が昇る。

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風も強くない。朝日に焼けた燕山が、手の届きそうなほどの眼前に迫る。

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さぁどうするか、あの燕山をピストンして帰ってお茶を濁すか、ハンさんに聞く。しかし愚問か、お互い答えは見えている。

燕山とは逆方向へ、どこまでも続くあの無人の尾根を歩くんだ。

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(つづく)

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カテゴリー:hike, Outdoor
  1. 2010-01-06 09:49

    あけましておめでとうございます!

    凄いですね~大冒険って感じです
    ワクワクしちゃいますよ~このあとどーなるのか?
    つづき期待してま~す!

    今年も宜しくお願い致しま~す!

  2. 2010-01-06 16:44

    こんにちは。すごい!いや、すごいってそんな単純な一言でなくって、
    なんだろう、読んでてすごい楽しかったです。
    ちょっと自分にはすぐに真似できないことだからかなー
    ワクワクします。早く続き見たいっす。
    そしてハンハーノさんのキャラが少し見えてきましたww

  3. 2010-01-06 17:26

    よ、よくぞまあ、….. あんな雪の上をあんなとこまで!
    合戦小屋の屋根まで積もってる雪を見るのははじめてですよ。
    それにしても、見てはいけない、眺めてはいけない世界に、
    行ってしまわれたのでありますねえ…。

    で、伝説の岳人は誤りで、伝説の半魚人とか伝説の獣人とかに
    直しておいてくださいませ。

  4. 64
    2010-01-06 20:41

    なんじゃーこりゃー!
    す、すげぇ…
    こんなん見ちゃうと雪山もステキなんて思っちゃうじゃないですか。
    いえいぇ、寒がり&ビビりな僕は行けませんよ~。

    遅れましたが本年も宜しくお願いします。

    *コメント入力欄の上に「64さん、おかえりなさい」だって。こういうコネタ好きです。WordPressいいね。

  5. ane
    2010-01-06 21:25

    あけましておめでとうございます!
    ほー、すごいですねー。きれーい。
    自然vs自分だから、すっごく孤独な気持ちになりそうだ。
    一人で歩いて怖くないですか?自然を目の当たりにした恐怖というか、そういう感覚にならないですか?

    はんはんさん…..やっぱりおもしろいですね。
    やっぱり、あのときレインボーカラーのアレ(つっても、あれ何だったんですか?)買った方がよかったんじゃないですか笑?うん!絶対、はんはんさんとお揃いで買ったほうがいいですよ!

  6. 2010-01-07 00:07

    あけましておめでとうございます
    今年も宜しくお願いします。
    すごく綺麗・・・ 実際に眼でみたら 泣いちゃうかも。。。

    荷物も10キロしか ないんですか。。まじですか 
    そして ペアルックだったんですね~!

    それにしても 雪山…
    命にかかわる怖さと 隣り合わせと引換に 見ることができるあの景色…
    胸がいっぱいです

  7. 2010-01-07 02:19

    昨年夏山で同じルート(中房温泉まではタクシーで…)で槍経由で立山方面に抜けました。
    稜線までのハイクアップ、辛かったんではないですか?
    しかし…景色が全く違いますね。この季節にも行ってみたい。

    私も良く仲間内でアイテムが被りますが
    ここまで被ると逆に楽しいですね!

    続きを楽しみにしております。

  8. 2010-01-07 12:18

    > チャイさま
    おぉあけましておめでたうごぜます。
    えへへ、ちょっと今回は、なかなかにヘビーな体験でした。いまもまだ余韻にひたっています。
    今年もまたキャンプで山で、お会いできるとうれしいです。
    どうぞよろしくお願いいたします。

  9. 2010-01-07 12:25

    > サササンダーさん!
    あぁハンさんの人気をまた押し上げてしまいました。人にブログ書かせて、自分は手抜きする気ですよ絶対。そんなキャラです(笑

    そうなんです、冬山行くには、なにより装備の一気買いをしないといけないから、なかなかすぐにはできないんですよねー。でもサンダーさんの買いっぷりなら…!?
    実は日帰りでも、こんな景色を楽しめる場所があったりします。谷川岳とか。スノーシューだけはあったほうがいいですがちょっと高いんですよね、レンタルもあります。
    春先でも雪はいっぱい残っているのでまだまだチャンスはありますよ!

  10. 2010-01-07 12:28

    > いまるぷさま
    おぉぉその節は大変お世話になりました。どうぞ今年も暖かいご指導のほどを何卒何卒…
    本当に、眺めてはいけない禁断の世界ですね。来シーズンとかどうなっちゃうんだろう。死んでも、笑って語り草にしてもらえると幸せです。

    お山の大先輩、いろいろとすごいお噂を聞き及んでおりますので、僕の中ではやっぱり伝説の岳人?でありますw

  11. 2010-01-07 12:31

    > 64さま
    うふふ、雪山いいですよー。昨年は無雪期のアクティビティもいろいろ楽しんでみましたが、やっぱり冬が最高です!64さんもはやくファミキャン道具を売っぱらって、家族を捨ておいて、こっちの世界へ、さぁ!

  12. 2010-01-07 12:41

    > aneちゃん!
    おおおめでとうございます。今年もどうぞお手柔らかによろしくお願いいたしまする。

    自然vs自分、おっしゃる通り、一人でこういう世界にポツンと立たされると理屈抜きで畏れを感じます。自然の大きさに圧倒され、孤独で寂しく、この世界のなかで人間一人の存在なんて無力でちっぽけなものだなと、でもその逆にどこへ行こうとも何をしようとも自分次第なので、底抜けの自由と開放感も味わえます。今回はハンさんも一緒だったので、どちらかというとわりと楽しんで歩けました。

    で、冬山用のウェアは揃ったのですか?早くこの世界に行きますよ!眠りそうになったら頬を往復ビンタでひっぱたいて「眠るなー」というプレイをしてみたいので早く準備をお願いいたします。

  13. 2010-01-07 12:49

    > すすすずさん!
    あけあけまして、おおおめでとうござます!
    荷物の軽量化、ぜひほどほどに。あまり凝りすぎるとうちみたいに冬用の道具を買いまくって2.5人分が押し入れに埋まってしまったりとかしますのでご注意を。女子キャンプはおしゃれも大事ですからね!
    冬山、ほんとうに綺麗な景色でした。え?すずさんもペアルックに参加して冬山へ?どうぞどうぞぜひあのザックのご購入を!鳥さんも持ってますからね、このまえは3人おそろいだったんです(笑

  14. 2010-01-07 12:54

    > chiyoさま
    ブログ楽しみに読ませていただいております。どうぞ今年もヨロシクお願いいたします。

    ハイクアップは、まったり時間をかけて登ったのでそれほど疲れはありませんでした。コースタイムぜんぜんオーバーしてたので(汗
    え、槍経由で立山方面?それってすごいルートじゃないですか??

    やっぱり道具をつきつめると、選択肢は限られてきちゃうんですよね。まぁ後追いしたのはハンさんのほうですが(笑

  15. ane
    2010-01-08 01:32

    こんばんはー
    底抜けの自由と開放感…バックパッカーで旅するときを思い出しましたが
    ああいう気持ちに近いのでしょうか?
    わんわんさんとはんはんさんの’仲良しの距離感’っていいですね!

    >眠りそうになったら頬を往復ビンタでひっぱたいて「眠るなー」というプレイをしてみたい
    おお!Mとしては、妄想するとたまらないズルリ…って何言わせるんですかー笑
    いや、でも優しく打ってくださいヨ!

    雪山というのはいつ頃まで登れるのですか?

  16. 2010-01-08 16:54

    > aneちゃん
    雪山は、GWまでありますよー。
    ちなみに、雪山で死にかけたら走馬灯を動画で再生するiPhoneアプリとか作ろうかと。再生してあげますね。

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