Archive

Archive for 2012年7月

八ヶ岳石尊稜アルパインハイク

さていよいよ夏シーズン真っ盛り、というタイミングで冬のお話。

PC245490.jpg

2年前にもトライしながら悪天候で敗退した八ヶ岳の石尊稜のアルパインルートにリベンジしたのは12月のこと。

冬季は一般道を歩くハイキングがもっぱらメインだけれども、自分の目指す領域は森林限界の上なので、いつなんどき滑落したり、ホワイトアウトで道に迷って難所に突き当たったり、悪天候を避けるために悪路を突破したりという状況もいろいろと想像してしまうので、一般道から離れた冬山の姿かたちを肌感覚で知っておきたい。それもなるべくハイキングの装備に近い状態で登攀ルートを歩いてみたい、という考えで。

前日に赤岳鉱泉に入り幕営。早朝、ロープにクライミング道具一式を担いで取り付きへ向かう。

PC245463.jpg

取り付き点までの道のりは前回も迷ったけれども、今回もやっぱり迷いながら、雪に埋もれた沢筋をたどり細い尾根にしがみつきながら到達。天候よし。

PC245465.jpg

前回はここで吹雪が強くなり視界ゼロの状況になって引き返した取り付き地点。ここからロープを出して確保しながらあがる。1ピッチ目は簡単そうに見えるけれども、実はあんまり頼れるホールドがなく、ここが一番の核心だとか。

PC245464.jpg

今回の足回りは、いつものトレランシューズに自転車用のネオプレンカバーをかぶせ、Hillsoundのトレイルクランポンという構成。

PC185418.jpg

冬季クライミングとはいえビギナールートであるし、氷壁でない限り足首が周りソールを曲げられる靴のほうがムーブ的にも有利だし前爪も必要ないだろうという判断。なるべくハイキングとの装備差をなくしたいという考えもあり。とはいえ登攀ルートでの試用ははじめてなので、はたして完登なるか。

このトレイルクランポンは、Kahtookaのマイクロスパイクと比べて爪が長く、爪同士が一体化されて動きにくくなっているので雪面でのフリクションは多少はよくなっているだろう。

PC185419.jpg

先行パーティーの人が取り付くのを横目に我々も準備オッケー。1ピッチ目は僕のトップでスタート。

PC245467.jpg

傾斜も大したことない、なんてことなさそうなルートに見えたけれども、実際登ってみると微妙で、これといったホールドがなく、手につかんでもボロッと崩れ落ちる。中間支点もなかなかとれないし、足元も心細く慎重になる。落ちると崖下にまっさかさまだし。

PC245469.jpg

なんとか登りきってようやくピッチを切る。シューズ周りは快調で問題ないように思えた。

セカンドであがってきたパートナーは途中でずるっと落ちたけどロープで確保。前爪がっつりのアイゼンをつけたブーツだと足を支えるのも大変でこういう場所だとやはり登りにくいとのこと。向き不向きはあるのだろう。

ピッケルは本当は一本だけで行こうと思っていたけれども、結局、念のため予備に持ってきたものも使うことになってダブルアックスとなった。CAMPのコルサナノテクと、ULAのなんちゃってカーボンピッケルという軽量重視の構成。

PC245475.jpg

柄を持ってピックを突き立てるよりも、雪の斜面をあがるときに2本のピッケルのピックを持って柄の部分を突き刺しながら登るタガーポジションをとることが最も多かった。その用途に関してはこの2本とも取り回しよく問題なさげ。

PC245476.jpg

急斜面でのトレイルクランポンのフリクションを試す。足全体を雪面につけ、体重をかけると、1cmほどずるっと後ろへ滑って止まる感覚。一歩ずつ試す。やはり滑る。でも止まる。もちろん通常のアイゼンならビクともしないだろうけれど、1cmの差。このフリクションを信じられるかどうか、怖いと思うかどうか。滑り落ちたら谷底へまっさかさま。でもピッケルも2本とも効かしている。このルートのこのコンディションならよしとする。

相方のアイゼンはしっかり効いていたそう。

PC245472.jpg

目指す稜線が近づいてきてるのかどうか、やや曇り空になり風も出てくる。ビレイ中は長時間動かないので寒風が吹きつけて体温が奪われる。ダウンを羽織る。

PC245477.jpg

美しくも不気味な恐ろしさを感じる光景。あそこへあがるのか。あがれるのか?

PC245479.jpg

岩にスリングを巻きつけて確保をとりセカンドを待つ。だんだん風も強くなってくる。

PC245483.jpg

冬季アルパインはパートナーともども初体験で未知のゾーン。八ヶ岳の圧倒的な岩稜の光景と、吹きつける強風に、心がすこし怖気づいてくる。稜線は近いのだろうか。どこまで上がればいいんだろう。

「もうムリっす。トップ行ってください(泣」

「ダメだって〜。交代だからさ。行けるよ!ほら」

なんてパートナーの尻をたたきつつ、自分も気力を振り絞る。

ここがラストピッチだろうか、だんだん岩々しくなってルートもどこなのか不明確になってくる。でも心なしか空が開けてきたような。

PC245484.jpg

よっこらしょっと。

PC245488.jpg

あがった。生き残った!ほっと安心。

PC245490.jpg

今まで何度と冬ハイクに出かけたけれど、ピークに到達することには何の意味も見出していなかったし、目指したこともなかった。でも今回はじめて登頂したことの喜びを感じた。達成感?というよりも、安全圏に辿りついた、生き残ったという安心感に近いような。登山家と呼ばれる人たちはこういう行為にアドレナリンを噴出させてやみつきになっているんだろうなぁと少し理解できたような気がする。いや、そっちの道に向かうと命がいくつあっても足りないので、ここらへんで満足ですけど。

甲府の奥村本店に立ち寄り、とりもつで乾杯。

PC255492.jpg

カテゴリー:climbing, hike