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ピッケルについて考える


ついでに冬道具ネタを続けてみる。ピッケルをどうすべきか。

↓うちの在庫。いろいろポチってるうちに早3本目。

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上: Simond Metallic Droit Ice Axe 820 (シャフト: アルミ製、ヘッド: クロモリ/ステンレス、実測581g 60cm)

中: CAMP Corsa (アルミ製、実測215g 50cm)

下: ULA Helix Potty Trowel 55 (シャフト: カーボン製、ヘッド: アルミ製、実測131g 55cm) ※メーカーは”ピッケル”としての耐久性は保証していない製品。空気を読んで使う必要あり

よくピッケルの長さは手に持ってくるぶしあたりに達するものが最適と言うが、杖代わりにしないのであればもっと短いものでいいと思っている。50cmあたりが取り回しやすい。上のSimondのものは剛性感はいいが重いし心持ち長めだしボクの今のスタイルとしては扱いにくい。山行をはじめた初期のころにICIの怖いおっちゃんから買ったんだけれども今は押し入れの中で引退生活を送ってもらっている。

ボクとしては今期もスノーシューでのハイクをメインにすることを考えているので、ギア周りはダブルストック+ULAの軽量ピッケルという構成にしようかなと思っているところ。

スノーシュー歩行時にピッケルを杖代わりにするというのはどうかというと、やはりそういう構成で歩くのは難しいように思う。スノーシューは雪の上に浮いているわけで、ひとたびバランスを崩すと立て直すのが困難。スノーバスケット付きのダブルストックがやはり適していると思う。

なので通常歩行時はダブルストックを使い、肩に回したスリングにカラビナをかけ、軽量短小のピッケルをひっかけておく。難所に達したらストックは腕にぶらさげたまま素早くピッケルを取り出して扱う。難所が続くようであればストックはしまい、ピッケルメインに変更する。そのときはスノーシューもしまってアイゼン歩行になるケースも出てくる。

長くて重いピッケルでそういう補助的な使い方をすると、肩からぶらさげておいても邪魔なだけで歩行の妨げになるし、そうなると背中にしまうことになって心理的に取り出すのがおっくうになり、結局は難所でも使わずじまいでかえって危険性が高まったりすると思う。なんせズボラーなので。

ピッケルを持たない、という選択肢ももちろんあるとは思う。その場合は行ける範囲が狭まるだけで、それを心得て引き返す潔さを持っていればいいと思う。

ではピッケルをそういう補助的な用途で携行する場合、どんなものが適しているのか。ULAのような軽くて短いなんちゃってピッケルで本当にいいのか?

そもアイスクライミング的な登攀をしないことを前提とすると、ピッケルの用途として考えられるのは以下のようなものか。

1) 難所通過時などの簡易的な自己確保 … 急斜面をトラバースするときなどシャフトをつきたてながら歩く。あと耐風姿勢なんかも

2) 深雪の急登攀時の補助 … 前方上面にシャフトをつきたてて体を引っ張り上げて登る

3) 滑落停止 … 万一滑落したときやシリセードの停止用に

いずれの用途も、ピッケル自身の長さはある程度短いほうが扱いやすかった。なので軽量短小ピッケルにシフトしてきてるわけだけれども、それでまったく問題ないのかというとむしろ長さよりも重さが考えるポイントになるかもしれない。

超軽量級ピッケルの難点としては、3)の滑落停止の際にピッケル自身の荷重に遠心力を効かせてピックを突き立てる、という動作がしにくくなるという問題点があるとか。ピックの形状や素材も雪面ならともかくつるつるの氷面にはあまり刺さるようにはできていないので弾かれるかもしれない。

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とはいえ、いざ冬山で転倒したときに、うまく瞬時にピッケルの遠心力を効かせられる美しい体勢のまま倒れ込めるのか?というとそこはかなり疑問でもある。訓練であれば倒れることが分かっているので瞬時にそういう体勢に持ち込むこともできるかもしれないけれど、実際の場面ではどうなのか?たぶん足腰をふんばって倒れまいとするほうが先になって、ピッケルの突き立て方にまで意識がすぐには働かないなんてことも十分に考えられる。体勢を回復することがムリだと悟った次の瞬間は、どうすれば一番有効にピッケルの遠心力を効かせて深く差し込めるかとかそんなこと考える前に、もう遮二無二ピッケルを雪面に刺すことだけしか頭が回らなくなったりするんじゃなかろうか。そしてひとたび倒れ込んでしまえば、あとはピッケルに自分の体重をかけて押さえ込むようにピックとシャフトをねじ込むわけだから、ピッケル自身の重さはあまり関係なくなってしまう。無論、それでもねじ込めないようなつるつるのアイスバーンではやはり滑落しながらでもピッケルを振り上げて叩き込む必要もあるのかもしれないけれど、速度がついた状態でそんなことできるのかとか、そもそもそんな場所に行くのかどうかをまず考えたほうがいいというか、ボクはそんな難所に遭遇したら引き返すかな・・・

逆に重いピッケルの問題点は、実は滑落したときにその遠心力が徒となって手を離したピッケルが体に結んだリーシュに引っ張られて自分の体に飛んできて突き刺さるという事故がわりと多くレポートされているらしいということ。これはちょっとたまらない。なので一部の海外ではピッケルはリーシュで体に結ばずに、手から離れたらもう戻ってこないようにすることで安全対策をとっている国もあるとか。しかしとはいえ通常歩行時に手から滑ってピッケルを落としてしまうことだってあるわけだからそれも考え物だ。そこは超軽量級のピッケルであればリーシュで結んでいてもおそらく墜落時に体に突き刺さるような事態にまではならないと思う、たぶん…。軽ければ軽いほどそういう事態は避けられるのでは?

そうなるとどちらのピッケルがいいのか実に考え物という事態になってくる。ピッケルが軽くて滑落停止できずに起きた事故と、ピッケルが重くて体に突き刺さって起きた事故と、発生件数や被害の深刻さはどちらが高いのか。どちらも極めてレアケースとはいえ、たぶんそこらあたりが判断のポイントとなると思うのだけど、定量的なデータはないし、とはいえ前者の事故ケースについてはほとんど聞いたこともない。こう見てると後者の可能性のほうがよほど深刻なのではないかと睨んでみたり。

万全を尽くすならば、リーシュで結んだ軽量短小サブピッケルと、空手に持った重量メインピッケルという二段構成になるんじゃないかと。

しかしそれに加えてダブルストックも持つとなるといささかヘビーなわけでもあり、結局は重量ピッケルは構成から外して、それが必要になりそうな難所は避けて通るというスタイルに落ち着いたりしている。

そんなことを、あーでもないこーでもないと・・・。

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次はダブルアックス、買っちゃうのか・・・

カテゴリー:gear, Outdoor
  1. 2009-10-23 09:01

    ピッケルは重要ですよね。
    CAMPのは補助用に同じの愛用してます(^^ v

    滑落停止は、側面、頭から逆さま、背面・・・など、それこそいろいろな体勢から実際の斜面を滑落し、ホイッスルとともに千差万別の制動姿勢に入るわけですが、ボクの時代は跳ね飛ばされるという理由でアイゼンは使用しないのが主流でした。

    ・・・が、今ではアイゼンを積極的に併用する遊歩式が有効だとか。時代とともに変わっちゃうんですよね(汗

  2. 2009-10-23 10:21

    ピッケルとアイゼンの話は難しいんですよね。
    結局は経験上どのような使い方をするかですし、実際滑落停止出来た話ってほとんど聞きませんです。
    基本的には急斜面をトラバースするときにビビりながら突き刺していく・・・下が凍っていればなおさら突き刺す。
    よって重量はある程度必要と思っています。
    取り回しは短いほうがいいのですが、登攀するのではないならば長いのを杖代わりに使うのが好きですね。
    むろんダブルストックも必要になり、結局はそういう場面が続くならば腰のビナに差して歩くようになります。あぁ、メンドッチイです。
    といいつつ、体力が無いので、いまはお守り程度でいける山だけです。はずかしい~~~

  3. 2009-10-23 19:57

    > ユウさん
    おぉぉ、ご一緒のCAMP! でもメインのはDMM?
    たかがピッケルといえど、これ一本で行動範囲がぜんぜん違ってきますからね…重要ですね…
    アイゼンで跳ね飛ばされるとは… どんな恐ろしい斜面で訓練を…

    > 茶柱先生
    やはりピッケルは山やの魂? いやでも茶柱先生はお酒のほうが魂か…
    ぼくの魂はiPhoneですけどウフフ
    ストックからピックがじゃきーんって飛び出すかんじでピッケルになるような道具が、ほしいですね…
    軽量カーボン製で伸縮可能でバスケットが取り付け可能なピッケルとか…

  4. 2009-10-26 12:25

    アイスクライミングの場合はDMM×2とモノポイントのアイゼン。
    縦走の場合はカジタの55cm(だったかな??)を愛用。カジタはすでに20年目です。

    訓練は本番と同じ状況で、下に停止できなかった場合用にザイルを張って、万が一はそれにつかまるのですが、つかみ損ねたらそのまま即死。
    その恐怖心たるやバンジーとは比較になりませんでしたw
    しかし、穂高(涸沢岳)などの冬季登攀で、森林限界以上の斜面では滑落停止どころか、アイゼンも数ミリしか刺さらず、滑ったらジエンドです。

  5. 2009-10-26 13:29

    > ユウさま
    モモモモノポアイゼン!! ほっすぃ!
    穂高の冬期登攀かぁ.. そこまで行くかは別として、なんちゃってアイスくらいはやってみたいなと。たぶん来年以降かなぁ装備そろえはじめるのは。足回りはじめ根本的に買いそろえ直しですからねぇ…

  1. 2010-11-27 09:30

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