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風雪のトレイル、北ア表銀座〜上高地へ (3)


長らくお待たせしました、前回の続き。

いよいよハイクも終盤、晴天の尾根歩きを経て少し天候が崩れてきた4日目の午後。2,857mの常念岳を超えて樹林帯に入り、強まってきた風雪を避けて一息ついたところで、ふたたびルート上に威容な山塊が現れたのだった。

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暗雲にのまれゆく蝶槍を目の前にして戦慄する。ここを… 登るのか…!?

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どうしよう?このままルート通りに登っていくと、おそらく2〜3時間は吹雪と強風の吹き荒れる尾根上を歩かねばならず、ホワイトアウトしていたら視界もなくて最悪のコンディションのなか停滞してしまうかもしれない。ならば樹林帯にいるうちにビバークするか?しかし明日以降天候はさらに悪化するという。ならばやっぱり今突っ込むか!? エスケープルートもない。

ハンさんは連日のハイクで疲れもあるのかテンション下がり気味。僕もできればまったりとしたハイクを楽しみたい。直登してもたぶん死ぬことはないだろうけれど、決死の強行軍はいやだ。もっとNULい選択肢はないのか、いやきっとあるはずだ!

あたりを見回す。道がなくともどこからか降りれないだろうか?東側の谷筋はとんでもない深雪だろう。あそこを降りて行くのは難しいといまるぷさんも言っていた。ならば…

ワ「…巻こう。蝶槍を西側の樹林の斜面に沿って巻いて、ある程度高度を維持しつつ正規の下山ルートに合流しよう。そこまで道もトレースもない急斜面だけれど、まったりスノーハイクを楽しめるんじゃないか!?」

ハ「まま巻きますか!?危なくないですかね?」

ワ「直登するよりましじゃね?樹林帯なら滑落してもふかふか雪で楽しそうだし」(てきとう)

ハ「じゃあそれで!」

僕が引き続き先頭でラッセル、ハンさんが後ろに続き、樹林の急斜面へと入っていく。

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樹林の中はやっぱり風も弱く心地よい。木を避けながら微妙に高度を下げつつ巻いていく。雪の量も膝ラッセルで大丈夫な程度だが、ところどころ腰までずっぽり埋まり、抜け出すのに難儀する。低木の近くが特に埋まりやすいみたいだ。慎重にルートを読んでみつつ、それでもやっぱり埋まる(笑

ハ「これは未踏の新ルートじゃないすか?”ワンハン巻き道”と名づけましょう!」

ワ「そ・そうだね (ずっとラッセルしてるの僕なんだけど・・・)」

ちょっと怖めな谷筋につきあたり、急な斜面をシリセードで下りつつ、さらに巻いていく。蝶槍の反対側にあるはずの下山ルートにはまだ突き当たらないか?

ハ「でもやっぱり、ちょっと怖いす…ヤバイす…」

ワ「だいじょぶだって、雪ふかふかでちょー楽しいじゃん!谷筋を降りるのだけは避けてトラバースしていけばオケでしょ」(ほんとてきとう)

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尾根筋を越え、谷筋を越え、行けども行けども下山ルートに突き当たらない。なんだか飽きてきた。

雪の中の根っこにスノーシューがつかまったのか、ぶったおれて顔面で受身をとる。もう雪まみれだ。

さらにまたずっこけて斜面を一気にずり落ちる。うわぁーー…

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・・・

朦朧とする意識のなかで、走馬灯のようにいろいろなものが目の前に浮かんだ。すき焼き、焼肉、牛丼、トンテキ、ステーキ… あぁそうだ腹が減ったんだ。

ワ「ちょ、腹へったよ。カーボショッツくれ。僕もう全部食べちゃった」

ハ「フフン、しょーがないなー」(やけに得意気)

ワ「・・・(僕がずっとラッセルしてるのに)」

腹ごしらえをしたところでサイドポケットに入れていたサーモスが無くなっているのに気づく。滑り降りてるうちにどこかに落としたのか。ハンさんに湯ももらう。ソロだったら大失態だな。これは今後何か対策をしなければ。

ワ「もう飽きたし、巻くのはヤダ、降りよう。下山ルートとかどうでもいいよ。この下は槍沢だ。横尾もすぐだよ」

ハ「降りるんすか?ヤバクないすか?ガクブル」

慎重なハンさんを尻目に、先頭を行く僕はぐんぐん下降開始。シリセードで滑り、転げて、また滑る。途中、雪がさらさら過ぎて止まらず谷に落ちそうになる。まぁ落ちてもほんの数mで雪もあるから大丈夫だけど、やっぱ怖い。とガクブルしてたら後ろからハンさんも滑り落ちてくる。ちょっ、やめれって!(笑

結局、滑ってるうちに谷筋に出てしまった(そりゃそうだ)。でも想像してたより雪はぜんぜん深くない、水も流れてるぞ。下は近いはずだ。

最後のシリセードで斜面を下りきる。やっと平地に出た。ここはどこだ!?

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方向も分からぬまま適当に歩いてみる。地形に起伏があれば迷わないけど、平地だと迷いやすいんだなぁ。でもコンパスもGPSも見るのがめんどくさい。いいや少し歩いてみよう。

雪の下に水が流れている。とりあえず水を追いかけていけば槍沢に出るだろうか?踏み外さないように・・・

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やがて支流が合流し、槍沢に繋がったようで、そのまま歩いていくとまもなく横尾の小屋に到達。やったドンピシャだ!

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小屋は営業しておらず、避難小屋だけが開放されていた。覗くと、男性3人パーティーとソロの人が停泊しているみたいだ。おぉ人がいるぞ!できれば徳沢まで行きたいところだったが、もう歩くのはいいや。まもなく日も落ちるしここで泊まろう。

少し休んでから雪まみれの装備を解き、ハンさんが湯を沸かすのをもらう。やっぱり疲れたのかめんどくさくて自分で湯を沸かす気力がない。グローブもすっかり濡れていたので予備に替える。

山屋のおじさまたちがとなりで鍋宴会をしている。うまそう、なんてジロジロ見てたら、残ったキムチ鍋を分けてもらえた。凍ったおにぎりを入れてかき込む。やっと生き返った!

シュラフに入り就寝。しかししばらくして目を覚ます、お尻が寒い。どうしてか?どうやら着替えずにシュラフに入ったため、幾度のシリセードでパンツが濡れてしまっていて温まらないみたいだ。でもめんどくさいからそのまま寝るzzz

翌朝、6時半に起こされる。

もうさすがに食べ飽きたパンとカロリーメイトを口に入れ、手早くパッキング。濡れたグローブは、ライナーにしていたOR PL100グローブは結局乾かなかったが、ミッドグローブのArc’teryx Hardface Gloveは見事に乾いていた。ふむぅこれは使える。

完全に凍りついた靴に足をねじ込む。なかなか入らない。紐をほどいてほぐしてから再び足を入れ、なんとか装着完了。冷たい・・・

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外は吹雪だ。徳沢までの道はトレースもない。今日は順調にいけば最終日の予定、一気に上高地を超えて釜トンネルを目指す。昨日までとは打って変わってハンさんが先頭を切ってラッセルスタート。元気がもどったか?10分も歩くと足は暖まり冷たさは感じなくなった。

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しかしさすがに雪深く、梓川の河原から吹き付ける風も強く、コースタイムをオーバーし1h30かけて徳沢に到着。先が長いのでちょっと気が遠くなる。

徳沢小屋の戸を叩くとお兄さんが出てきた。温かい食事など食べれるだろうか?と聞くと、昼までやってないそうだ。でも燕から来たと言うと二人の困憊ぶり?を見かねたのか特別にラーメンを作ってくれた。しかも餅入りだ。最高にうめぇ!ありがとう!

腹も満たされ気力も回復し、トレースも出てきたのでペースアップ。先頭を交代しながらぐいぐい先に進む。人もちらほら出てくるようになった。ことごとく追い抜き先を急ぐ。早く帰って肉が食いてぇんだ!

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あれは明神?穂高はまったく見えない。

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徳沢以降はコースタイムを上回るペースで上高地に到着。吹雪のなか写真撮影。

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ここから先もけっこう長い。が、帰りたい気持ちがはやりペースは落ちない。ようやく釜トンネルが見えた!あれを抜ければ・・・

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中にはこんなに人がいました。みんなこれから上高地に向けて出発するところみたいだ。

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真っ暗闇のトンネルのなかを歩く。長い。

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出口だぁー!あそこからバスに乗れるぞ。

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さらば上高地、さらば表銀座、見送ってくれた人、出会った人、最高のハイクをありがとう!

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(おしまい)

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カテゴリー:hike, Outdoor
  1. 2010-01-1408:41

    御無沙汰してます“理事長”です。
    記録を拝見しましたが、最高の山行を楽しんだようですね。心から祝福いたします!!

    ところで、12月28日私はWandaさんと擦れ違ってますよ!
    たぶん、中房から第1ベンチまでの間を下山中、「おいおい、こんな下からスノーシュー履いて登ってるのか?」って感じの方と擦れ違ったんですが、あれWandaさんじゃないかな??

    しかし、天候に恵まれて良かったですね、27日~28日の夜は大荒れで、私は燕山荘泊りでしたけど、もし稜線でテント張ってたら「ちょっとヤバかった」って感じでしたよ。

    なんか後半の記録は危なっかしい気もしましたが・・・、まずはおめでとうございます。

    では、本年もよろしく!

  2. 2010-01-1410:08

    やばいっす。スゴイッす凄いっスすごいっす!
    専門用語っぽいのがいっぱいでよくわかんないとこも
    あったりするんですが、なんてドキドキする記事なんだろう。
    最後、トンネルの出口にちょっと感動しました。
    なんだろう、ドラクエ全クリした時の感情に似ています。
    ご無事でなにより☆お疲れ様でした!

  3. 2010-01-1410:34

    ウワァ!スゲェ! 大冒険でしたね~
    私には・・とてもとても真似できませんね~
    ハラハラドキドキで楽しませて戴きました。

    横尾の鍋と徳澤のラーメン・・最高の味だったでしょうね!
    うらやましいです~

  4. 2010-01-1412:44

    ああ!よくわかりませんが、「これは遭難ですか?」と聞かれたら、「ええ、そうなんです。」と答えてもあながち間違いでもないのじゃないのですかね。

  5. 2010-01-1423:11

    おつかれさまでした!!ほんとうに!人間て頑丈だなぁと 思ってしまった。。
    専門用語がわかんなくって こんど一気にぐぐってみます!
    それにしても いいなぁ
    そこに行かないと 見れない景色も空気も味わってますもんね。
    私も色んな外遊びを開拓したいです

  6. 2010-01-1500:35

    > 理事長さま
    おわわお久しぶりでございます!ありがとうございます、最高のハイクでした。
    ていうより、すれ違ってましたか!?あぁ中房の先で?なんか、あひあひ言ってませんでしたか?「小屋まだっすかー」とかほざいてませんでしたでしょうか…(汗
    スノーシューは必要なくても履くことが多いんです。できるだけBaseWeightに換算したくない(笑)というのは冗談として、ヒールリフターがあると登攀が楽なんですよねー。さすがに大天井では脱ぎましたが。
    燕山荘は28日の夜もすっごい強風でした。ちょっとヤバイどころではないくらいw
    後半は、補助ロープのひとつもあればなぁとか過ぎったりもしましたが、結果的に必要な箇所もなく、NULい樹林のスノーハイク&滑り台を楽しめて幸運でした。
    どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

  7. 2010-01-1500:44

    > サンダーさん
    ありがとうございます!
    サンダーさんも冬ハイク&キャンプご無事でなによりというか行動力に脱帽。じつはポトフにやられてしまいまして、今度マネしようかなと
    ドラクエですか、僕とハンさんが画面でピコピコ動いてるのを眺めてる感覚(笑
    次なる冒険へ向けて、がんばります!

  8. 2010-01-1500:47

    > チャイさん
    楽しかったですよぉ〜。
    ハンさんは、テンション下がるといっつもヤバイとか怖いとか言ってるんで、あんまり真に受けないでくださいませ(笑
    実際はまったりとしたスノーハイク遊びみたいなもんで…
    ぜひ槍隊放題も冬期登頂へ向けて!いやそれはさすがにガクブル

  9. 2010-01-1500:56

    > kimatsu先生
    あぁ、”遭難の原因の半数は道迷いだというのにGPSも持たずに低山ハイクにでかけるという危険極まりない行為を繰り返す会”の方ですね。こんにちわ。
    え、そうなんですか?そうなん?
    ていうよりですね、kimatsuさんのためにアンダー3000mのNULい冬トレイルを試行してきたわけですから、早く行きましょう表銀座!

  10. 2010-01-1501:12

    全3話楽しく読ませて頂きました。おかげで色々と思い出す事ができましたよ〜 また行きましょ!
    ラッセルは折角ワンダさんが担いできたスノーシューのお株を奪うようなマネだけは絶対避けようと気を使ったつもりだったのですが…  うそですすみませんすんごくぬるぬるさせてもらいました。
    しかし4泊5日でコールドミルのみってーのは如何なものでしょう?せめてラーメンくらい持ってくればいいのに…

  11. 2010-01-1501:15

    > すずさん!
    あれー、そんなに専門用語使ってましたっけ、スンマセン。どれかなー
    ・ホワイトアウト … なんか吹雪で真っ白で視界がいっさい見えなくなっちゃってヤバイ状態
    ・エスケープルート … 安全地帯への逃げ道?
    ・巻く … 山頂を通らず迂回して行くこと
    ・トレース … 雪の上にできた足跡、誰かが通った跡、トレースがあると歩くの楽
    ・ラッセル … 積もった雪をかきわけて進むこと。トレースがないとラッセルしないといけんからしんどい
    ・シリセード … おしりで座って雪の斜面を滑り降りる技。停止するときはピッケルを雪面に突き立ててブレーキにして止まる
    ・トラバース … 登ったり降りたりではなく、斜面を横断して歩くこと。
    ・カーボショッツ … おいしいエネルギー補給サプリ、いろんな味があってオススメ。toriさんも好物
    あぁこんなかんじかしら?
    いろんな外遊び僕も開拓したいです!次は、うふふ…

  12. 2010-01-1501:23

    > ハンさん
    いやぁ最高のトレイル共有できてほんとに良かったです。次は厳冬期前穂北尾根でしたっけ?w
    ハンさんと行くと、歩くペース違うんで、ソロ気分も味わえていいですねー
    冬はコールドミール、でもやっぱりちょっと水気のあるものとかタンパク質とか取りたいかも、ちょっと考えよっと

  13. ane
    2010-01-1519:33

    こんばんはー

    朦朧とする意識の中で思い出すのが全部「牛」なんですね!笑
    といいますか、上高地って高知県だと思ってたのは私だけでしょうか?違うんですね。よく見ると字もちゃうし!あわわわ
    コメントにありますが、言葉難しいですね。カタカナが???です。

    はんはんさんが消極的になっていて、おもしろいですね。
    いいですねぇ。おもしろい!!羨ますぃ。
    無事でなにより!よかったですね☆

  14. 2010-01-1521:29

    そうです!それそれ!!ピンポイントでありがとうございます!
    なるほど 色んな意味?技?あるんですね~
    トラバースって 良く雑誌に出てくるから ハタシテ?って思ってたけど 謎がとけました!
    いいなw 山w
    さくぽんに 厳しくない ところに出かけようと思いますw

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