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Archive for 2010年3月

Petzl Ange カラビナ

Petzlから出るという噂のクリーンロックノーズ式最軽量カラビナを待ちわびていたんだけど、先日morikatuさんところで紹介されてましたね。

Petzl Ange – Small Size 28g / 20, 7, 9KN / ゲート長 23mm / $11 (*興味ないけどLargeサイズもあるとか)

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photo from: rockclimbing.com

めずらしい一本ワイヤー?、アゴがない形状なので引っ掛かりがない。黒い樹脂製のパーツがベントゲートの役割をしてくれるのかな?

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photos from: rockclimbing.com

今までメインに使っていたカラビナはMetolius F.S. mini (23g)。小振りで軽く、ベントゲートだったのでロープもかけやすかったんだけど、細いスリングを取り外すときにアゴに引っかかるのが使いにくかった。

Petzl Angeに取り替えるとなると1個28gなので5gの増量、10個で50gは大きい… どうしたものか悩ましいけどとりあえず数個輸入したい。2010年8-9月頃のリリースになりそうだとか。それまでにXSサイズもラインナップしてくれないかなぁ?

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カテゴリー:未分類

ツール・ド・キャンプ in 四尾連湖

まったり自転車で行ってきましたキャンプ。ロードを買ってから初の輪行ツーリング、ヒルクライム。

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けっこう重たいキャンプ道具かついでロードバイクで山を登ります。市川大門駅まで輪行して目指すは四尾連湖。標高差600m。

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ちょっと試しに漕いで登ってみるも、腰荷重でバックパック担いでたら体がどうも後ろに引っ張られて腰が激痛くなり100mも登らないうちにダウン。背中で背負うように調整するとなんとか登れそう。でも上から押さえつけられてるような荷重感…。

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ビンディングペダルは引き足を使えて調子よく、普段使わない筋肉を使ってる感じ。それでも何度もぶっ倒れながら休み休み登ります。寝っ転がってると景色もよく気温も程よく気持ちいい。

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息絶え絶えにキャンプ場へ到着。10.5km走るのに5時間かかったのは秘密です。

到着すると宴もたけなわ。バレンタインのお礼にガールズをご接待するキャンプという趣旨なんですが、一人だけ呑気に自転車乗って遅れてくる不届き者…(汗

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今回のお料理は燻製ステーキ。蒸し器にアウトバックオーブンを被せて簡易スモーカーとして使ってみました。うん、ちゃんと燻せてる。

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トマトガーリックソースをかけて、ワインとバゲットで召し上がります。

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ついでにチーズとソーセージも燻製。

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nut’sさんは丸焼きやってます… これには勝てません…。

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他にも、たこ焼きとか、チーズケーキとか、アップルパイとかなんか大変な料理が次から次へと出てきて大変でした。

マッカランとシガーでまったりと過ごす夜。

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酔っ払っていつの間にか寝てました。記憶あいまいです。zzz…

翌朝、寝ぼけてます。

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今回の幕はSixMoonDesigns GatewoodCape

お昼になってもみんなよく寝てます。

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いろんな体勢で…

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赤い彗星、Hilleberg Aktoに萌え〜

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そんなこんなで、また荷物担いで帰ります。下りはらくちん快適。

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ロードバイクいいね、ちょっとキャンプ道具の軽量化考えないといけないけど、これからの季節どんどん走る予定。

カテゴリー:Bicycle, camp, Outdoor

八ヶ岳石尊稜バリエーションハイク、敗退 2010.3.20-21

バリエーションルート、アルパインクライミング… 用語の定義はいろいろあるみたいだけれど、ようするに一般登山道ではない登攀ルートを時にロープで確保しながら登っていくような行為だと思えばいいのだろうか。なんだか映画や小説などで出てくるような、厳しい山をザイルパートナーとともに命がけで征服していくような男臭い世界。僕の中での”登山”のイメージはどちらかと言うとそういう行為が近しいように思う。すごいな、とは思うけれども、その世界にどっぷり浸かって取り組んでみたいとまではさすがに思わない。

そんな次元の違う世界に少し興味を持ったのは、ここ近年通っている冬山ハイキングにそのバリエーションルートのクライミングを組み合わせてみるとどうなんだろう? と思ったりしたからだ。一般登山道にとらわれず行程の自由度が圧倒的に増えるんじゃないだろうか? いや装備が一気に増えるし時間もかかるしパートナーも必要だし逆に足かせになるんじゃないの? どうなんだろう? いつからかそんな問いが頭のなかにチラホラと浮かんでいたのだけれど、やはり実際に試してみないことには分からない部分が多すぎる。ということでいよいよ厳冬期も終わり初春を迎えた八ヶ岳に、バリエーションルート初山行へと足を伸ばしてみることにした。

今回は特にハイキングと組み合わせることが前提のバリエーション、となるといくつかの条件が出てくる。まず足回りはローカットのトレランシューズに防寒用のネオプレンカバーを被せたいつものハイキングスタイル、アルミとは言わずともスチール製の前爪が出てない軽量な10本爪アイゼンで行けることが前提。また装備は基本的に全部担いで登攀する。スルーハイクを前提とするから、テントやシュラフなどをデポしてベースキャンプへ戻るという発想は持たない。逆にいつでもビバークできる装備を担いでいれば厳しい局面で悪天候に遭遇しても心強いかもしれない。その点は日々の軽量化でザック重量10kg以下に押さえ込めるだろう。ソロはもちろん無理なわけでパートナーと同行するが、装備は個食個泊を前提で共同装備はクライミングロープ一本のみ。

どうなんだろう? そんな条件で行けるんだろうか? 分からない。行くこと自体はたぶん問題ないような気がするけど楽しめるのか? ともかく行ってみないと。いずれにしろ冬山のハイキングでも僕の歩く場所は森林限界の上だ。いつなんどき雪庇を踏み抜いたり強風に吹き飛ばされて死地をさまよう羽目になるやも分からない。こういうことも経験しておいて損はないだろう。

結果的には今回は悪天候に尻尾を巻いて途中撤退したのだけれど、いくつかの仮説を検証でき課題も見えたことなのでよしとする。以下レポ。

日の暮れるころ、前泊予定地の赤岳鉱泉へと向かう途上。なくしものをしたりして僕だけ何度も行き来するはめになり結局赤岳鉱泉に到着したのは21時だった。10.5mmx60mのMAMMUTのロープがとにかく重い。これだけで3.8kg、ゲレンデならかまわないがバリエーションのときはもっと軽いのが欲しいところ。

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翌朝、赤岳鉱泉にて。アイスキャンディーを背景に並ぶBDテント4基。

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深夜から激しく雨が降りだし雪に変わって、日が登ってからようやく天候は落ち着いてきた。幕は軽量化のためにフロアレスシェルターにしたかったのだけれど、事前から雨予報だったので前泊でシュラフを濡らさないよう今回は自立ドーム型を選択。稜線でビバークする前提でビビィも携行。

4基のBDテントの主のうち、nut’sさんnariさんは地蔵尾根の一般ルートへ。バリエーションを目指すのは僕と、毎度のパートナーmt_hanter氏。

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準備を整えつつ小屋で情報収集。上は風が強いらしく、ほとんどのパーティーは停滞しているとのこと。小屋の主?らしきおじさまによると今日は無理だろうと、まぁ行けるところまで行ってみたらいいさ、とのアドバイスをもらう。

10時過ぎ。Arc’teryx A300aハーネスにギアをつけて完全装備で出発。内訳は、Metolius F.S.miniカラビナ(23g)にBeal 6mm Dyneema Slingをかけたアルパインクイックドローを5本程度、別途同じくBealの6mmスリング各種長さのものを数本、環付カラビナはTrango Superfly Screwlock(40g)を3枚、CAMP Base TwistLock(49g)1枚、プルージックコード2本、BDのデイジーチェーン、ビレイデバイスはRocteryxのデサンドールミニエイト環(70g)にルベルソキューブ(75g)。プロテクション類は今回はなし。お守りにフィフィフック。ロープ以外は軽さを最重視したチョイス。

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今回目指すルートは石尊稜。八ヶ岳主稜の横岳近くに上がるルートらしい。教本「チャレンジ・アルパインクライミング」によると八ヶ岳の冬期ルートのなかでも最も易しいルートで支点も整っており初心者同士でも安心とのことだが、他のソースによると赤岳主稜ルートのほうが簡単だとかで情報が食い違っている。が、とにかく今回はそのルートをあがる計画。横岳付近まで上がれたらその場でビバークし、翌日稜線を少し歩いて尾根の反対側へと下山するプランとした。どこから降りるかは登ってみてから考える。

取り付きまでは一般道を離れて沢筋を入っていくらしいのだが案の定迷う。

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やはり道を間違ったらしく中山乗越まであがってしまった。行き過ぎだ。八ヶ岳の稜線が見渡せるが雲にかくれておどろおどろしい。こんなところ登っていくのか…??

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ここで中山尾根を降りてきたパーティーと遭遇。上は風が強く、顔面が凍傷になりそうで2ピッチほどで降りてきたという。リーダーの人に石尊稜までのルートを聞いて再び来た道を戻る。ここで地蔵尾根チームと別れる。

どうやらこの沢筋だろうというポイントを見つけて遡行を開始する。雪の量はそれほどでもないけれども斜度がありラッセルがきつい。途中でハンさんにトップを代わってもらう。こういう地形は”ルンゼ”と言うらしい。

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足回りはいつものシューズ、ICEBUG GG FLY BUGRIPにネオプレンカバーをかぶせて防寒対策としている。ローカットなので足首は自由に動くしソールも柔らかい。アイゼンはKahtoolaのKTS Steel(662g/pair)を新調した。

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ハンさんの足回りは、Montrailのトレランシューズ、コンチネンタルディバイドGTXに同じくネオプレンカバー、Kahtoola KTS Steel。

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13:00。休み休み歩いていくとどんどん斜面は急になってルンゼもほぼ突き当たりに。どうやらこのあたりが取り付き付近じゃなかろうか? という場所に到達する。

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凍結した氷の斜面をあがり、右手の尾根上へと登ってみる。たぶんこれが石尊稜だ。ピッケルが効きづらい。シャフトは刺さりきらないのでピック側を刺して確保しながら進む。フットワークはというと教科書通りに前爪を蹴り込んでなんてことはできないが、足首もソールも動くシューズなので氷の斜面をスラブに見立ててスメアリングするように掴んで登っていける。うん、多少の不安はあるけど悪くはない。いける。が、滑ったら真っ逆さまだと思うと足がすくむ。

とにかく尾根の上にあがる。風をまともにうける。勢いよく流れる雲のなかに晴れ間が見えてきた。阿弥陀岳がその全容を現して出迎えてくれる。

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ふぅ、まずはセルフをとろう。木の根にデイジーチェーンを巻きつけてとりあえずは確保。

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さてどうしたものか、このルートで合っているのかどうかも定かではない。このまま尾根上を進んでいくとなるといよいよ両手を使って岩場をよじ登っていかないといけない。登れそうではあるが… その先はどうなっているんだろう??

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と見渡すと向こうの木の幹に残置スリングがかかっている。支点用に設置されてるものだろうか? ということはこの尾根を進んでもいいのだろう。

それにしてもリッジレストを担いで岩場を登ろうという発想には驚かざるをえない…。

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とりあえず物は試しにロープを出して確保しつつ進むことにする。まずは僕がトップで上がって様子をみてみようと取り付いてみるものの、厚手のグローブでうまくホールドがつかめない。木の枝にアルパインクイックドローを巻いて支点を作ろうにも、苦しい体勢をとりながらではカラビナからスリングをうまく展開できない。背面のバックパックが重心を後ろに後ろに引っ張ってくれる。ふむむ、なるほど、冬のアルパインクライミングはこんなものか、これはやっかいだ。一旦下に降りて、グローブを薄手のものに替え、使う本数分のアルパインクイックドローはスリングを展開しておいてから再び取り付く。

足回りは調子が良い。ソールが薄いから足裏の感覚でホールドの様子をある程度感知して探ったり掴んだりすることができる。足首も曲がるから体勢の自由度も高い。重登山靴やプラスチックブーツに前爪ドッギャーンのアイゼンをつけた本格スタイルは試したことはないけど、岩場を登るにはローカットの軽量シューズのほうが向いてるんじゃないかという気がした。

短くピッチを切ってセカンドビレイに移る。60mのロープを巻き上げるのが骨だ。太い木の枝にセルフをとってそのカラビナに直接ビレイ器具をつける。バックアップやら分散支点やらはとらないけど、まぁええやろ、距離も短いし、寒いし…。

しかしいざセカンドを引っ張り上げようとすると凍りついた10.5mmのロープがルベルソキューブを通らない。慌ててストップをかける。なるほど話には聞いていたけど冬場にルベルソキューブは使い物にならんのだなぁと感心しつつ、急いでエイト環に取り替える。今度は大丈夫だ。ロープは流れる。しかし時間をとってしまった。ハンさんは凍えてることだろう。

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セカンドが到着するとそのままトップを交代する。エイト環で確保しながらロープを送り出す。しかしなかなか遅々として進まない。風に吹き付けられぱなしで寒い。ハイキングであれば常時歩いて体を動かしているので発熱するが、クライミングだと地形的にも風をよけられず、ビレイするときはずっと静止したままなのでどんどん体温を奪われて行く。ロープから手をはなして食事をとったりお湯を飲むわけにもいかない。なるほどこりゃ勝手が違うな。

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そうこうしているうちに天候が急変してきた。西の空から押し寄せてきた雲が一瞬のうちに景色を奪う。

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風の音でお互いの声が聞き取りづらい。どうやらピッチを切ったらしい。ビレイを解除して残りのロープを送り出し後を追う。

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2ピッチ目の終了点。相方もやはりATCガイドでだいぶ苦戦したようだ。

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こんな痩せた尾根を登ったり降りたり。

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セルフをとろうとするがクイックロック式のカラビナが思うように開かない。ロック部分を回そうにも指が滑ってしまっているようだ。グローブを皮製のものなどに再検討するか、カラビナに滑り止めなんかを施す必要があるかもしれない。

この先はいよいよ核心だろうか? まったりした雪稜歩きが楽しめると教本にあったのはおそらくこの岩壁の上だろう。行けないことはなさそうだ。しかしここを上がってしまうとこの悪天候の中もう後戻りが効かないかもしれない。時間もすでに15:00を回っている。さぁどうしよう?

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ともかく相方のモチベーションを確認する。同じ迷いに気を揉んでいるだろうことはその表情から明らかだ。

ワ「どうする…?」

ハ「降りましょう!」

ワ (即決かよ…w)「ここでビバークとかは?」

ハ「アリエマセン!」

ワ「だよね…」

なんとなく後ろ髪を引かれる思いを残しつつ撤退に同意する。2ピッチでだいぶ手間取ったし、この天候なら仕方ないか…

ここからは懸垂下降で降りる。岩壁と氷の斜面を3回ほど下降したところでシリセードができるくらいの雪面に達し、あとは一気に滑り降りる。赤岳鉱泉でラーメンでも食べよう。

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16:00頃に赤岳鉱泉に着くと地蔵尾根チームのnariさんと再会。同じく悪天候で撤退したらしく明日また赤岳を目指すという。僕らはナイトハイクでその日のうちに八ヶ岳を後にすることにした。

下山する間、ずっと左手が気になっていた。どうも親指がしびれたのか力が入らない。それほど酷使したわけでもないのにどうしたことか? それに両手の指先がどれも深爪したようにジンジンと軽い痛みを感じる。ハンさんもどうやら同じようだ。軽度の凍傷の入り口一歩手前くらいの症状だろうか? 今まで何度も冬ハイクに出かけたけれどもこんな症状になったことはなかった。グローブも濡れてはいなかったし実質的に日帰り程度の行動時間だったはずだが? しかしおそらくビレイ中にじっとしている少しのあいだ風にさらされたことで、体幹から温度を奪われて体の末端への血流が阻害されたのかもしれない。ともかくどれくらい冷風を浴び続けると凍傷になるのか、その感覚がつかめたことだけでもよしとしておこう。

いろいろと見えてきた課題のまとめ。

足回り: ローカットのトレランシューズと軽量10本爪アイゼンという足回りは思ったよりもよく機能してくれた。岩場での登攀には何も不安は感じなかった。凍結した斜面でも歩き方によってかなり対応範囲は広いが、それも斜度によると思われる。一定の斜度を超えるとおそらく対応は難しく、アイスクライミング的な登攀が必要なシーンには向いていないだろう。

カラビナ・クイックドロー: アルパインクイックドローのカラビナは、厚手のグローブをつけた手でスリングを着け外しするときに特にアゴが邪魔になって鬱陶しい。操作性を高めるためにもクリーンロックノーズみたいなアゴなしタイプにしたいところだけど重量増はいただけない。幸いにもPetzlから最軽量クラス23gのクリーンロックノーズ式ワイヤーゲートカラビナが発売されるという噂があるので、来シーズンまでにはそれに統一したいところ。

ロックカラビナ: スクリューロック式は凍りついて開かなくなることがあった。クイックロック式もこれまた手が滑って開きにくい場面があった。冬期に最優先すべきスピードを考えると、ロック機構は省いてカラビナは全部ワイヤーゲートのみにしてしまってもいいんじゃないだろうか? うーん…

グローブ: 登攀中にホールドをつかみやすく、ギアの扱いにおいて操作性に優れ、なおかつ防風防寒保温速乾性のあるグローブ、そんなものはないって? そうかもしれないけれどとにかくこの部分は大きな課題が残る。要検討。

ビレイデバイス: ロープとの組み合わせにもよるのだろうけどルベルソキューブやATCガイドは冬には向かないかもね…。予備とあわせてエイト環を2枚携行するほうが具合がよさそうだ。

強風対策: 強風で物理的に吹っ飛ばされるとかよりもとにかく体温低下を極力避けるために風を浴びる時間を最小化することのほうが優先度高そうだ。そのためにはクライミング自体の速度もそうだけれども確保のためのシステム構築にかかる時間短縮も大事そう。MetoliusのEqualizerのようなプリセットされたギアは有効だろうか? また化繊ベストなど風を浴びても体幹の温度を逃さないようなウェアも考えないと…

ロープ: ピッチを短めに切るとビレイをしている時間も短くお互い小刻みに運動できるので体温低下を避けられるし、距離が近ければ声も通りやすい。そうなるとロープは短めのほうが巻き上げる労力が少なくて済む。50m? 40m? しかしそこはやはりルートによりけりだし、懸垂下降で下れる距離はロープ長の半分なわけで、あまり短いと難儀することもあるかもしれない。というよりもピッチ数が増えるとクライミング全体の時間としては増えてしまう? どうしたものか、ここは悩ましい選択になりそうだ。少なくとも10.5mmのようなバカ太いものはやめて8mm台のシングルロープにしたほうが軽量化にも確保器のロープの流れの上でもいいかもしれない。

ともかく冬期バリエーションでもランシューズでかなり対応できそうなことが分かったのが最大の収穫か。その他のギア周りの再整備をして次回は来シーズンかな…?

カテゴリー:climbing, Outdoor

鳳凰トレイル Thru-Hike 2009.3.5-7 (3) 装備記録

装備記録のメモ

BASE WEIGHT: 5.9 kg (*without wearing, foods, poles, spikes, camera, mobile phone)

PACKING WEIGHT: about 8.5 kg (*include foods & supplies)

[Packs]

Backpack: Osprey Exos 58L(1043g)

Sub Bag: Arc’teryx MAKA 2(217g)

[Sleeping]

Sleeping Bag: Golite Adrenaline 0°(1250g)

Sleeping Pad: Montbell U.L. Comfort System Pad 90(270g), Reflectix Mat 120 cm(162g)

Bivy Sack: Montbell Breeze DryTec U.L. Over Bag(180g)

Shelter(*unused): SMD GatewoodCape(315g), MSR Blizzard Stakes x 4(96g)

Insulated Clothing: TNF Light Heat JKT(180g), Sky High Down Pants 80(225g), TNF Prima Bootie Short(160g)

[Water Boil & Storage]

Stove&Cooker: Wanderboil original 750ml(250g)

Thermos: Klean Kantean INSULATED(286g), C.A.M.P. Nano Carabiner (23g)

Water Storage: Plutypus 1.5L(26g)

[Gear]

Spikes: Kahtoola MICROSpikes(336g) *wearing

Poles: Pacerpole Carbon 3-section(508g) *wearing

Axe: ULA Helix Ice Axe(131g), Black Diamond Slider Leash(32g), Mammut Dyneema Sewn Sling 8mm x 60 cm(15g), Metolius F.S. mini Carabiner(23g)

Shovel: Snow Claw Racer(163g)

Head Light: Black Diamond Gizmo(58g)

Rain Gear: OR Zealot JKT(218g), OR Nimbus Sombrero(89g)

[Other]

First Aid Kit(30g), Toiletry(255g), Spare Gloves & Underwear(235g), Map case & Compass(20g)…

[Foods & Supplies]

Rice-ball x 3, Bread x 3, CalorieMate x 3, CarboShotz x 3, Trail Mix, Glucose Tablets, Lovely Chocolate!

Primus PG-110, Tobaccos

[Wearing]

Head: TNF Expedition Balaclava, Adidas Elevation Climacool

Hand: OR M’s PL 100 Glove, Arc’teryx Hardface Glove, TNF 3 Finger Shelled Glove Mittens

JKT&Shirts: finetrack Floodrush Skin Mesh T, Golite Drimove Silk S/S, Golite Drimove BL-2 Zip, Montane Female Liberty JKT, finetrack BreezeWrap JKT

Pants: Skins Travel Recovery, Golite Drimove BL-2 Pants, Patagonia M’s R1 Pants, Patagonia Backcountry Guide Pants

Shoes & Socks: Injinji 5 finger, Rocky Gore-Tex Socks, GAMAKATSU Polartec Socks, ICEBUG GG Fly Bugrip, Campagnolo Toe Cover Neoprene Overshoe

カテゴリー:gear, hike, Outdoor

鳳凰トレイル Thru-Hike 2009.3.5-7 (2)

朝起きたらそこは標高2700mの氷の世界、雪が舞い風が吹きつける岩稜の尾根に、遮るものもなくシュラフにくるまっているだけで横になっていたとしたら? それはもう笑うしかないだろう。この日の朝もそんなにわかには信じられない光景とともに目覚めたのだった。ここはどこだっけ? 薄ぼんやりした頭で思い出す。そうだ僕は南アルプスを歩きに来たんだ。昨日は薬師小屋を目指す途中でビバークしたんだった。

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“恐れ”という感情はまず最初に視覚からイメージされるものだと思う。寝ている間にあたりはすっかり真っ白になっていた。雪が降っている。ビビィから這い出る。立ち上がってあたりを見回し息を飲む。高度感のある切り立った崖、一切の景色を奪うガス、僕の寝ていたスペースはちっぽけな島のように霧の中に浮かんでいる。雪混じりの風がシュラフに残っているはずのわずかな温もりを奪っていく。なにもかもが死滅してしまった終末の世界に僕はただ一人取り残され目覚めたのだ、おぉ神よ。

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しかし感覚的に感じる”恐怖”と、実際に自分の身に迫るであろう”脅威”とは区別して考えなければならない。そこを混同すると慌てふためいて間違った判断を下してしまうのだとエラそうなことをうそぶき自分に言い聞かせつつ、寒気でだいぶすっきりしてきた頭を働かせて考えを巡らせる。朝6:00、残り時間は十分ある。気温も-8℃、たいしたことはない。風も年末の北アルプスのハイクのときに比べればそよ風だ。大丈夫。冬に特に気をつけなければならないのは体の疲労と装備の濡れだ。よく眠ったおかげで体調はよく疲れも感じない。手足の装備も万全なはずだ、とシュラフの中をまさぐり昨晩乾燥させるために突っ込んでおいたグローブを確認する。えっ!? ダメだ、乾いていない…

どうもシュラフ自体がすっかり湿気を帯びてしまっている。防水性のビビィに潜り込んで顔もすっかり覆っていたおかげで呼気が蒸れて溜まってしまったのだろうか、頼りのソフトシェルグローブがぐず濡れたまま、昨日の雨でライナーグローブも予備とともに使い果たしていた。

さて、どうしたものか? やや怖気づいた心を持て余しながら自問自答を重ねる。戻ればすぐに樹林帯に入れるぞ、安全圏だ。先に進むと未知の稜線だ。途中でホワイトアウトでもしたら停滞を余儀なくされるかもしれない。濡れた装備のままで大丈夫か? その先の下山ルートも地形的に雪深く難渋するかもしれない。あぁどうしよう。

しかしそんな憂慮とは裏腹にムクムクともたげてくるのは底黒い欲望だ。やっぱ行きてぇ、行くんだ。濡れとか関係ねぇ。グフフッ、見ろあのそそる様なエロティックな稜線を。吹雪にまみれてかすかに透けて見えるその様はまるで誘っているかのようじゃないか。ここで帰ったら嘘だろう!

意を決すると行動するのは早い。スリーピングマットの空気を抜いてたたみ、ビビィに入れたままの湿気たシュラフと一緒にザックに押し込む。脱ぐのがめんどうなダウン上下はそのままに靴を履いて行動開始。まずは昨日たどりつけなかった薬師小屋を目指そう。あの岩の向こうだろうか? 昨晩は分からなかったが明るくなるとルートも辿りやすい。

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岩場を超えると向こうに見えるのは薬師岳だろうか? やはり視界が悪く頂部までは見渡せない。進もう。

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いったん薬師への取り付きまで降りていくと薬師小屋がすっかり雪をかぶって埋まっているのが見えた。昨晩の時点でたどり着いていたとしても中には入れなかったわけだ。長居せずに通り過ぎる。

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あそこが薬師岳だろうか? 分からない。ゆっくり雪を踏みしめながら進む。ところどころ岩が露出していて歩きやすい。アイゼンでなくともMICROSpikesで問題なく歩ける。ピッケルは背中に背負ったままダブルストックで進む。途中で朝食替わりにカーボショッツとパンを食べる。今回はまだ湯は沸かしてはいないがサーモス1本分がまるまる残っている。

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ここが山頂? よく分からないがピークにはさほどの関心はなく、先を急ごう。ダウン上下を着たままなのでさすがに蒸れてきた。

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視界は白く、景色は何も見えない。でもそのためか、下界からの隔絶感が一層強まっているように感じる。こういう冬山もイイものだな。

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南アルプスの核心へと向かう広河原の方向。ここを降りて行けば日本第二の高峰、北岳に行けるのか…? イヤ、そんな恐ろしいことを考えるのはヤメよう。

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薬師ヶ岳を過ぎ、2840mの観音ヶ岳に向かう稜線。

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ガスの先にルートが伸びていて見えなくなっている。ここを進んで行くのか、なんともいいようのない光景。

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8:00。観音ヶ岳に到達。ここが今回のルートの最高地点か、最後のハイクアップにも息はそれほど乱れていない。

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いつもなら山頂は通り過ぎるところだが、今回は上まで登って少し休むことにした。天気はいっこうに晴れる気配はなく、見渡す限りの白い雲が岩の積み重なった山頂を取り囲んでいる。

― すっかり遠くまで来てしまったな…。

眺める景色も何もない山頂で岩の上に座り込み、僕は少しガラにもなく感慨深くなっていた。ここまでのルート、いや、独りになりたくて冬山を歩き始めた2年前、それからいろんな出来事があり、人と出会い…。僕は、果たして自分の力でここまで来れたと言えるのだろうか? それとも誰かのおかげで今僕はここにあるのだろうか? いや、何かに依存せず己のみで存在し得る者などなく、また人が人を変えてしまうことだってできやしないさ。どうでもよいつまらない問いに、答えにもなっていない答えで完結させ僕はしばらく無心でその場に佇んでいた。

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そうだ、と思い立ち、ザックのなかにしまっていたチョコレートを取り出す。バレンタインキャンプでもらったものの自宅でボソボソと食べるのもどうかと思い、どうせなら今回の山行で一番いい景色のなかで食べようと思って持ってきたのだった。

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ひと口かじる。甘い。涙が出そうなほど甘い。もったいないけど全部食べる。景色は何も見えないけれど、山頂でかみしめたこの甘さがいつまでも心に残ればイイじゃないか。頬にあたる風がより一層冷たさを増しているが、気持ちは暖かい。

さあ降りよう。ダウン上下を脱いでザックに押し込み、ピッケルを取り出して肩にかける。ここから先は下りだ。スピードを上げよう。

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急峻な崖の上、雪に映える美しい樹木が立ち並ぶ中を歩く。

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靄の向こうに見えるのは地蔵ヶ岳だろうか? 今回はあそこまでは行かず、稜線の途中からエスケープする。月曜には出勤なんだ、許せ!

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ここから右に折れて下っていけば鳳凰小屋だ。その先が御座石鉱泉。標高差は1600mくらいあるだろうか?

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下りの斜面はやはりすこし雪は深いようだった。ピッケルを握り、何度か座った姿勢で滑り降りて高度を稼ぐ。楽しい。

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本格的に樹林帯に入ると風はぴたりと止んだ。とても静かな冬の景色だ。

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下れども下れども鳳凰小屋に到達しない。また何度か腰まで雪に埋まってもがく。やはりこのルートから登ってくるのは無理というものか、夜叉神から入ったのは正解かもしれない。何度か滑り降りては、埋まり、這い出しては、また滑る。

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11:30、鳳凰小屋に到達。予定よりもペースは早い。早めの昼食にしてパンを食べる。岩と雪の間から水が湧き出しているのを見つける。ペットボトルに汲んで喉を潤す。この先のフラットルートは雪深く昨年2回も撤退した場所だ。進退極まったら難儀だけど、下りだから幾分はマシだろう。

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しかしその心配も杞憂だった。小屋から先はトレースが続いていた。あとから聞いた話しによると、前日に5名 x 2のパーティが鳳凰小屋まで上がったものの引き返したそうだ。おかげで10名分の往復の踏み跡がついていたのでこれは残りのルートは楽になるぞと少し安堵した。

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燕頭山まではややフラット気味なルートをペースを上げて小走りに下っていく。順調なペースだ。

左右に切れ落ちたナイフエッジの通り道に到達。ここはいつも怖い思いをする。左手にピッケル、右手にストックを持って慎重に進む。

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アイゼン替わりにつけたMICROSpikesは今まで何の問題もなく働いてくれたが、この肝心な場面になってはじめて弱点を露呈した。通り道の中間で斜面に置いた右足がズルッと滑り、大きく転倒。そのまま体は崖下に向かって滑り落ちる。とっさに木の杭にしがみつきなんとか停止する。あぶないあぶない…

その後も下りでは何度かスッ転んだ。湿った土に数cmの雪が被ったような下り斜面では特にMICROSpikesは滑りやすいみたいだ。ハイクアップや森林限界上ではあれだけ働いてくれたので今後はメインで使っていこうとも思っていたのだが、それも考え直そう。

その後は急斜面を下りに下る。高度計を何度も確認しつつ嫌というほど下る。足が消耗してヘトヘトになる。

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15:30 御座石鉱泉に到着。

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おばちゃんは去年と変わらず心よく出迎えてくれた。お風呂の支度をしてもらってさっそく入る。

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お手製の漬物にビールをいただく。うまし!

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迎えの車が来るまでしばしくつろぐ。

もう雪山を一人で歩くのはいいだろうか? 十分満足したんじゃないだろうか? これからは少しまったりとキャンプをしたり、低山ハイクやパーティー山行を楽しんでみるのもいいのかもしれない。そんな充実感に満たされながら小屋の入り口に置いてあった入山者ノートをパラパラと眺めていた。

あるページが目に止まる。20才の学生、2月に入ったルートを見て愕然とする。鳳凰→広河原→北岳→間ノ岳→農鳥岳。今回の僕のルートからさらに奥の奥へ、南アルプスの深奥の核心ルートへ、厳冬期に一人で入った若者がいたんだ。すごい、生きてるのだろうか? いや違うそんな心配をしたのではない。むしろ来年、僕はこのルートを歩かずにいられるのだろうか…? そのとき僕は生きてるのだろうか…? とそう思わずにいられなかったのだ。

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鳳凰トレイル Thru-Hike 2009.3.5-7 (1)

ブゴフィッ!!

野太い野生の嘶きが闇を裂いた。月明かりのナイトハイクに気を良くして歩いていた身体が一瞬に緊張してこわばる。両の手に持ったストックをぎゅっと握り締める。このあたりは鹿や猿だけでなく猪がよく出るというタクシーの運転手の話が頭を巡った。

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南アルプスの懐、無雪期の昼間であれば登山客で賑わうはずであろう夜叉神峠に向かう山中、深夜2:00。JR韮崎駅からタクシーで乗り付けた登山口から歩いて30分もたったころだろうか。

次の瞬間、枝を踏む音がものすごい速さで移動する。向こうも突然夜中に現れた異邦人に驚き慌てているのだろうか。月明かりはしかしわずかに山道だけを照らし、藪の中を走る獣の姿は影すらも見えない。こっちへ来るな、どこか遠くへ行ってくれ。

息を潜め、こちらの動きを感づかれないようにじっと静止する。いや、恐怖で身動きできなくなっているといったほうが正しいだろうか。僕には焦った獣の突進する方向をどうにかする術は持たない。まったく世の中はどうにもならないことだらけだ。自分の力で運命を切り開けるなんて信じるほど楽天家でもない。しかしこの場合は、せめてできるだけのことはやっておくべきだろうという気がしたのだ。とにかくどうする? 声を出して威嚇すべきか? いやそれはまずい。ピッケルを出す? ストックを振り回す? 怒らせちゃダメだ。あぁそうだライトをつけよう。

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ヘッドライトを照らし、あたりをゆっくり見回す。敵は、少し遠くへ行ってくれただろうか? ガサガサと葉を踏む音が離れて行くのが聞こえる。しかし安堵したのも束の間、今度は山道の反対側で枝を折る音が大きく響く。つがいだったのか? 心が折れる。もうダメだ…w

藪の中でバキバキと枝を踏む音は数秒間続いた。じっと離れて行くのを待つ。しかしもうなにも信じられない。この山の闇の中、どこになにが潜んでいるか分かりやしない。戦乱のソマリアやアフガンで見えない敵に囲まれる心境とはこういうものだろうか? これはテロだ、アニマルテロだ。熊鈴を持ってくればよかったなぁと思うが今更どうしようもない。せめて口笛を吹こう。不意に選んだ曲は”Lucy in the Sky with Diamond”だった。

一曲をゆっくり吹き終わってようやく歩き始める。すこし元気になる。音の主は去ったようだ。引き返そうかとも思ったけれどもそれも怖い。さっき去った獣が後ろに回り込んでいるかもしれない。とにかく先に進もう。口笛はエンドレスにビートルズをループしながら早足に歩みを進める。

今回目指すルートは山梨県の西部に広がる巨大な南アルプスの山塊、その入口に控える鳳凰三山だ。冬でも比較的アプローチもしやすいうえに人は少なく、入門ルートとしてうってつけだと狙っていたが、昨年に二度、今年も一度トライして敗退してきた因縁のトレイルだ。

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夜叉神登山口までは韮崎駅からタクシー深夜料金で9000円かかった。予定ではそこからゆっくりハイクアップして森林限界を越え、標高2780mの薬師ヶ岳、2840mの観音ヶ岳を経由して、御座石鉱泉へと一気に下る。昨年は逆ルートからトライしたが登りのキツさと雪の深さに敗退を余儀なくされたため、今回は南斜面で雪が少なく傾斜も緩そうな夜叉神峠から入ることにした。

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今回は土日の休みしかないため金曜夜からのナイトハイクを織り交ぜることにした。しかし天気予報は悪い。土日両日とも雨予報だ。森林限界を超えても雨になるのか雪になるのか分からない。金曜日の甲府市の日中気温は21℃まであがったようだ。

深夜2:30。夜叉神峠まで上がる。ここは前回雨で引き返した場所だ。またガサガサと暗闇の奥で獣が逃げる音がする。先へ進もう。

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道に凍結した雪が現れ始めたのでMICROSpikesを履く。今回はアイゼンではなくこれで乗り切るつもりだ。はじめての装着だが調子は良い。

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深夜3:00。夜叉神小屋を越えて大崖頭山へのハイクアップの最中、ポツポツと雨がふりはじめてきた。レインハットを被る。心中はまだ獣の影に怯えている。曲目はいつしかビートルズメドレーを一周し、”While My Guitar Gently Weeps”を吹き終わってからクラプトンメドレーに入った。深夜の南アルプスに泣きのギターリフが響く。

深夜4:00。月が完全に隠れてあたりが暗くなった。ヘッドライトをつけて歩くも雨足はだんだん強くなってきている。南アルプスの本脈側からゴウゴウと風がぶつかりあう音が遠くに聞こえる。口笛を吹き続けながら登るのも疲れた。大崖頭山の山頂はあきらめ途中でビバークすることにした。今回はシェルターは張らず、モンベルのブリーズドライテックU.L.スリーピングバッグカバーをビビィ替わりにして眠る。雨の中手早くセッティングして潜り込む。外気温も-3℃程度なので十分に暖かい。ザックにはレインウェアを被せて濡れないようにした。

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すぐ近くだろうか。ゴウウッとさっきよりもずっと大きな音で、北から南へと風が何度も通り過ぎる音が聞こえた。心休まらぬままに眠りに落ちる。

翌朝。目覚めたら9:45、しまった寝すぎた。雨はまだ振り続けているがシュラフカバーがしっかりとはじいてくれている。中も結露せず暖かく眠れた。もぞもぞと這い出しパッキングを済ませる。靴を外に出しっぱなしにしていたので中が濡れてしまった。これから本格的な積雪地帯へ向かうというのになんたる失態。

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昨晩は暗闇の中で分からなかったが、寝ていた場所はこんなところだった。

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50mも歩かないうちに大崖頭山の山頂に着いた。なんだこんなすぐ近くだったのか。今日はできれば南御室を経由して薬師小屋まで進みたい。

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樹林帯をゆっくりハイクアップ。傾斜はなだらかで心地よい。

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雪の量が増えてきたが、振り続けるのは雨だ。まだ当分は降雪になりそうにはない。

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今回のソフトシェルパンツはPatagoniaのBackcountry Guide Pants。前回はArc’teryxのGamma AR Pantsを履いていったが雨のなかで浸水してずぶ濡れになった。BCG Pantsはやっぱり調子よく、雨もものともせず弾いてくれる。やはりレインパンツはいらないなと思いを強くした。

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グローブはライナーの上に防水ミットを装着する。

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しばらく歩くと本格的な山装備に身を包んだ若いカップルに追いつき、抜きつ抜かれつしながら並走して進むことになった。南御室まで歩いてピストンで降りるらしい。

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しかし話を聞いていると、夫婦でもなく付き合っているわけでもなさそうだ。どうすれば付き合ってもいないガールをこんな時期こんな場所まで二人きりで連れてこれるんだ?? すごい、見習いたい(笑)

南アルプスの本脈は雲に隠れて見えない。わずかに裾部分だけが覗いている。あの奥に超弩級の山脈がそびえているのだが、山行中一瞬でも晴れるといいなぁと願いつつ。

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雪はいよいよ深くなる。今回はスノーシューを持ってきていないため、何度もずっぽりと腰まで埋まる。そのたびに硬くて重い雪から這い出して息が切れる。

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12:30 南御室小屋に到着。標高2400m付近。小屋は開放されていたので中に入って休むことにした。

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雨足は一層強くなってきており、屋根を打つ音が騒がしい。カップルが湯を沸かし料理を作るのを横目におにぎりと魚肉ソーセージを口に詰め込みさっさとシュラフを広げて一寝入りする。予報では15時くらいから雨があがるらしいがどうだろうか…? 雨があがらなければここで停泊するか? いやそれでは日曜のうちに下山できない。突っ込むしかないな。そんなことを考えながらウトウトと眠りに落ちる。

15:30に目を覚ます。晴れている! 傾きかけた陽光がまぶしく雪面を輝かせる。

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行こう、薬師ヶ岳へ。今日のうちに森林限界の上に出るんだ。ここでテント泊するというカップルに別れを告げ、小屋から続く尾根に向かって急斜面に取り付き始める。

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何度も雪に足をとられながら登攀を続ける。徐々に高度を上げて行く。トレースはない。

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また腰までずっぽり雪に埋まる。片足が挟まって抜け出せない。力を入れると股の関節が抜けそうだ。15分くらい格闘する。ストックの柄を使って雪を掻き出し掘り出しようやく足を抜けることができた。時間は刻々と過ぎているが、森林限界はまだ見えない。

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風が出てきて再び天候が傾き始めた。夕闇も近づいてきている。靄があたりを包んで幻想的な雰囲気になる。

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18:00。標高2700m、やっと森林限界の上に出た。しかし日は落ちてしまった。今夜は月も見えない。ライトをつける。もう少し先に進んでみよう。この先に薬師小屋があるはずだ。

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暗くてルートが見えない。尾根を巻くのだろうか? と思って進んでみるも、急斜面の樹林に阻まれ雪にまみれて引き返す。ソフトシェルグローブがすっかりびしょ濡れてしまった。さっきの南御室で防水ミットを外してザックに入れてしまったのだった。肝心な時にいつもこうだ。

引き返して雪の急斜面を直登してみる。ピッケルを出すのがめんどくさいのでストックで無理やりよじ登った。MICROSpikesはよく働いてくれ、足元に不安は感じなかった。上がってみると岩稜の尾根だった。樹木はなく、風に吹きさらしてところどころ雪がついてないところが見える。この先に小屋があるのだろうか? しかしルートに確信が持てない。へたに動いて体力を使うのも嫌だ。ここでビバークすることとしよう。

岩の影にマットを敷いて、昨晩と同じくビビィ泊とすることにした。濡れたソフトシェルグローブと靴のインソールをシュラフの中に放り込み、上下のダウンを着込んで潜り込む。

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雪山の森林限界の上、そうだここは下界から最も遠い場所のひとつだ。真っ暗闇の夜にただ一人、幕も張らず無防備な状態で眠る。至福と孤独が綯い交ぜになったようなそんな気持ちをどうにか落ち着かせる。ときおり冷たい風が強く吹きつけてくる。昨晩よりもさらに大きい音でゴウゴウと風の音が鳴り続けていた。

(つづく)

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