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1/29-30 木曽駒ハイク(2)


前回からの続き。

14時過ぎに岩陰にワンショットテントを張りばたんと倒れこんで眠りについてから目覚めるとまだ周囲にはわずかに明るさが確認できた。早朝から行動していたとはいえこのまま翌朝までテント内で過ごすのはひどく退屈だなと思いながらいつものことだと半ばあきらめ、ザックの底からパンを取り出しちぎっては口にほおりこみ、一応の食欲が満たされたところで本格的に眠りに入ろうとしたが、そのまえにさっきの行動中に地図をなくしたので翌日の行動についてじっくり検討しなければならないことを思い出した。幸いにもドコモ仕様にしたiPhoneの電波が入る。ネット上にころがっている地図をあさり、山行記を読み、大雑把だけれどもなんとか下山ルートの地形は把握できたので明日はこの先の木曽上松方面へ進むことに意を決したところでちょうど周囲は暗くなった。

吹雪のなかテントに閉じこもることざっと17時間。気温は-23度。厳冬期用に作った900FPの自作キルトは凍えるほどではないにしても暖かくはなく、じんわりと立ち上がる寒気で何度か目が覚めるがじっとやり過ごす。

翌朝、7時にテントを抜け出しパッキングを整える。 体が重い。朝食はまたパンを半分とすっかりぬるくなったホットレモンを一口。昨日と同じようにスノーシューを履きストックを両手に持って出発する。冷気でやられたのか一眼デジカメのバッテリーが切れていたので、ここからはiPhoneで写真を撮る。

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天候は未だ回復せず。玉ノ窪山荘はすっかり雪に埋まっていて屋根だけが確認できる。その先の視界は昨日と同じで吹雪に覆われてほとんど確認できない。もしルートから外れて雪庇でも踏み抜いたらかなわないと、コンパスとiPhoneの地図を何度か見やって進行方向を確認する。風が弱まり視界が回復するタイミングを待って先に進む。

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山荘の先は風の通り道となっており、ゆるやかなスノーリッジが形成されていた。地表の数センチをきらきらと粉雪が飛び回っており、ゆっくり踏みしめて歩くととても気持ちがよい。

…と歩いていたところで急に体の自由が失われる。息が弱まりがっくりと膝を折ってその場に手をついて倒れこむ。体が動かない、どうしたことか。まだ出発して20分とたたない場所だ。息を整え立ち上がろうとするも、1歩2歩進んだところで再び倒れこむ。何が何だか状況を把握できないなかで悶絶しながら転がりまわり、吹きさらしのスノーリッジのちょうど中間のあたりで強風を浴びながら寝返って天を仰ぐ。曇り空がものすごいスピードでおどろおどろしくカタチを変えていくのを虚ろに眺める。

まいった、ハンガーノックか、それとも高所や冷気の影響で体に変調をきたしたのか。ともかくこの周囲は完全な無人の冬山地帯なわけで、どんな状況だろうと独力で脱しないといけない。強風に吹きつけられじりじりと体温も下がってきているがどうしても体が動かずその場に寝転がって朦朧としてすこし休んでいると、スノーリッジからずるずる滑り落ちていることに気づき、這いつくばりながら必死に体を動かして登り返し、稜線の頂部に抱きつくように体を預けてまた休む。あぁまいった。

ザックを降ろし、中からカーボショッツを取り出して吸いつく。続けて練乳まるまる一本と、カロリーメイト二袋を消費する。ともかく風が強いのでなるべく早くこの場を離れなければいけないと必死に立ち上がり、一歩進んで休み、一歩進んで休みながらふらふらと前進する。

なんとか100mほど進み風除けになりそうな岩陰に達したところで座り込み、湯を沸かして本格的に休むことにする。

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変調の原因はおそらくハンガーノックだろうと見込みをつける。冬季にやってしまうのははじめてだ。あまりに長時間寒いテント内で停滞して体力を奪われた一方でエネルギーの補給が足りていなかったのかもしれない。このまま予定通り木曽方面に進むか、それとも鼻の先にある木曽駒ヶ岳まで登り返して出発点の千畳敷に降りるか、過去の冬山行を思い起こし比べながら思案する。わずかとはいえ体力を浪費する登りは嫌な気がする。このまま先に進めば距離は長いけれども下りだけのようだし尾根筋だからラッセルもさほどきつくないんじゃないかと想定し、予定は変更せずそのまま歩いてみることにした。カーボショッツの効き目は驚くほど早く、休んでまもなくすると体が動くようになった。

そこから先は、さっきまでの異変がウソのように快調に歩く。視界はすっかり雪雲に覆われているけれども、森林限界上の稜線を緩やかに下りながらふわふわとスノーシューで歩くのはとても楽しい。すっかりご機嫌。

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しばらく稜線のハイクを満喫しながら歩き、樹林が現れてくるころには何だかんだお昼になっていた。

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ここから先はすこし雪が増えるかもしれない。でもコースタイム的にはまだ余裕がある。自作のチタン製ジェットボイルもどきを取り出し、湯を沸かしてコーヒーブレイク。

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標高2600mくらいだろうか、ブレークポイントは尾根の踊り場になっており、ここからさらに下るのだけれども降り口の方向が樹林に隠れてよくわからない。右か、左か。まずは左側を少し降りてみるとさらさら雪のものすごい急斜面でこのまま行くと登り返しが難しそうなのでいったん戻り、今度は右側へ進んでみる。しかし右側へしばらく行くと今度は左のほうに本筋が見える。やっぱり左か、と逆戻り、先ほどの急斜面を今度は迷いなく滑り降りる。しかし降りてみると右側に本筋が見える。しまった行き過ぎたと雪をかき分け食らいつき必死に登り返してまた右側へ進む。しかしどうしても尾根の本筋に進めない。iPhoneのGPSとコンパスを何度も見比べて方向を見定める。やっぱり左側から回りこむのかと急斜面をさらに下ってみるも、やはり違う。こんどはさらに厳しい登り返しになってしまった。めんどうなのでスノーシューをつけたまま無理やり登ると雪面が崩れて滑り落ち、スノーシューを枝にひっかけて真っ逆さまな状態でぶら下がってしまった。どうにも動けないので逆さまの状態のままスリングを枝に巻きつけそれを手につかみ、勢いをつけて靴から足を引っこ抜く。ローカットシューズなのが幸いしてなんとか復帰できたけれどもハイカット靴でがっちり靴紐を結んでいたら万事休すだったかもしれないなと恐れおののく。再び踊り場まで登り返したころにはすっかり体力を浪費する。すでに2時間ばかり行ったり来たりしているうちに日が傾いてきた。尾根筋は登るのは易しいけれども下るときは意外とドツボにはまりやすいものだなと感心しながら行動食を摂って一息つく。

右も左もダメなら真ん中かと、一見そこにはルートは続いていなさそうな樹林の斜面をかきわけながら下ってみると、その奥にくねった細尾根が続いていた。ようやくルート発見。しかし時間が厳しくなった。急がなければ。

そこから先もトレースの一切無い樹林帯で、何度もルートを間違える。GPSは補足しているのだがiPhoneの地図では細かな地形は読み取れず、ことごとく勘も外れる。

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ところどころ獣の足あとがあらわれ辿るように歩いてみるも、ときには騙されルートを外される。あまりアテにならない。

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ようやく7合目の遠見場に到達。16時を過ぎている。終電に間に合うだろうか。

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いよいよ周囲は暗くなってくる。暗くなると一層ルートの判別が難しくなり、間違った方向に進んで難所にハマり、枝にぶら下がったり岩壁をトラバースしたりしながらぐるりと周って同じ場所にもどってきたりしているとさすがに途方にくれてくる。今日中の下山はもう半分あきらめビバークの用意をはじめ、湯を沸かそうとストーブを取り出すがライターが湿気ってしまったのか2つとも火がつかない。これはたまらないのでやっぱり歩こうとナイトハイクの覚悟を決めてヘッドライトを装着し歩き続けることにした。

疲れて歩くペースが落ちたのか、ルートミスを繰り返して時間ロスしたのか、20時を過ぎてもいっこうに到着しない。標高が下がって悪天候から脱し、月が出てきたのだけが幸い。ようやく遠くの下界に街の灯りが見えてきた。両足はさすがにへとへとに疲れ、その後も森の中で何度もルートミスを繰り返しながらも、もうどうせ降りるだけだろと開き直って直進し、藪に入り込み、獣の音に怯え、なんとか上松の登山口まで辿りついたのが23時過ぎ。川の水を汲んで喉を潤しへたりこんで休む。トラブル続きですっかり時間をかけすぎてしまった。もちろん終電は乗り過ごしてしまったわけで、当初のプランである1泊で中央アルプスを通り抜ける日程としては未達成になってしまった。

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カテゴリー:hike, Outdoor
  1. kimatsu
    2011-05-3010:19

    読み応えある遭難レポ、さすがです!ともあれ無事でよかったですね。

  2. hitobitobashira
    2011-06-1222:58

    読んでいてドキドキしました。
    無事でよかった。

  3. ばばちょっぷ
    2011-06-1621:05

    ビビりました(>_<)
    生きてますよね?(@_@;)凄いです!凄すぎです!!

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