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Archive for the ‘Outdoor’ Category

八ヶ岳石尊稜アルパインハイク

さていよいよ夏シーズン真っ盛り、というタイミングで冬のお話。

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2年前にもトライしながら悪天候で敗退した八ヶ岳の石尊稜のアルパインルートにリベンジしたのは12月のこと。

冬季は一般道を歩くハイキングがもっぱらメインだけれども、自分の目指す領域は森林限界の上なので、いつなんどき滑落したり、ホワイトアウトで道に迷って難所に突き当たったり、悪天候を避けるために悪路を突破したりという状況もいろいろと想像してしまうので、一般道から離れた冬山の姿かたちを肌感覚で知っておきたい。それもなるべくハイキングの装備に近い状態で登攀ルートを歩いてみたい、という考えで。

前日に赤岳鉱泉に入り幕営。早朝、ロープにクライミング道具一式を担いで取り付きへ向かう。

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取り付き点までの道のりは前回も迷ったけれども、今回もやっぱり迷いながら、雪に埋もれた沢筋をたどり細い尾根にしがみつきながら到達。天候よし。

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前回はここで吹雪が強くなり視界ゼロの状況になって引き返した取り付き地点。ここからロープを出して確保しながらあがる。1ピッチ目は簡単そうに見えるけれども、実はあんまり頼れるホールドがなく、ここが一番の核心だとか。

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今回の足回りは、いつものトレランシューズに自転車用のネオプレンカバーをかぶせ、Hillsoundのトレイルクランポンという構成。

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冬季クライミングとはいえビギナールートであるし、氷壁でない限り足首が周りソールを曲げられる靴のほうがムーブ的にも有利だし前爪も必要ないだろうという判断。なるべくハイキングとの装備差をなくしたいという考えもあり。とはいえ登攀ルートでの試用ははじめてなので、はたして完登なるか。

このトレイルクランポンは、Kahtookaのマイクロスパイクと比べて爪が長く、爪同士が一体化されて動きにくくなっているので雪面でのフリクションは多少はよくなっているだろう。

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先行パーティーの人が取り付くのを横目に我々も準備オッケー。1ピッチ目は僕のトップでスタート。

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傾斜も大したことない、なんてことなさそうなルートに見えたけれども、実際登ってみると微妙で、これといったホールドがなく、手につかんでもボロッと崩れ落ちる。中間支点もなかなかとれないし、足元も心細く慎重になる。落ちると崖下にまっさかさまだし。

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なんとか登りきってようやくピッチを切る。シューズ周りは快調で問題ないように思えた。

セカンドであがってきたパートナーは途中でずるっと落ちたけどロープで確保。前爪がっつりのアイゼンをつけたブーツだと足を支えるのも大変でこういう場所だとやはり登りにくいとのこと。向き不向きはあるのだろう。

ピッケルは本当は一本だけで行こうと思っていたけれども、結局、念のため予備に持ってきたものも使うことになってダブルアックスとなった。CAMPのコルサナノテクと、ULAのなんちゃってカーボンピッケルという軽量重視の構成。

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柄を持ってピックを突き立てるよりも、雪の斜面をあがるときに2本のピッケルのピックを持って柄の部分を突き刺しながら登るタガーポジションをとることが最も多かった。その用途に関してはこの2本とも取り回しよく問題なさげ。

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急斜面でのトレイルクランポンのフリクションを試す。足全体を雪面につけ、体重をかけると、1cmほどずるっと後ろへ滑って止まる感覚。一歩ずつ試す。やはり滑る。でも止まる。もちろん通常のアイゼンならビクともしないだろうけれど、1cmの差。このフリクションを信じられるかどうか、怖いと思うかどうか。滑り落ちたら谷底へまっさかさま。でもピッケルも2本とも効かしている。このルートのこのコンディションならよしとする。

相方のアイゼンはしっかり効いていたそう。

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目指す稜線が近づいてきてるのかどうか、やや曇り空になり風も出てくる。ビレイ中は長時間動かないので寒風が吹きつけて体温が奪われる。ダウンを羽織る。

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美しくも不気味な恐ろしさを感じる光景。あそこへあがるのか。あがれるのか?

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岩にスリングを巻きつけて確保をとりセカンドを待つ。だんだん風も強くなってくる。

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冬季アルパインはパートナーともども初体験で未知のゾーン。八ヶ岳の圧倒的な岩稜の光景と、吹きつける強風に、心がすこし怖気づいてくる。稜線は近いのだろうか。どこまで上がればいいんだろう。

「もうムリっす。トップ行ってください(泣」

「ダメだって〜。交代だからさ。行けるよ!ほら」

なんてパートナーの尻をたたきつつ、自分も気力を振り絞る。

ここがラストピッチだろうか、だんだん岩々しくなってルートもどこなのか不明確になってくる。でも心なしか空が開けてきたような。

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よっこらしょっと。

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あがった。生き残った!ほっと安心。

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今まで何度と冬ハイクに出かけたけれど、ピークに到達することには何の意味も見出していなかったし、目指したこともなかった。でも今回はじめて登頂したことの喜びを感じた。達成感?というよりも、安全圏に辿りついた、生き残ったという安心感に近いような。登山家と呼ばれる人たちはこういう行為にアドレナリンを噴出させてやみつきになっているんだろうなぁと少し理解できたような気がする。いや、そっちの道に向かうと命がいくつあっても足りないので、ここらへんで満足ですけど。

甲府の奥村本店に立ち寄り、とりもつで乾杯。

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カテゴリー:climbing, hike

1/29-30 木曽駒ハイク(2)

前回からの続き。

14時過ぎに岩陰にワンショットテントを張りばたんと倒れこんで眠りについてから目覚めるとまだ周囲にはわずかに明るさが確認できた。早朝から行動していたとはいえこのまま翌朝までテント内で過ごすのはひどく退屈だなと思いながらいつものことだと半ばあきらめ、ザックの底からパンを取り出しちぎっては口にほおりこみ、一応の食欲が満たされたところで本格的に眠りに入ろうとしたが、そのまえにさっきの行動中に地図をなくしたので翌日の行動についてじっくり検討しなければならないことを思い出した。幸いにもドコモ仕様にしたiPhoneの電波が入る。ネット上にころがっている地図をあさり、山行記を読み、大雑把だけれどもなんとか下山ルートの地形は把握できたので明日はこの先の木曽上松方面へ進むことに意を決したところでちょうど周囲は暗くなった。

吹雪のなかテントに閉じこもることざっと17時間。気温は-23度。厳冬期用に作った900FPの自作キルトは凍えるほどではないにしても暖かくはなく、じんわりと立ち上がる寒気で何度か目が覚めるがじっとやり過ごす。

翌朝、7時にテントを抜け出しパッキングを整える。 体が重い。朝食はまたパンを半分とすっかりぬるくなったホットレモンを一口。昨日と同じようにスノーシューを履きストックを両手に持って出発する。冷気でやられたのか一眼デジカメのバッテリーが切れていたので、ここからはiPhoneで写真を撮る。

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天候は未だ回復せず。玉ノ窪山荘はすっかり雪に埋まっていて屋根だけが確認できる。その先の視界は昨日と同じで吹雪に覆われてほとんど確認できない。もしルートから外れて雪庇でも踏み抜いたらかなわないと、コンパスとiPhoneの地図を何度か見やって進行方向を確認する。風が弱まり視界が回復するタイミングを待って先に進む。

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山荘の先は風の通り道となっており、ゆるやかなスノーリッジが形成されていた。地表の数センチをきらきらと粉雪が飛び回っており、ゆっくり踏みしめて歩くととても気持ちがよい。

…と歩いていたところで急に体の自由が失われる。息が弱まりがっくりと膝を折ってその場に手をついて倒れこむ。体が動かない、どうしたことか。まだ出発して20分とたたない場所だ。息を整え立ち上がろうとするも、1歩2歩進んだところで再び倒れこむ。何が何だか状況を把握できないなかで悶絶しながら転がりまわり、吹きさらしのスノーリッジのちょうど中間のあたりで強風を浴びながら寝返って天を仰ぐ。曇り空がものすごいスピードでおどろおどろしくカタチを変えていくのを虚ろに眺める。

まいった、ハンガーノックか、それとも高所や冷気の影響で体に変調をきたしたのか。ともかくこの周囲は完全な無人の冬山地帯なわけで、どんな状況だろうと独力で脱しないといけない。強風に吹きつけられじりじりと体温も下がってきているがどうしても体が動かずその場に寝転がって朦朧としてすこし休んでいると、スノーリッジからずるずる滑り落ちていることに気づき、這いつくばりながら必死に体を動かして登り返し、稜線の頂部に抱きつくように体を預けてまた休む。あぁまいった。

ザックを降ろし、中からカーボショッツを取り出して吸いつく。続けて練乳まるまる一本と、カロリーメイト二袋を消費する。ともかく風が強いのでなるべく早くこの場を離れなければいけないと必死に立ち上がり、一歩進んで休み、一歩進んで休みながらふらふらと前進する。

なんとか100mほど進み風除けになりそうな岩陰に達したところで座り込み、湯を沸かして本格的に休むことにする。

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変調の原因はおそらくハンガーノックだろうと見込みをつける。冬季にやってしまうのははじめてだ。あまりに長時間寒いテント内で停滞して体力を奪われた一方でエネルギーの補給が足りていなかったのかもしれない。このまま予定通り木曽方面に進むか、それとも鼻の先にある木曽駒ヶ岳まで登り返して出発点の千畳敷に降りるか、過去の冬山行を思い起こし比べながら思案する。わずかとはいえ体力を浪費する登りは嫌な気がする。このまま先に進めば距離は長いけれども下りだけのようだし尾根筋だからラッセルもさほどきつくないんじゃないかと想定し、予定は変更せずそのまま歩いてみることにした。カーボショッツの効き目は驚くほど早く、休んでまもなくすると体が動くようになった。

そこから先は、さっきまでの異変がウソのように快調に歩く。視界はすっかり雪雲に覆われているけれども、森林限界上の稜線を緩やかに下りながらふわふわとスノーシューで歩くのはとても楽しい。すっかりご機嫌。

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しばらく稜線のハイクを満喫しながら歩き、樹林が現れてくるころには何だかんだお昼になっていた。

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ここから先はすこし雪が増えるかもしれない。でもコースタイム的にはまだ余裕がある。自作のチタン製ジェットボイルもどきを取り出し、湯を沸かしてコーヒーブレイク。

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標高2600mくらいだろうか、ブレークポイントは尾根の踊り場になっており、ここからさらに下るのだけれども降り口の方向が樹林に隠れてよくわからない。右か、左か。まずは左側を少し降りてみるとさらさら雪のものすごい急斜面でこのまま行くと登り返しが難しそうなのでいったん戻り、今度は右側へ進んでみる。しかし右側へしばらく行くと今度は左のほうに本筋が見える。やっぱり左か、と逆戻り、先ほどの急斜面を今度は迷いなく滑り降りる。しかし降りてみると右側に本筋が見える。しまった行き過ぎたと雪をかき分け食らいつき必死に登り返してまた右側へ進む。しかしどうしても尾根の本筋に進めない。iPhoneのGPSとコンパスを何度も見比べて方向を見定める。やっぱり左側から回りこむのかと急斜面をさらに下ってみるも、やはり違う。こんどはさらに厳しい登り返しになってしまった。めんどうなのでスノーシューをつけたまま無理やり登ると雪面が崩れて滑り落ち、スノーシューを枝にひっかけて真っ逆さまな状態でぶら下がってしまった。どうにも動けないので逆さまの状態のままスリングを枝に巻きつけそれを手につかみ、勢いをつけて靴から足を引っこ抜く。ローカットシューズなのが幸いしてなんとか復帰できたけれどもハイカット靴でがっちり靴紐を結んでいたら万事休すだったかもしれないなと恐れおののく。再び踊り場まで登り返したころにはすっかり体力を浪費する。すでに2時間ばかり行ったり来たりしているうちに日が傾いてきた。尾根筋は登るのは易しいけれども下るときは意外とドツボにはまりやすいものだなと感心しながら行動食を摂って一息つく。

右も左もダメなら真ん中かと、一見そこにはルートは続いていなさそうな樹林の斜面をかきわけながら下ってみると、その奥にくねった細尾根が続いていた。ようやくルート発見。しかし時間が厳しくなった。急がなければ。

そこから先もトレースの一切無い樹林帯で、何度もルートを間違える。GPSは補足しているのだがiPhoneの地図では細かな地形は読み取れず、ことごとく勘も外れる。

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ところどころ獣の足あとがあらわれ辿るように歩いてみるも、ときには騙されルートを外される。あまりアテにならない。

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ようやく7合目の遠見場に到達。16時を過ぎている。終電に間に合うだろうか。

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いよいよ周囲は暗くなってくる。暗くなると一層ルートの判別が難しくなり、間違った方向に進んで難所にハマり、枝にぶら下がったり岩壁をトラバースしたりしながらぐるりと周って同じ場所にもどってきたりしているとさすがに途方にくれてくる。今日中の下山はもう半分あきらめビバークの用意をはじめ、湯を沸かそうとストーブを取り出すがライターが湿気ってしまったのか2つとも火がつかない。これはたまらないのでやっぱり歩こうとナイトハイクの覚悟を決めてヘッドライトを装着し歩き続けることにした。

疲れて歩くペースが落ちたのか、ルートミスを繰り返して時間ロスしたのか、20時を過ぎてもいっこうに到着しない。標高が下がって悪天候から脱し、月が出てきたのだけが幸い。ようやく遠くの下界に街の灯りが見えてきた。両足はさすがにへとへとに疲れ、その後も森の中で何度もルートミスを繰り返しながらも、もうどうせ降りるだけだろと開き直って直進し、藪に入り込み、獣の音に怯え、なんとか上松の登山口まで辿りついたのが23時過ぎ。川の水を汲んで喉を潤しへたりこんで休む。トラブル続きですっかり時間をかけすぎてしまった。もちろん終電は乗り過ごしてしまったわけで、当初のプランである1泊で中央アルプスを通り抜ける日程としては未達成になってしまった。

カテゴリー:hike, Outdoor

1/29-30 木曽駒ハイク(1)

年末年始はあっさりと南アルプスを敗退し、次のターゲットは2月の3連休と目論んでいたのだけれどどうにも辛抱堪え切れず、せめて1月中にどこかの雪山を歩けないものかとかねてより頭に描いていた木曽駒のロープウェーを使って1泊で中央アルプスを通り抜けるプランに単身出かけてみることにしたのは1月の終わりのころの話し。

前日の深夜に高速バスで長野県の駒ヶ根に入りビジネスホテルに泊まる。翌朝、コンビニで食料を買い込みサーモスに温かなホットレモンを充填してからバスを乗り継ぎロープウェーをあがり千畳敷へ。天候は思わしくなく降雪で視界がよくない。

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まずは木曽駒ヶ岳を目指す。距離は半日もかからない程度だけれどルートの状況によるだろうか。選択できるルートは2つ。千畳敷カールはちんたら歩いてると雪崩の恐れがありそうだし、宝剣山を経由していくルートは岩場の危険ルートのようだ。一応簡易ロープは持ってきてはいるけれど、単独行でもあるので他の2パーティも向かうカールを登っていくルートを選ぶことにする。

トレースはなく、しばらく深い雪をかきわけて進んでいくと量感のある岩山の視界が開けてきた。

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さっそくカールに取り付く。いつものスノーシューとダブルストックのスタイル。進むごとに斜度がどんどんあがっていくが、トレースのない斜面をかきわけ登っていくのは気持ちいい。雪崩がちと恐いのでなるべく端のほうへ寄る。

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降雪は続いているが、風はさほど強くない。たぶんカールを登り切った上は強風だろう。

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だいぶ上まで来ると雪が少なくなってくる。岩肌が出てきてスノーシューで歩きづらい。

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ようやくカールを登り切って乗越にあがる。

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とんでもない強風。視界も悪い。でもここから木曽駒ヶ岳までは高低差も少ないまったりしたルートを歩けるはず。しかもまだ昼前だ。時間は十分にある。

空と雪の色はもはや見分けがつかないあたり一面のグレー色。無機質な岩肌だけが露出している黄泉の世界。

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突然小屋があらわれたり。

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小屋の建物を風除けにして昼食をとる。おにぎりとカロリーメイトをつめこみサーモスに入れたホットレモンをすする。

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他のパーティーはもうこちらのほうへは来ないみたいだ。ここから先は完全な単独行。

貯水用のドラム缶? 真っ白な世界のなかに浮いているよう。

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天狗荘を過ぎたあたりからルートを見失う。

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そもそも雪にうもれてルートもなにもないし視界もないから山頂もどっちなのかわからない。強風の中コンパスを頼りにともかく歩いて行く。

岩の斜面を登っていくとすぐに社のような建物が出てきた。ここが木曽駒ヶ岳山頂だろうか。あっさりと今回のルートの最高地点に到達。

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とにかく風が強いので長居は無用と通り過ぎる。ここから目指すは西の方向。登ってきた千畳敷とは反対の木曽方面へ降りる。登りはロープウェーだったけれど、下りは徒歩で下まで降りる予定。

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下りもなかなか軽快に進む。玉ノ窪山荘の手前あたりの岩陰、人のいるはずのない山中に黒い影かとビックリしたら石像だった。

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標高2800m地点。山荘を過ぎようかというあたりで風に煽られ耐風姿勢で凌ぐ。ルートが分岐しているので地図を見ようかとザックにぶらさげたマップケースを手に取ると口が開いていて地図がない。しまった、風に奪われてしまった。こんなときに限って予備を持っていない。

どうしようかこのまま進むかそれとも戻ろうかと座り込んで考えあぐねているうち眠くなってくる。そういえば今日は早起きしたからな。もうすでにルートの半分は歩いたようなものだし、時刻は14時だけれど風除けになりそうな石像の場所まで戻り幕営することにした。

カテゴリー:hike, Outdoor

Tanigawa Fes. 2010-12-18 to 19

いよいよシーズン初の冬ハイク。もろもろ装備のテストも兼ねて谷川に集まったのは14名。Roadmanjanさんはじめ西黒尾根を行くエクストリームチームと、ロープウェーを経由して天神平から歩くまったりチームに別れてハイクアップ。

こちらはまったりチームの最後尾。しかしあいにくの天候で山頂に近づくほど風が強い。ホワイトアウトの中に突っ込む。

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1900mの肩の小屋直下は強風のなか新雪のラッセル。雪が流れてなかなか進まず、視界もほとんどない。必死に赤い旗を追いかけていると突然目の前に小屋のシルエットが現れる。急いでかけこむ。

冬装備の性能を試すには格好の環境だった。ハイクアップだったのでウェアはベースレイヤーとソフトシェルのみだったけど、やっぱり強風を浴びると血流が阻害されるのか指先が痛みはじめる。R1かハードシェルを着込んで体幹を守るべきだったか。先の状況を見越して早め早めのレイヤリングを心がけたい。足回りはまったく問題なし。

肩の小屋で鍋にあたたまる。見事なカニだのアンコウだのといろんな食材が次から次へと出るわ出るわ。

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日本酒を熱燗にして甲羅酒。サイコーにうまい。

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食後は暴風の稜線上でビビィ寝する。予報のとおりだとすると風速18m程度。

写真がボケボケですが自作のタイベックビビィ。あえて風を直撃するところに寝てみた。サイズが大きめなのでバサバサと風を孕むけど寝るには問題はない。頭部と足元にもつけたNoSeeUmメッシュは雪をちゃんと防いで通気してくれる。

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結露はまったくない、ということはなく、うっすらと湿気は発生してた。けど水滴というほどのものではなく、ブリーズドライテックよりはるかにマシ。まぁまぁのパフォーマンスかな。

テント組は強風で設営にかなり手間取ったみたいだけど、ビビ寝はさっと広げて入り込むだけ。強風下ではこのイージーさがやっぱりいい。でも酒をしこたま飲んだので何度かトイレに立ってそのたびに雪風が舞い込んで大変だった。ペットボトルは必須か。

布団は自作キルトだけど、背面のストラップを止めずに適当にかけて寝てたからあまり温まらなかった。でも-10℃程度なので風さえ防げればダウン上下でそれなりに寝れる気温。さすがに明け方には冷えたけど。

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翌日は打って変わって素晴らしい天候。雲ひとつなく風も穏やか。昨日の鍋の残りでおじやとうどんを作ってたらふく食べてから、山頂まで往復して遊ぶ。

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近いうちに、この稜線を歩きたい。

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去年から冬山志向のあるハイカーと連れ立って出かけはじめたけど、今年はなかなかの大所帯になった。冬ハイクでの自立を目指す人がステップのひとつとして、あるいはそのシーズンの装備をテストする場として、組織立てるわけじゃないけどゆるい互助関係で、みんなで歩けるのはとてもうれしい。

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今年のお鍋マンナリさんでした(笑

Thanks for all! ではではよいお年を

カテゴリー:Outdoor

黒タイベックビビィ / Black Tyvek Bivi

昨シーズンの冬は北アの稜線で強風の洗礼をうけた。

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自立ドーム型テントでは持ちこたえられそうにない、場所を間違えばテントごと吹っ飛ばされるか少なくともポールが折れるんじゃないか、というか設営すらままならない、目があけられず呼吸ができないくらいの雪混じりの強風。そんな場所でどうすれば安全快適にビバークすることができるだろうかと考えるに、やはりビビィサックで行き倒れ的に寝るのが一番イージーで安全じゃなかろうかと思うに至ったのでした。

ということでまず手始めに、ビビィというわけじゃないけれど最軽量のスリーピングバッグカバーであるMontbellのU.L.ブリーズドライテックスリーピングバッグカバーを試してみたところ、これは雪中で二回使って二回ともひどい結露で内部がぐしょ濡れ。連泊するとシュラフが使い物にならなくなるおそれがあるため採用を断念。

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Montbell U.L.ブリーズドライテックスリーピングバッグカバー

その次にMLDからSoul Bivi Side Zipを発注。Momentumという素材は防水性はないけれども撥水性があって透湿性もすこぶるよいらしいということで冬用に期待していたが、他の人からのレポートだとやはり冬場での結露は免れないらしい。

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MLD Soul Bivi Side Zip

3層ゴアやe-Ventは結露には強い、らしいけど、くそ重い。

さぁどうしたものかと思いあぐねていたところ、タイベックは対結露でかなり性能がいいらしいという話。Locusのシェルターもタイベックだし、こちらの方も布団袋をビビィに応用されているのを目に付け、さっそく布団袋をお取り寄せまずはプロトタイプを作成してみた。

黒タイベックビビィ / Black Tyvek Bivi

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サイズは縦220cmx横110cmのスーパーワイド仕様。標準サイズのビビィだときつくて冬用シュラフのロフトを圧迫してしまうのでかなり余裕をもたせてみた。水や靴や食料などの凍結を防止するために抱えて眠るときも大型のほうが使い勝手がよいだろう。これくらいのサイズだと中で靴下を履き替えたりちょっとした着替えも可能だ。もしかすると二人寝れるかもしれない!

自作キルトを入れてみた状態

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ここまで大きいと、どうせならもうポールを通して自立仕様にしてしまいたい気分。Utopiaなんかと組み合わせてフロアシート的に使っても幸せな気がする。

というわけで重量は322g。サイズがサイズだけに最軽量とはならないが、でもギリギリ担いでもよい範囲に収まっているかな。。。

素材は布団袋から流用。黒いカラーは太陽光を吸収するのでシュラフを乾燥させるのに効果的だとか。ファスナー一式はOMMよりお取り寄せ。

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両サイドのダブルジップはかなり長めにとってある。左側のジッパーは頭部のバグネットに連結し、右側のジッパーをあげると頭部を全閉する構造。屈曲する箇所の縫いつけには手間取った。

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頭部には針金でフレームを入れてあるので、幕が顔に垂れ下がってくるのを防いでくれる。バグネットは吹雪のときにも役立ちそうだけれどどうだろうか?

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内部にメッシュでスリーピングパッドホルダーを縫いつけ。ビビィで寝るときはいつもパッドがずれて困るので固定したかった。90cm長に合わせた。

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ついでに足元にもパッドを固定できるように。

あとはクライミング用のスリングを縫いつけて、難所でも滑り落ちないようにする予定。

これで稜線上でどんなに強風が吹きつけても、ビビィの中にもぐりこんでしまえば安心安全。という目論見なんだけど、果たしてうまくいくのかどうだろうか…?

カテゴリー:DIY, Outdoor

Gill B300 ネオプレンオーバーシュー / Neoprene Overshoe

冬ハイクの足回りに自転車用のネオプレン製シューズカバーを活用すると非常に暖かく、防水ランニングシューズと組み合わせることで軽快な足回りに仕上がる。ということでいくつものシューズカバーを取り寄せてああでもないこうでもないと試してみたのだけれども、昨シーズン末にようやく納得いく使い勝手のものに巡り会えた。

Gill B300 ネオプレンオーバーシュー

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今までの他のシューズカバーの欠点というか不満は、

1) ジッパーだと着脱が面倒。雪がつまる

2) つま先のホールドが中途半端だったりしてスッポ抜けたりする

3) つま先部分が擦り切れてほつれて摩耗する。ワンシーズン持たない

などといったもの。

このGill B300は、ベルクロでの簡単な脱着、つま先部の補強による耐久性、がっしりしたホールド感など、他のシューズカバーの欠点を完全にクリアしてる。3mmネオプレン生地なので保温性も問題なし、濡れにも強い。今まで探したなかでは冬ハイクに最適なシューズカバーだ。

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つま先部はしっかりとした補強。岩にぶつけてもアイゼンの留め金やバンドで摺っても今のところ耐久性はまったく問題なし。

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足裏をベルクロで固定。柔軟にピッタリ決まるので、シューズとの間の雪の入り込みを防ぐことができる。

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かかと部の固定もベルクロで。適当に引っ張ってくっつけるだけ。着脱のわずらわしさがなく快適。

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シューズはMontrailのATPlus GTXを使用。ゴア製なので防水。ソールもやや固めで山道をまったり歩くにはもってこい。ローカットなので、テント泊時にもシュラフ内で抱えて眠ることができ凍結防止できるのがよい。なにより登山靴なんかより軽く歩きやすい。

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つま先部はこのように。アイゼンを装着してもずれたりすることはない。

シューズカバーは足首周りもピッタリ覆ってくれるので、雪の入り込みを防ぐゲイターとしても機能する。山行中に一度装着したらつけっぱなしで、かかと部のベルクロの着脱だけで靴も一緒に脱ぎ履きできるので、ゲイターを着脱するよりも楽だ。

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後ろ側にリフレクター。

購入するときはサイズ選びを慎重にしたほうがよいかも。

ちなみに今冬の足回り構成は以下の予定。

厳冬期over森林限界3000m級をターゲットとして十二分の保温性を確保しつつ、軽快な足回りに仕上がってきたかな。

カテゴリー:gear, Outdoor

厳冬期用900FPキルト、自作

今シーズンの厳冬期は、シュラフよりも出入りが楽で重量効率もいいキルトで過ごしたいと思っていたけれども、いかんせん選択肢が少ない。というより既製品だとNunatakのArc Expeditionの一択なのだけれども$561だとさすがに円高でも手が出しにくいうえに800FP+なのでさほどのスペックでもないしオーダーしてから完成まで2ヶ月かかるらしいし…

と悩んでいたところに900FPダウン素材が入手可能なような情報を得て、もういっそ厳冬期用キルトも自作してみようと踏み切ってみた。

以下完成品。裁断、縫製、封入まで丸一日で作業はほぼ完了。

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出来上がりは期待以上。軽くてムッチムチ、厳冬期3000m級でも安心のキルトが完成した。

以下、スペック

■総重量: 910g

■ダウン: 900FP White Goose Down x 650g

■生地: 0.9oz Momentum90 Fabric(両面)

■サイズ: ロング 縦190cm x 首周り140cm x フットボックス周径110cm

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素材はThru-Hikerから調達。標準のQuilt Kitではダウン量が足りないので個別発注。

900FPと称するダウン素材はカナダ産のホワイトグースダウンだとか。見てみたところフェザーは混入していない。

両面のMomentum生地は、MLDがビビィ素材として”The best of the best”と言うくらいなので、軽量性、撥水、透湿性でそれなりのパフォーマンスなのだろう。表面が青、裏面を黒としてみた。

ダウンが上下に寄らないように室房を作るのだけれども、これだけの厚さになるとロフトを殺さないように隔壁を縫いつけてボックス構造にしてやらないといけない。そこにはNo-See-Umのメッシュ素材を15cm幅に切りそろえて上下の生地に縫いつけた。室房は全部で11。

制作に使ったミシンは職業用のヌーベルクチュールだけれども、家庭用でも十分制作は可能だと思う。

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首周りのコードはバンジーコード。伸縮するので出入りが楽。両端に縫止めしてセンターから引っ張るようにした。

夜でも目立つように赤色のスナップボタンで固定。

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フットボックス底面は方形。ここにもきちんとダウンを封入。

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裁断はさほど苦もなく、足側に向かって尻すぼみの形状にして、表裏面とも同じ形にカット。

縫製も思ったよりも楽だった。フットボックスを縫い付けるところだけが少し頭を悩ませたけれど。

一番苦労したのがダウンの封入。ダウンが飛び散ってもいいようにテントを張ってその中で作業したのだけれども、各ボックスにどれだけ詰め込むか本当なら計量しながらやりたいところだけれども、そんな悠長なことしてる余裕なし。まさに戦場。とにかくダウンを掴んで放りこんで、あとから全体のバランスを見て調整して、テープで仮止めしてから縫いつけた。

あとから知ったけれども、ダウンを濡らして固めて封入するという方法もあるらしい。頭は使いようだね。

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↑採寸取りに借りたNunatak Arc Expedition(Large)(左)との比較。自作キルトのほうがダウン量は+27gほど多いけれども、見た目以上にムチムチ感は優っている。トータル重量は-6g差なのでほぼ同一。

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↑GoLite Adrenaline 0°(上)との比較。足回りは同じくらいのロフトがあるが、上半身は自作キルトのほうが完全に分厚い。

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↑Montbell U.L.SS #1(左)との比較。これはもう勝負にならない。

ダウン素材としては自称900FPというのも納得できる、というか、信じてみようという気になる素晴らしさ。これだけの素材を個人で少ロットで調達できるのならもう既製品を購入する理由はどこにもなく、制作もさほど難しくもなく、これからは最上最軽量のスリーピングバッグを入手しようとするなら自作するのが正道、と言い切ってしまってよいのでは。

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飛び散ったダウンを回収。掃除が大変…

カテゴリー:DIY, Outdoor

MSR Lightning AXIS

今シーズンの冬ハイク用に調達したスノーシュー。22inchのWomen’sサイズ。

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去年まで使っていたLightning Ascentは、甲部分に3本ストラップを留めなければいけなかったが、新作のこのAXISでは大ぶりの一本ストラップをあらかじめ調整しておけば、あとはかかとのストラップを留めるだけで装着できる、とか。

真ん中にも一応ストラップがついているのだけれど、これは取り外しが可能。上写真の左側が取り外した状態、右側がついている状態。取り外してしまっても大丈夫かどうかは試してみないと分からないけれど、冬場でストレスなくスノーシューの脱ぎ履きができるのは魅力なので、できれば取り外しておきたいところ。

靴をセットしてみると以下のように。

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甲部分の大振りなストラップをあらかじめ調整しておいて、履くときはスリッパに足を突っ込むようにして、かかとのストラップを留める。がっちりホールドしているように見えるけど、そこはやはり歩いてみないと分からない。かかと側がすっぽぬけやしないかどうか、靴の作りにもよるとは思うけどどうだろう?

つま先部分の前爪、フレーム全体が歯になっている構造は前作同様。

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Lightning Ascent Women’s 22と並べてみる(両方とも右足側)。フレーム等の形状にはほとんど違いなく、やはり大きな違いはストラップ。

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Lightning Ascentの3本ストラップは面倒といえば面倒だった。さらにはかかとのストラップも歩いている途中でぷらぷら外れてしまったりしてうっとうしかったが、AXISではしっかり留められるようになっている。

ヒールリフターをあげてみる。

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AXISのリフターは凸型?おそらくストック等で跳ね上げるときに引っ掛けやすいようにしたのだろう。たしかにAscentでは一本棒が本体にぴったりくっついてしまうので、ストックを使っても指を使っても跳ね上げるのに苦労した。

AXISにはこんなフックがついてる。

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これをぐぃっと引っ張っるとロックが外れて、足の向きを若干調整できるようになる。見事なギミック!

国内販売価格は34,000円らしいけど、米国から輸入すれば円高の恩恵もうけて通常239ドル=19500円くらいなので、送料等を合わせてもお得。

ここはさらに安い! -> Sunny Sports

カテゴリー:gear, Outdoor

北鎌尾根ハイク 2010.9.24-26

シルバーウィーク後半の週末は低気圧と台風で北アルプスは嵐になってるというので、年初以来計画していた3泊4日の旅、湯俣で温泉〜沢釣り〜北鎌尾根ハイク計画は一旦は中止にしたわけだけれども、、、

翌日、

ナリ「今から2泊でも行けますよ! 上高地から水俣乗越経由で行けば」

ナリ「行きましょうよ!天気よくなりますって!」

ナリ「キタカマキタカマキタカマ!」

ワ「・・・しょうがないなー」

「ブルブル」

ナツ「・・・」

という経緯で4人で出発。24日(金)、19時の制限時間ぎりぎりで上高地に入り横尾までナイトハイク。雨は止んだようだが空はまだ暗雲立ち込めている。翌日以降の天気を祈りつつ、というよりも疑いつつキャンプ泊。

翌朝、なんと快晴! さすがナリさん。最強の晴れ男。

6時過ぎに横尾をたってまずは水俣乗越へ上がる。11時頃に到着。

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遠くに高瀬川がみえる。本来はあそこから入る予定だったが、日程短縮のため逆ルートから来たというわけ。

上高地IN、上高地OUTの今回のルート。地図にしてみるとアプローチが本当に長い…

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ここからは天上沢を下る。岩がゴロゴロしてソールの柔いガイドテニーでは歩きにくい。左手に明日歩く予定の北鎌尾根。

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しばらく歩くとその全貌が見渡せる。一番左が槍ヶ岳であそこがゴールか。アップダウンはあるけれどもそれほど険しそうでもなさそうに見える。

北鎌尾根は、幾人もの生命を奪ってきた歴史名だたるルートとか。今年も数件の事故が起こっている。おそらくここらあたりが”ハイキング”の終着点で、ここから先はいわゆる”登山”の世界なのかもしれない。いよいよこんなとこに来ちまったなぁ。。。

沢で足首をぐっきりひねる。ちょっと痛い。しばらく水で冷やしてテーピングをして出発。天上沢から分岐する北鎌沢をあがる。

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なんとか足は大丈夫そうだ。途中で3L程水を汲む。重いけど仕方ない。これから先は槍まで水がない。

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最後の急斜面を這い上がり、15時過ぎころに尾根に出る。北鎌のコルという場所らしい。大天井岳が西日に映えて美しい。それにしても快晴だ。

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ここから先に幕営適地はなさそうとのことだったので、狭い場所で4人でビバーク。全員幕は張らずビビィで寝る。

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夜、足の血行が止まって痛い。テーピングきつく巻き過ぎたか? でも解いたらもうテーピングの残りがないので、明日歩けなくなってしまうともう帰れなくなるような場所なので我慢w

翌朝、夜明けの表銀座。

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朝食を摂って6時頃に出発。

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周囲はまだハイマツやらが生えている。見ると幕営適地がそこかしこに。なんだ、無理して狭苦しいコルに泊まることなかったなと後悔。

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気持ちのいい尾根。雲ひとつない空。ルートもさして難しくなく、とんとんと上がっていく。

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これが天狗の腰掛? 岩の形がおもしろい。

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浮石もそこそこあるけれど、基本的にはしっかりしたホールドが多いので不安はない。小石をポロポロ落とすので、パーティだとやはりヘルメットはあったほうがいい。

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独標手前。

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リッジレストを背に攀じ登るナリさん。

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独標を過ぎる頃、遠くに先鋭峰が姿を現した。

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あそこへ行くぜー、と野心に燃えるナリさん。

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しかし下を見ると、1000mくらい下までまっさかさま。ブルブル

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ここから先は槍を見据えながら歩く。目標物が見えているのは精神衛生的にたいへんよろしい。

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ルートに迷う場所がいくつか出てくる。しかしどれを選んでも、多少難易度の差はあっても行けてしまう程度。迷って引き返して偵察して、なんてことやってると時間を食うので、あれこれ迷わず突っ込む方が楽なのかもしれない。またパーティで行くと、一人が先行しているときに後ろから見渡して指示が出せるので有利だ。単独だと精神的に追い込まれてただろうなと思う。

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ふと後ろから単独行者が追いついてくる。

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トレイルランナーの方だろうか。あっという間に抜き去って先に進んで行った。なんでも12時間で北鎌尾根を日帰りするのだとか。しかも今年で3度目らしい。世にも変態な人が居たものだと驚く。なんだよ、北鎌ってトレランルートかよ!

いよいよ槍が近づいてくる。

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しかしここから先は巻ルートが多くなる。巻いて巻いて…

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開けた場所に到達。ここが鎌平という場所だろうか? 幕営もできそうだ。キャンプにいいかもしれない

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さて、いよいよ槍が目の前に。日も高くなってきた。

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なんとか槍を巻けないものだろうかと思っていたが、見渡してもどうもそんなルートはなさそうだ。それに今まで思っていたよりも拍子抜けしたようなルートだったので、せっかくだし登ることにする。クライミング的には楽しませてくれるかもしれない。

いくぜっ

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どこにもルートらしきものもないが、どこから登っても行けそうな感じ。各自バラバラに思い思いのルートで攀じ登る。

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後ろを振り返る。空に浮かぶ尾根。あのずっと先から歩いてきたんだなー

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いよいよ頂上直下。

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到着!

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よっこらしょっと

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あれー??

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いや、冗談です。無事ですw

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槍ヶ岳に登るのは初めてだ。あがるとお爺ちゃんやらおばぁちゃんやらの登山客がいっぱい溢れていて、ヘルメットかぶった自分らが場違いみたい。

降りるときは垂直のハシゴなんだけれども、これが今までで一番怖かった。北鎌尾根の核心はここじゃないですかね?

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装備は、クライミングギアも最低限のものを一式持っていったけれども結局使いどころはなかった。ヘルメットだけはあったほうがいいか。出発前にいまるぷさんにもらったナイスなステッカーが気恥ずかしい。

槍には12時頃に到着? ビール飲んでラーメン食べて、ここから槍沢を下って18時頃に上高地。これも歩き通しでしんどかった。ズタズタに疲れて温泉に入って帰京。

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滝川赤石沢から飯豊連峰… 8/19-21

山形県と新潟県、福島県の境にある飯豊連峰、そこを歩くアプローチに沢を経由しようという着想で、山形県側の滝川から地蔵岳の方角へと伸びる赤石沢をハンさんと辿ってみようということになった。

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小国駅前のスーパーで行動食を仕入れるはずだったけれども、沢靴・沢道具・ちょっと多めの食料を含めて26LのRPMに一切がっさいをつめ込んできてパンパンだったので、おにぎり3個だけを買ってタクシーに乗る。

東北の山も田舎もはじめてだったけれど、駅からタクシーで離れるとすぐに目立った人工物が少なくなる。里山、といっても関東近辺で見るようなのとは違い、あまり人の手の入ってなさそうな原生的な様子に少し心奪われた。

滝川の林道沿いの森の中には廃村跡。運転手談によると昔は住民がいて狭い畑を耕し山菜を採ったりして生計を立てていたらしいが、行政インフラを整備するのが難しいので町に転居しろと促され、みんな森の生活を捨てて出て行ったらしい。もったいない。

林道の終点にて料金9000円を支払い遡行の準備。釣竿をセットし、沢靴に履き替え、ハーネスをはめてヘルメットを被り出発。

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滝川を辿り、砂防堤のような場所を越えてしばらく行くと赤石沢への入渓ポイントがあり左折。雰囲気は少し鬱蒼としてくるけれども、しばらくはほとんど高低差がなくフラットな沢筋を歩く。

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石が赤いから赤石沢なのだろうか?ところどころ小さな滝も出てくる。

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僕のテンカラ竿を代わる代わる振りながら歩く。

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魚影は見かけたのだが、

ハ「おーい、ここに魚いるよー!! ここだってー」

ワ「あぁ?(声大きいってまったくもぅ…)」バシャバシャ

というかんじで騒々しくデリカシーの欠片もない俄釣り師達に釣られる魚がいるわけもなく…

1980円で買ったテンカラ竿は途中で継ぎ目が硬くなって収納できなくなり、がんばっていると折れてしまった。

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僕は問題ない滝であればなるべく登るのだけれども、ハンさんは沢に来たというのになぜか濡れるのを嫌がり、巻けるところはとにかく巻こうとする。歩き方は人それぞれだな…

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8mほどの滝がこのルートのクライマックスらしい。直登は避けて左から巻く。が、斜面は藪に覆われ足を乗せた土もずりずりと崩れ落ちなかなか焦った。僕は結局ルートミスをして高巻きすぎたので懸垂で降りる羽目に。ロープ出したりしている拍子におにぎりを一個沢に落としてしまった。

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運命の分岐ポイント。赤石沢をまっすぐ進むと地蔵岳にほぼ近い登山道に出られるはずだが手元に情報はなく、予定ではここからヤゴウ沢へと入り登りつめてから廃道の尾根を歩くルートなので、そのとおりに左折した。

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幕営ポイントがなかなか見つけられず日がどんどん暮れていったが、やっと焚き火のできそうな場所を見つけキャンプイン。タープも張らずビビィでの露営。

翌日、朝食を作るのが手間なので最後の一個のおにぎりを食べて出発。ヤゴウ沢を詰めにかかる。だんだん両側の植生が迫ってきて視界を覆ってくる。虫も増えてきた。目の前をミノムシが垂れ下がってきて飛び上がって驚く。沢に来といてなんだけど苦手なんだよなぁ…

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そろそろ水が涸れる。次の水場まで3時間ほどだろうか、ペットボトルに水を500mlほど確保。だんだん斜度が上がってきて、崩れる土の斜面と格闘しながら尾根を目指す。短くしたストックを土に突き刺し、草の根をつかみながら這い上がる。なかなか安心出来るホールドが少ない。

上がりきったところは鬱蒼とした藪の中だった。想定では鍋越山の近辺のはずだ。靴を履き替え廃道跡をさがす。地図上ではここに廃道のルートが通っており、登山道までは単純に尾根を辿って2kmほど。長くても2-3時間も歩けば辿りつくだろうとタカを括っていたが結局廃道の跡のようなものは見つからず、潅木の藪は想像以上に激しかった。

にょきにょきと真横に伸びきった無数の枝のような潅木が壁のように行く手を遮るので、それを持ち上げて潜ったり、あるいは思い切り体重をかけて踏みつけたり、ときに跳ね返されながら進む。そんな具合だから体力も気力もみるみる奪われていく。なんと生命力の旺盛な藪だろう。視界も悪く、ちょっと離れるとハンさんの姿もすぐに見えなくなる。

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藪と格闘すること3時間、5時間、7時間… 水はとうに尽き、食事もろくに取らずに藪を漕ぎ続ける。

それにしても長すぎる。途中で不安になるハンさん。

ハ「…ちょっとヤバくね?」

ワ「いや、尾根沿いに進むだけだから。迷ってないし。ちょっとハードなだけで…」

ハ「でもさぁ、方角合ってるのかなぁ…」

ワ「だいじょぶだってー、尾根だからさ (まーたいつもの不安症がはじまったよ…)」

と言いつつ、僕は体力的に参ってきて休憩時間が長くなる。そうこうしているうちにいよいよ日は暮れてしまった。途中で蛇がとぐろを巻いていたのを発見するけどもはや驚く気力もなくスルー。

月夜が山蔭を映しだし、目指す山道まではあと100mほどを残すのみに見えた。しかし今までで最もハードな藪に阻まれ心が折れる。もう動きたくない。まだ体力を残してるハンさんには先に行ってもらい、僕はトラバース中の藪の斜面でビバークすることにした。

喉は乾いたけど仕方ない。一晩くらい大丈夫だろう。

急な斜面にも容赦なく生えそろった潅木の上にのっかって、体が地面につかないのもお構いなしで眠りに入る。ハンさんの藪を漕ぐ音がいつまでも聞こえる。まだ抜けられないのだろうか? zzz…

翌朝、起きると2-3mほどずり落ちていたので登り返す。ルートの先を見渡すと眼と鼻の先に目指すピークが見えた。あそこが山道との合流点のだまし地蔵のはずだ。

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しかし体が動かない。どうもシャリバテてしまっている。やっぱ食べないとダメだな。ザックを開いて食料をさがす。まずはパックに入っためんつゆを飲み干し、続けてキーマカレーを冷えたまま一気飲みする。うまい。糖質が欲しいけど米を炊くには水がない。あぁめんつゆで炊けばよかったかなと思うも後の祭り。生麺もあるから焼けばいいのだけれどしかしもはや斜面でストーブを出すのもめんどうだ。さらに食料袋をさがすとピーマンが3個。生のままかじるとシャクシャクと水気がして極上の味。念のため1個を残し、しばらく体を休めてから行動開始。

潅木の障害物を踏み越えながら、3歩進んでは休み、また進んでは休みを繰り返し、斜面を進もうにもらちがあかないので、心を決めて尾根を這い上がる。なんとか緩そうな笹薮に到達し、しばらく歩くとようやく山道へと復帰。倒れこんでしばらく眠る。

起きると登山客もちらほら、近くで休んで声をかけてくれたオジサンに水とキャラメルを分けてもらい腹に収める。少し体力は回復したか。しかしここから飯豊連峰を歩くべきか、ハンさんはどこまで進んだだろう。もういいや、尾根歩きはあきらめて降りよう。

山道はなんと快適なんだろう、まるで高速道路だなー、と思いながら、途中で食事をとり、徐々に体力が回復してきて最後は走りながら駆け降りた。

そもそもルートミスだろうか?水と行動食をケチったのが良くなかったか?次またしんどい思いをするのが嫌なら今回の旅から課題を見出さなければいけないけれど、しかしそんなことはどうでもよく、地獄のような藪から這い出た満足感だけを愉しみながら東北を後にした。

カテゴリー:hike, Outdoor