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八ヶ岳石尊稜アルパインハイク

さていよいよ夏シーズン真っ盛り、というタイミングで冬のお話。

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2年前にもトライしながら悪天候で敗退した八ヶ岳の石尊稜のアルパインルートにリベンジしたのは12月のこと。

冬季は一般道を歩くハイキングがもっぱらメインだけれども、自分の目指す領域は森林限界の上なので、いつなんどき滑落したり、ホワイトアウトで道に迷って難所に突き当たったり、悪天候を避けるために悪路を突破したりという状況もいろいろと想像してしまうので、一般道から離れた冬山の姿かたちを肌感覚で知っておきたい。それもなるべくハイキングの装備に近い状態で登攀ルートを歩いてみたい、という考えで。

前日に赤岳鉱泉に入り幕営。早朝、ロープにクライミング道具一式を担いで取り付きへ向かう。

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取り付き点までの道のりは前回も迷ったけれども、今回もやっぱり迷いながら、雪に埋もれた沢筋をたどり細い尾根にしがみつきながら到達。天候よし。

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前回はここで吹雪が強くなり視界ゼロの状況になって引き返した取り付き地点。ここからロープを出して確保しながらあがる。1ピッチ目は簡単そうに見えるけれども、実はあんまり頼れるホールドがなく、ここが一番の核心だとか。

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今回の足回りは、いつものトレランシューズに自転車用のネオプレンカバーをかぶせ、Hillsoundのトレイルクランポンという構成。

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冬季クライミングとはいえビギナールートであるし、氷壁でない限り足首が周りソールを曲げられる靴のほうがムーブ的にも有利だし前爪も必要ないだろうという判断。なるべくハイキングとの装備差をなくしたいという考えもあり。とはいえ登攀ルートでの試用ははじめてなので、はたして完登なるか。

このトレイルクランポンは、Kahtookaのマイクロスパイクと比べて爪が長く、爪同士が一体化されて動きにくくなっているので雪面でのフリクションは多少はよくなっているだろう。

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先行パーティーの人が取り付くのを横目に我々も準備オッケー。1ピッチ目は僕のトップでスタート。

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傾斜も大したことない、なんてことなさそうなルートに見えたけれども、実際登ってみると微妙で、これといったホールドがなく、手につかんでもボロッと崩れ落ちる。中間支点もなかなかとれないし、足元も心細く慎重になる。落ちると崖下にまっさかさまだし。

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なんとか登りきってようやくピッチを切る。シューズ周りは快調で問題ないように思えた。

セカンドであがってきたパートナーは途中でずるっと落ちたけどロープで確保。前爪がっつりのアイゼンをつけたブーツだと足を支えるのも大変でこういう場所だとやはり登りにくいとのこと。向き不向きはあるのだろう。

ピッケルは本当は一本だけで行こうと思っていたけれども、結局、念のため予備に持ってきたものも使うことになってダブルアックスとなった。CAMPのコルサナノテクと、ULAのなんちゃってカーボンピッケルという軽量重視の構成。

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柄を持ってピックを突き立てるよりも、雪の斜面をあがるときに2本のピッケルのピックを持って柄の部分を突き刺しながら登るタガーポジションをとることが最も多かった。その用途に関してはこの2本とも取り回しよく問題なさげ。

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急斜面でのトレイルクランポンのフリクションを試す。足全体を雪面につけ、体重をかけると、1cmほどずるっと後ろへ滑って止まる感覚。一歩ずつ試す。やはり滑る。でも止まる。もちろん通常のアイゼンならビクともしないだろうけれど、1cmの差。このフリクションを信じられるかどうか、怖いと思うかどうか。滑り落ちたら谷底へまっさかさま。でもピッケルも2本とも効かしている。このルートのこのコンディションならよしとする。

相方のアイゼンはしっかり効いていたそう。

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目指す稜線が近づいてきてるのかどうか、やや曇り空になり風も出てくる。ビレイ中は長時間動かないので寒風が吹きつけて体温が奪われる。ダウンを羽織る。

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美しくも不気味な恐ろしさを感じる光景。あそこへあがるのか。あがれるのか?

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岩にスリングを巻きつけて確保をとりセカンドを待つ。だんだん風も強くなってくる。

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冬季アルパインはパートナーともども初体験で未知のゾーン。八ヶ岳の圧倒的な岩稜の光景と、吹きつける強風に、心がすこし怖気づいてくる。稜線は近いのだろうか。どこまで上がればいいんだろう。

「もうムリっす。トップ行ってください(泣」

「ダメだって〜。交代だからさ。行けるよ!ほら」

なんてパートナーの尻をたたきつつ、自分も気力を振り絞る。

ここがラストピッチだろうか、だんだん岩々しくなってルートもどこなのか不明確になってくる。でも心なしか空が開けてきたような。

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よっこらしょっと。

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あがった。生き残った!ほっと安心。

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今まで何度と冬ハイクに出かけたけれど、ピークに到達することには何の意味も見出していなかったし、目指したこともなかった。でも今回はじめて登頂したことの喜びを感じた。達成感?というよりも、安全圏に辿りついた、生き残ったという安心感に近いような。登山家と呼ばれる人たちはこういう行為にアドレナリンを噴出させてやみつきになっているんだろうなぁと少し理解できたような気がする。いや、そっちの道に向かうと命がいくつあっても足りないので、ここらへんで満足ですけど。

甲府の奥村本店に立ち寄り、とりもつで乾杯。

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カテゴリー:climbing, hike

八ヶ岳石尊稜バリエーションハイク、敗退 2010.3.20-21

バリエーションルート、アルパインクライミング… 用語の定義はいろいろあるみたいだけれど、ようするに一般登山道ではない登攀ルートを時にロープで確保しながら登っていくような行為だと思えばいいのだろうか。なんだか映画や小説などで出てくるような、厳しい山をザイルパートナーとともに命がけで征服していくような男臭い世界。僕の中での”登山”のイメージはどちらかと言うとそういう行為が近しいように思う。すごいな、とは思うけれども、その世界にどっぷり浸かって取り組んでみたいとまではさすがに思わない。

そんな次元の違う世界に少し興味を持ったのは、ここ近年通っている冬山ハイキングにそのバリエーションルートのクライミングを組み合わせてみるとどうなんだろう? と思ったりしたからだ。一般登山道にとらわれず行程の自由度が圧倒的に増えるんじゃないだろうか? いや装備が一気に増えるし時間もかかるしパートナーも必要だし逆に足かせになるんじゃないの? どうなんだろう? いつからかそんな問いが頭のなかにチラホラと浮かんでいたのだけれど、やはり実際に試してみないことには分からない部分が多すぎる。ということでいよいよ厳冬期も終わり初春を迎えた八ヶ岳に、バリエーションルート初山行へと足を伸ばしてみることにした。

今回は特にハイキングと組み合わせることが前提のバリエーション、となるといくつかの条件が出てくる。まず足回りはローカットのトレランシューズに防寒用のネオプレンカバーを被せたいつものハイキングスタイル、アルミとは言わずともスチール製の前爪が出てない軽量な10本爪アイゼンで行けることが前提。また装備は基本的に全部担いで登攀する。スルーハイクを前提とするから、テントやシュラフなどをデポしてベースキャンプへ戻るという発想は持たない。逆にいつでもビバークできる装備を担いでいれば厳しい局面で悪天候に遭遇しても心強いかもしれない。その点は日々の軽量化でザック重量10kg以下に押さえ込めるだろう。ソロはもちろん無理なわけでパートナーと同行するが、装備は個食個泊を前提で共同装備はクライミングロープ一本のみ。

どうなんだろう? そんな条件で行けるんだろうか? 分からない。行くこと自体はたぶん問題ないような気がするけど楽しめるのか? ともかく行ってみないと。いずれにしろ冬山のハイキングでも僕の歩く場所は森林限界の上だ。いつなんどき雪庇を踏み抜いたり強風に吹き飛ばされて死地をさまよう羽目になるやも分からない。こういうことも経験しておいて損はないだろう。

結果的には今回は悪天候に尻尾を巻いて途中撤退したのだけれど、いくつかの仮説を検証でき課題も見えたことなのでよしとする。以下レポ。

日の暮れるころ、前泊予定地の赤岳鉱泉へと向かう途上。なくしものをしたりして僕だけ何度も行き来するはめになり結局赤岳鉱泉に到着したのは21時だった。10.5mmx60mのMAMMUTのロープがとにかく重い。これだけで3.8kg、ゲレンデならかまわないがバリエーションのときはもっと軽いのが欲しいところ。

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翌朝、赤岳鉱泉にて。アイスキャンディーを背景に並ぶBDテント4基。

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深夜から激しく雨が降りだし雪に変わって、日が登ってからようやく天候は落ち着いてきた。幕は軽量化のためにフロアレスシェルターにしたかったのだけれど、事前から雨予報だったので前泊でシュラフを濡らさないよう今回は自立ドーム型を選択。稜線でビバークする前提でビビィも携行。

4基のBDテントの主のうち、nut’sさんnariさんは地蔵尾根の一般ルートへ。バリエーションを目指すのは僕と、毎度のパートナーmt_hanter氏。

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準備を整えつつ小屋で情報収集。上は風が強いらしく、ほとんどのパーティーは停滞しているとのこと。小屋の主?らしきおじさまによると今日は無理だろうと、まぁ行けるところまで行ってみたらいいさ、とのアドバイスをもらう。

10時過ぎ。Arc’teryx A300aハーネスにギアをつけて完全装備で出発。内訳は、Metolius F.S.miniカラビナ(23g)にBeal 6mm Dyneema Slingをかけたアルパインクイックドローを5本程度、別途同じくBealの6mmスリング各種長さのものを数本、環付カラビナはTrango Superfly Screwlock(40g)を3枚、CAMP Base TwistLock(49g)1枚、プルージックコード2本、BDのデイジーチェーン、ビレイデバイスはRocteryxのデサンドールミニエイト環(70g)にルベルソキューブ(75g)。プロテクション類は今回はなし。お守りにフィフィフック。ロープ以外は軽さを最重視したチョイス。

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今回目指すルートは石尊稜。八ヶ岳主稜の横岳近くに上がるルートらしい。教本「チャレンジ・アルパインクライミング」によると八ヶ岳の冬期ルートのなかでも最も易しいルートで支点も整っており初心者同士でも安心とのことだが、他のソースによると赤岳主稜ルートのほうが簡単だとかで情報が食い違っている。が、とにかく今回はそのルートをあがる計画。横岳付近まで上がれたらその場でビバークし、翌日稜線を少し歩いて尾根の反対側へと下山するプランとした。どこから降りるかは登ってみてから考える。

取り付きまでは一般道を離れて沢筋を入っていくらしいのだが案の定迷う。

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やはり道を間違ったらしく中山乗越まであがってしまった。行き過ぎだ。八ヶ岳の稜線が見渡せるが雲にかくれておどろおどろしい。こんなところ登っていくのか…??

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ここで中山尾根を降りてきたパーティーと遭遇。上は風が強く、顔面が凍傷になりそうで2ピッチほどで降りてきたという。リーダーの人に石尊稜までのルートを聞いて再び来た道を戻る。ここで地蔵尾根チームと別れる。

どうやらこの沢筋だろうというポイントを見つけて遡行を開始する。雪の量はそれほどでもないけれども斜度がありラッセルがきつい。途中でハンさんにトップを代わってもらう。こういう地形は”ルンゼ”と言うらしい。

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足回りはいつものシューズ、ICEBUG GG FLY BUGRIPにネオプレンカバーをかぶせて防寒対策としている。ローカットなので足首は自由に動くしソールも柔らかい。アイゼンはKahtoolaのKTS Steel(662g/pair)を新調した。

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ハンさんの足回りは、Montrailのトレランシューズ、コンチネンタルディバイドGTXに同じくネオプレンカバー、Kahtoola KTS Steel。

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13:00。休み休み歩いていくとどんどん斜面は急になってルンゼもほぼ突き当たりに。どうやらこのあたりが取り付き付近じゃなかろうか? という場所に到達する。

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凍結した氷の斜面をあがり、右手の尾根上へと登ってみる。たぶんこれが石尊稜だ。ピッケルが効きづらい。シャフトは刺さりきらないのでピック側を刺して確保しながら進む。フットワークはというと教科書通りに前爪を蹴り込んでなんてことはできないが、足首もソールも動くシューズなので氷の斜面をスラブに見立ててスメアリングするように掴んで登っていける。うん、多少の不安はあるけど悪くはない。いける。が、滑ったら真っ逆さまだと思うと足がすくむ。

とにかく尾根の上にあがる。風をまともにうける。勢いよく流れる雲のなかに晴れ間が見えてきた。阿弥陀岳がその全容を現して出迎えてくれる。

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ふぅ、まずはセルフをとろう。木の根にデイジーチェーンを巻きつけてとりあえずは確保。

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さてどうしたものか、このルートで合っているのかどうかも定かではない。このまま尾根上を進んでいくとなるといよいよ両手を使って岩場をよじ登っていかないといけない。登れそうではあるが… その先はどうなっているんだろう??

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と見渡すと向こうの木の幹に残置スリングがかかっている。支点用に設置されてるものだろうか? ということはこの尾根を進んでもいいのだろう。

それにしてもリッジレストを担いで岩場を登ろうという発想には驚かざるをえない…。

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とりあえず物は試しにロープを出して確保しつつ進むことにする。まずは僕がトップで上がって様子をみてみようと取り付いてみるものの、厚手のグローブでうまくホールドがつかめない。木の枝にアルパインクイックドローを巻いて支点を作ろうにも、苦しい体勢をとりながらではカラビナからスリングをうまく展開できない。背面のバックパックが重心を後ろに後ろに引っ張ってくれる。ふむむ、なるほど、冬のアルパインクライミングはこんなものか、これはやっかいだ。一旦下に降りて、グローブを薄手のものに替え、使う本数分のアルパインクイックドローはスリングを展開しておいてから再び取り付く。

足回りは調子が良い。ソールが薄いから足裏の感覚でホールドの様子をある程度感知して探ったり掴んだりすることができる。足首も曲がるから体勢の自由度も高い。重登山靴やプラスチックブーツに前爪ドッギャーンのアイゼンをつけた本格スタイルは試したことはないけど、岩場を登るにはローカットの軽量シューズのほうが向いてるんじゃないかという気がした。

短くピッチを切ってセカンドビレイに移る。60mのロープを巻き上げるのが骨だ。太い木の枝にセルフをとってそのカラビナに直接ビレイ器具をつける。バックアップやら分散支点やらはとらないけど、まぁええやろ、距離も短いし、寒いし…。

しかしいざセカンドを引っ張り上げようとすると凍りついた10.5mmのロープがルベルソキューブを通らない。慌ててストップをかける。なるほど話には聞いていたけど冬場にルベルソキューブは使い物にならんのだなぁと感心しつつ、急いでエイト環に取り替える。今度は大丈夫だ。ロープは流れる。しかし時間をとってしまった。ハンさんは凍えてることだろう。

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セカンドが到着するとそのままトップを交代する。エイト環で確保しながらロープを送り出す。しかしなかなか遅々として進まない。風に吹き付けられぱなしで寒い。ハイキングであれば常時歩いて体を動かしているので発熱するが、クライミングだと地形的にも風をよけられず、ビレイするときはずっと静止したままなのでどんどん体温を奪われて行く。ロープから手をはなして食事をとったりお湯を飲むわけにもいかない。なるほどこりゃ勝手が違うな。

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そうこうしているうちに天候が急変してきた。西の空から押し寄せてきた雲が一瞬のうちに景色を奪う。

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風の音でお互いの声が聞き取りづらい。どうやらピッチを切ったらしい。ビレイを解除して残りのロープを送り出し後を追う。

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2ピッチ目の終了点。相方もやはりATCガイドでだいぶ苦戦したようだ。

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こんな痩せた尾根を登ったり降りたり。

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セルフをとろうとするがクイックロック式のカラビナが思うように開かない。ロック部分を回そうにも指が滑ってしまっているようだ。グローブを皮製のものなどに再検討するか、カラビナに滑り止めなんかを施す必要があるかもしれない。

この先はいよいよ核心だろうか? まったりした雪稜歩きが楽しめると教本にあったのはおそらくこの岩壁の上だろう。行けないことはなさそうだ。しかしここを上がってしまうとこの悪天候の中もう後戻りが効かないかもしれない。時間もすでに15:00を回っている。さぁどうしよう?

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ともかく相方のモチベーションを確認する。同じ迷いに気を揉んでいるだろうことはその表情から明らかだ。

ワ「どうする…?」

ハ「降りましょう!」

ワ (即決かよ…w)「ここでビバークとかは?」

ハ「アリエマセン!」

ワ「だよね…」

なんとなく後ろ髪を引かれる思いを残しつつ撤退に同意する。2ピッチでだいぶ手間取ったし、この天候なら仕方ないか…

ここからは懸垂下降で降りる。岩壁と氷の斜面を3回ほど下降したところでシリセードができるくらいの雪面に達し、あとは一気に滑り降りる。赤岳鉱泉でラーメンでも食べよう。

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16:00頃に赤岳鉱泉に着くと地蔵尾根チームのnariさんと再会。同じく悪天候で撤退したらしく明日また赤岳を目指すという。僕らはナイトハイクでその日のうちに八ヶ岳を後にすることにした。

下山する間、ずっと左手が気になっていた。どうも親指がしびれたのか力が入らない。それほど酷使したわけでもないのにどうしたことか? それに両手の指先がどれも深爪したようにジンジンと軽い痛みを感じる。ハンさんもどうやら同じようだ。軽度の凍傷の入り口一歩手前くらいの症状だろうか? 今まで何度も冬ハイクに出かけたけれどもこんな症状になったことはなかった。グローブも濡れてはいなかったし実質的に日帰り程度の行動時間だったはずだが? しかしおそらくビレイ中にじっとしている少しのあいだ風にさらされたことで、体幹から温度を奪われて体の末端への血流が阻害されたのかもしれない。ともかくどれくらい冷風を浴び続けると凍傷になるのか、その感覚がつかめたことだけでもよしとしておこう。

いろいろと見えてきた課題のまとめ。

足回り: ローカットのトレランシューズと軽量10本爪アイゼンという足回りは思ったよりもよく機能してくれた。岩場での登攀には何も不安は感じなかった。凍結した斜面でも歩き方によってかなり対応範囲は広いが、それも斜度によると思われる。一定の斜度を超えるとおそらく対応は難しく、アイスクライミング的な登攀が必要なシーンには向いていないだろう。

カラビナ・クイックドロー: アルパインクイックドローのカラビナは、厚手のグローブをつけた手でスリングを着け外しするときに特にアゴが邪魔になって鬱陶しい。操作性を高めるためにもクリーンロックノーズみたいなアゴなしタイプにしたいところだけど重量増はいただけない。幸いにもPetzlから最軽量クラス23gのクリーンロックノーズ式ワイヤーゲートカラビナが発売されるという噂があるので、来シーズンまでにはそれに統一したいところ。

ロックカラビナ: スクリューロック式は凍りついて開かなくなることがあった。クイックロック式もこれまた手が滑って開きにくい場面があった。冬期に最優先すべきスピードを考えると、ロック機構は省いてカラビナは全部ワイヤーゲートのみにしてしまってもいいんじゃないだろうか? うーん…

グローブ: 登攀中にホールドをつかみやすく、ギアの扱いにおいて操作性に優れ、なおかつ防風防寒保温速乾性のあるグローブ、そんなものはないって? そうかもしれないけれどとにかくこの部分は大きな課題が残る。要検討。

ビレイデバイス: ロープとの組み合わせにもよるのだろうけどルベルソキューブやATCガイドは冬には向かないかもね…。予備とあわせてエイト環を2枚携行するほうが具合がよさそうだ。

強風対策: 強風で物理的に吹っ飛ばされるとかよりもとにかく体温低下を極力避けるために風を浴びる時間を最小化することのほうが優先度高そうだ。そのためにはクライミング自体の速度もそうだけれども確保のためのシステム構築にかかる時間短縮も大事そう。MetoliusのEqualizerのようなプリセットされたギアは有効だろうか? また化繊ベストなど風を浴びても体幹の温度を逃さないようなウェアも考えないと…

ロープ: ピッチを短めに切るとビレイをしている時間も短くお互い小刻みに運動できるので体温低下を避けられるし、距離が近ければ声も通りやすい。そうなるとロープは短めのほうが巻き上げる労力が少なくて済む。50m? 40m? しかしそこはやはりルートによりけりだし、懸垂下降で下れる距離はロープ長の半分なわけで、あまり短いと難儀することもあるかもしれない。というよりもピッチ数が増えるとクライミング全体の時間としては増えてしまう? どうしたものか、ここは悩ましい選択になりそうだ。少なくとも10.5mmのようなバカ太いものはやめて8mm台のシングルロープにしたほうが軽量化にも確保器のロープの流れの上でもいいかもしれない。

ともかく冬期バリエーションでもランシューズでかなり対応できそうなことが分かったのが最大の収穫か。その他のギア周りの再整備をして次回は来シーズンかな…?

カテゴリー:climbing, Outdoor

御嶽ボルキャン

念願のボルキャンに行ってきました。

ボルキャンとは、ちょっと岩遊びでもしつつでも日帰りがめんどうなのでそのままキャンプしようという企画なのです。場所は奥多摩の御嶽。

なのでキャンプ道具一式を背負って運ばなければいけないのですが、今回はコンパクトなクラッシュパッドRevolution Spot(2.94kg)にJAM2をはさんで背負いました。

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この岩はなんですか?ソフトクリーム?我々以外にも取り付く人がちらほら。

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僕もちょっとトライしてみましたけどね、まぁ落とすのは次回にしてやろうと思ってコーヒーブレイク。河原でゆっくりまったり過ごす、こういう時間を楽しみたいものですねボルキャンは。

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それにしても何なんですかね?次々といろんな課題に取り組むハンさんとか、みんな気合い入りまくりなんじゃないですかね?”課題”とか言っちゃってなんか仕事を思い出すんでそういう呼び方やめません?

ほけーっとしてると、メガネっ子のボルガールが参入。

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ガ「混ぜてもらってもいいですかー」

ワ「どうぞどうぞ、なんならお教えしま…」

ていうか、うまいし…。スルスルと登っていきます。

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ハンさんも続きます。

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僕も続こうとしたんですけどね、ガールの人に手取り足取り教えてもらって、それでもまぁなんていうのかな、本気出すのは次回にしておこうかなということで。

ガ「だいじょうぶですよ!だれでも最初は登れないものなんですから。がんばりましょう!」

…いや、おれコーヒー飲みに来ただけだし…。

話を聞くと、このガールの人はボル歴1年くらいだけどかなりやりこんでいたらしく、いろんなトレーニングだとかサプリメントだとかやりつくして、体ボロボロになって故障してしまったんだとか。関節が痛くて眠れぬ夜を過ごしたり、それでも好きでほとんど中毒みたいにはまっていたんだと。ボルダリングの世界は怖いなぁ。

日没後、忍者返しを偵察に行きます。真っ暗な中ホールドを確認。

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ガールの人と別れ、河原でキャンプ開始。

夜はがっつりすき焼き。

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ポールを忘れてテントを張れず、野宿状態のキャンプサイト。シュラフに霜が張ってます。でもクラッシュパッドは寝心地いいね。

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翌日も引き続きボル。デッドエンドから中洲ボルダー、温泉入って川井キャンプ場のボルダーを巡りました。

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ま、今回はこれくらいにしてやろうかな。

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カテゴリー:climbing, Outdoor

三ツ峠中央カンテ

三ツ峠は12月ともなると雪が被っていた。河口湖畔で仮眠をとって車で登山口まで移動し、荷物を担いでハイクアップ。同行者はmt_hanterさん。

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ぬるぬると一時間ちょっと歩くと山頂手前の小屋に到達。富士が目の前に見渡せる。

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今日の目的はこの巨大な岩壁。三ツ峠屏風岩。

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下から見上げて、いままでにない高度感にふたりともしばしあっけに取られる。オフシーズンなのだろうか、周りには誰もいない。

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クライミング歴の浅い、というよりマルチピッチをリードするのは今回が初めてな二人でトライ。

当然いるはずと思っていた他のクライマーに聞きながら教えを請いながら簡単なルートを行こうと思っていたが、結局見回しても誰もいないので、トポ図上では一番オーソドックスそうな中央カンテを選んだ。全部で4ピッチの80mほど?グレードはⅢ〜Ⅳ+だっけか。

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mt_hanterさんが最初にトップで取り付いて、ツルベ式に交代しながら登っていく。岩は雪解け水が少しかかっていたが大勢に影響はなし。しかし上からパラパラと落石が降ってきて肝を冷やす。

3ピッチ目で苦戦。ビレイしていてえらく時間がかかるなと思ったらセカンドで登った僕も苦戦。頭の上によさげな支点があったのでクイックドローをかけて手でつかんで体を引っ張り上げて無事通過。

途中のテラスで昼食。

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なかなかの高度感。

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斜度はどれくらいだろう?

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4ピッチ目の僕のトップのときもまた苦戦。ルートがわからず登ったり降りたりしてるうちに焦って心が追い込まれていく。なんとかトラバースルートを発見して無事に完登。

その後頂上に上がったらすでに15:00過ぎ。一本登るだけで一日終わってしまった。

登ったぞ!という高揚感は、今まで”山登り”で感じることはなかったけれども、今回は二人とも少し興奮気味に山を降りる。ともあれマルチピッチデビュー戦、無事に帰ってこれて一安心でした。

つい4ヶ月前にジャンダルムに連れていかれ、安全技術の必要性を感じて始めたクライミング。なんだかちょっと本格的になりつつあるけれどこの先どこまで行くんだろう?でもこの楽しさの麻薬に取りつかれてどんどん上を目指していくとキリがないのでどこかで一線を引くべきだと頭の中では分かっているけれども、その一線をどこに引けばいいのか案じ中。さて次はどこへ行きましょうか。

温泉に入って朝霧ジャンボリーの放置村へ。こちらは一転してぬるーいキャンプ。ガールのみなさんも!

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ついさっきまでの生死を賭けた緊張感が嘘のように、完全に脱力してまったりと過ごさせていただきました(笑

みなさんどもでしたー

カテゴリー:climbing, Outdoor

懸垂下降のリスク

懸垂下降で考えられる危険性を整理メモメモ。「生と死の分岐点」「続・生と死の分岐点」より。

ロープセットの間違い

2本のロープを結合する場合に、結び目が不完全ですっぽぬけ (ガイド結び、半分だけのフィッシャーマンズノット、結び目が逆になったフィッシャーマンズノット)

ロープが支点にかかっていないのに降りてしまって墜落

ロープを自己確保のカラビナにかけてしまい、セルフ解除と同時に墜落

片方のロープだけにエイト環を通して降りてしまって墜落

2本のロープを結合して下降するときに、長めにとった末端を間違えてエイト環にセットしてしまいすっぽぬけて墜落

支点にかけたスリングの結び目の末端がからまった輪にロープをセットしてしまいすっぽぬけて墜落

支点崩壊

ハーケン、ボルト類の懸垂支点が崩壊

中間支点のハーケンを懸垂支点にして支持力が足りず抜け落ちて墜落

2本のボルトにかかった鎖にスリングをかけて支点にしたが、鎖の輪にスリングを通さなかったため、一方のボルトが抜け落ちて墜落

2本のハーケンに通したスリングにロープをかけたが、スリングの輪の中に通さなかったため、一本のハーケンが抜け落ちて墜落

豚の尻尾を下降支点にしていてロープがよじれて支点から外れてしまい墜落

スリングのすっぽぬけ

岩にかけたスリングがほどけて墜落

支点にかけたスリングの結び目が不完全ですっぽぬけ

ロープ切断

下降中に横に振られたときに岩に擦れてロープが切断

規格外のロープを使ってしまい切断

車内に保管したままでバッテリー液(硫酸)で痛んだロープで下降して切断

二つのパーティが同じカラビナにロープをかけて、一方が下降しロープを回収するときに摩擦でもう一方のロープを融断してしまう

エイト環への巻き込み

エイト環に髪・服・髭・ヘルメットの顎紐などを巻き込んでしまう

ゲート開放

下降中にエイト環がハーネスと連結したカラビナのゲートを押し開いてしまい、そのまま外れて墜落

エイト環との衝撃でカラビナの安全環が破損し、ゲートを押し開いて墜落

半マスト結びで下降中に、結び目が引っ繰り返ってツイストロックカラビナのゲートを押し開いてしまう

ロープ末端からのすっぽぬけ

ロープの末端を結ばずに降下してすっぽぬけ

末端を結んでいない長さの違う2本のロープで下降して、片方の長さが足りなくなってすっぽぬけ

長さの違う二本のロープで下降している途中、長さを揃えようとしてエイト環からロープを緩めたところ、ロープが流れて墜落

ロープの真ん中を示すマークが実際は真ん中ではなかったために、長さが違ってすっぽぬけて墜落

同時懸垂のすっぽぬけ

二人の同時懸垂下降で一人が確保点に着いたときにロープを外してしまい、そのまますっぽぬけてもう一人が墜落

ロープが回収できず行動不能

ロープを支点にかけたと勘違いしてロープを投げてしまい回収不能で降りられず

投げたロープが途中で岩にひっかかって抜けなくなり、ナイフもないため切れずに行動不能

ロープのキンクを防ごうとしてロープの末端を別々に結んで下降し、確保点に到達して結び目を解かずに回収しようとして回収不能に

気をつければ防げそうなもの、不運なもの、いろいろあるけれど、一番目につくのはそんなことありえるのかというくらいのイージーなヒューマンエラー。どれだけ経験を積みスキルを高めようとも、人間は本質的に間違いを犯す生き物ということか…。だとしたら、打つ手なし!

カテゴリー:climbing, Outdoor